ロシア軍が北朝鮮軍部隊の兵器をクルスク州で誤爆
ウクライナ侵攻に介入するため、2024年からロシアに派遣されている北朝鮮軍部隊。戦場に多数の装備品を持ち込んでいたが、最近、ロシア軍の誤爆によって防空システムを破壊されてしまったようだ。
どうやら、北朝鮮軍はロシア製防空システム「9K330 トール」のカスタマイズ版を配備していたらしいが、ロシア軍のドローン攻撃によって、これを失ったものと見られている。
軍事情報サイト「Army Recognition」によれば、親露派のTelegramチャンネル「Voenacher」は1月10日、ロシア軍部隊がクルスク州内で「西側諸国製のレーダー基地」を破壊したと主張。
画像:Telegram @voenacher
ロシア軍がこのとき使用したのは一人称視点(FPV)ドローンであり、Telegramチャンネル「Voenacher」は攻撃の様子を捉えた動画を公開した。ところが、『フォーブス』誌によれば、アナリストたちはこのとき破壊されたターゲットについて、「西側諸国製のレーダー基地」などではなく、北朝鮮軍の持ち込んだ装備品だったと見ているそうだ。
画像:Telegram @voenacher / edited by The Daily Digest
同誌のデイヴィッド・アックス記者いわく、「ロシア軍がクルスク州で何を破壊したのか、外部のアナリストが正確に把握するまでには数日かかった」とのこと。ともあれ、ポーランドのSNSアカウント「WarVehicleTracker 」が、ロシア軍のドローン攻撃によって破壊されたターゲットは北朝鮮軍が運用する地対空ミサイル(SAM)「9K330 トール」だったことを突き止めたのだ。
画像:X @LXSummer1
「WarVehicleTracker 」はX上に画像を転載した上で、「当初、『西側諸国製のレーダーシステム』とされていたものは、キャブ付きシャーシ(トラックの一部)に搭載されたSAM『トール』の北朝鮮版だった可能性が高い」とコメント。
画像:X @LXSummer1
同アカウントはさらに、ロシア軍が自国製の地対空ミサイルを破壊してしまったのは興味深いと述べ、ロシア軍部隊は北朝鮮の装備品が「そこにあることを知らされていなかった」可能性があると示唆した。
また、『ニューズウィーク』誌も、ウクライナ人軍事・政治アナリストのオレクサンドル・コヴァレンコ氏の見解として、ロシア軍が破壊した防空システムは北朝鮮軍部隊のものだったようだと報道。同氏はさらに、ロシア軍が防空に関するトラブルを抱えている可能性を示唆した。
コヴァレンコ氏いわく、ロシア軍には防空システムが欠けており、それが同軍にとって「壊滅的に苦手な分野」であることは既知のとおりだ。とはいえ、本当にロシア軍が北朝鮮軍部隊の兵器を破壊してしまったのかどうかは確認されていない。
しかし、今回破壊された装備品が本当に北朝鮮軍の「トール」だった場合、それはそれで、ウクライナやその支援国にとって大きな課題が浮き彫りになったと言える。
というのも、北朝鮮軍の「トール」がロシアに移送されていたことは、韓国をはじめとする西側諸国の情報機関によってキャッチされていなかったためだ。コヴァレンコ氏によれば、これは西側諸国が露朝間の物流サプライチェーンを監視できてないことを示唆しているという。