装備品不足に悩むロシア軍:冷戦時代の旧型「M-46カノン砲」を前線に投入

装備品の調達に悩むロシア
開戦当初、ロシア軍は大砲5,000門を投入
見込みが甘かったプーチン政権
なんとしても勝利を目指すロシア
「Oryx」の分析
ウクライナ参謀本部の推計
兵器不足に陥るロシア軍
旧式兵器で穴埋め
ロシア軍が引っぱり出したM-46カノン砲
M-46カノン砲のスペック
開発されたのは1940年代
適合する砲弾はないはずだが……
北朝鮮が砲弾を提供
在庫のおよそ半数が持ち出された?
M-46の使用は以前から知られていた
M-46は全部でいくつあるのか?
実戦に向けて移送された65門
思いのほか切羽詰まっている?
装備品の調達に悩むロシア

ウクライナでの戦争が長期化する中、ロシア軍は新たな砲撃システムを前線に配備し始めた。ただし、「新たな」といっても、長期保管されていた冷戦時代の兵器を引っぱり出してきたというのが本当のところらしい

 

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開戦当初、ロシア軍は大砲5,000門を投入

『フォーブス』誌のデイヴィッド・アックス記者によれば、2022年2月の開戦時、ロシア軍は大砲およびロケットランチャー5,000門を携えてウクライナに侵攻したという。しかし、ことはプーチン政権の思い通りには運ばなかった。

見込みが甘かったプーチン政権

2022年にリークされた文書によれば、ロシア政府の指導部は3日のうちにキーウを占領し、3週間でウクライナ全土を支配下におさめられると見込んでいたらしい。しかし、実際にはウクライナの頑強な抵抗に遭い、プーチン政権はすっかり当てが外れてしまった。

なんとしても勝利を目指すロシア

ウクライナ軍の奮闘と西側諸国の支援によって、ロシア軍は進軍を押しとどめらることとなったが、クレムリンもそう易々と引き下がるつもりはない。多大な犠牲を払いながら、2年半も戦闘を続けているのだ。

 

「Oryx」の分析

オランダのオープンソースインテリジェンス大手「Oryx」が行なった分析によれば、ロシア軍は今年7月20日の時点で、牽引式の榴弾砲やロケット砲、自走砲をおよそ1,570門失ったとされている。

 

ウクライナ参謀本部の推計

一方、ウクライナ参謀本部もロシア軍の損失について独自の推計を発表している。それによれば、ロシア軍は7月20日までに1万5,642の砲撃システムを失ったという。

兵器不足に陥るロシア軍

「Oryx」のデータとウクライナ軍参謀本部の発表の間には大きな開きがあるが、いずれにせよ、ロシア軍が砲撃システム不足に陥っているであろうことには変わりない。

旧式兵器で穴埋め

そこで登場するのが長期保管されていた旧式の兵器だ。前出のデイヴィッド・アックス記者いわく:重火力の需要が高まる中、クレムリンは大砲や砲弾の新造に苦戦しており、冷戦時代の初期から保管されている兵器や、数十年前に時代遅れになった銃を引っぱり出しています」

ロシア軍が引っぱり出したM-46カノン砲

榴弾砲の不足を穴埋めするため、ロシア軍が目を向けたのは旧式のM-46カノン砲だった。では、この兵器はどのくらい古いもので、ウクライナの戦場ではどのように用いられているのだろうか?

画像:Wiki Commons By Bandanschik, Own Work, CC BY-SA 3.0

M-46カノン砲のスペック

アックス記者によれば、M-46カノン砲は8人で運用する7.7トンの大砲で、最大27キロメートル離れた目標を毎分5発の頻度で砲撃できるそうだ。製造年代があまりに古いものでない限り、適合する砲弾さえあれば、今でも使えないことはないのだ。

画像:Wiki Commons By Bukvoed, Own Work, CC BY 2.5

開発されたのは1940年代

軍事情報サイト「Army Recognition」によれば、M-46が開発されたのは1940年代。1954年に配備され、1970年代に運用終了となった。ところが、最近、ロシア軍の兵器を追跡するオープンソースインテリジェンスによって、この旧式兵器がロシア国内を移動する様子がキャッチされ、その映像がSNSで出回ったのだ。

適合する砲弾はないはずだが……

ロシアでは、このカノン砲に適合する130ミリメートル砲弾の生産はすでに行われていない。ところが、オープンソースインテリジェンスのアナリストたちが衛星写真やSNS上で出回るデータをもとに検証したところ、ロシア軍はM-46カノン砲をウクライナの戦場で利用しているらしいことが明らかになったのだ。

 

 

北朝鮮が砲弾を提供

どうやら、その謎を解くカギは北朝鮮にあるらしい。「Army Recognition」いわく:「2024年6月25日にロシア軍が公開した前線の映像には、北朝鮮製の130mm榴弾らしきものを用いてM-46カノン砲を運用する部隊が映っていた」

画像:X @war_noir edited by The Daily Digest

在庫のおよそ半数が持ち出された?

一方、『ニューズウィーク』誌は「HighMarsedon」というアカウントで情報発信を行っているアナリストの投稿を伝えた。それによれば、ロシア軍は長期保管されていたM-46カノン砲のおよそ半数を持ち出しているらしい。

画像:X @HighMarsed

M-46の使用は以前から知られていた

また、ウクライナの軍事情報サイト「Defense Express」は以前にも、ロシア軍が今年1月にM-46カノン砲を戦闘に利用したことを伝えていた。しかし、そのときは一体どのくらいの数のM-46が長期保管から実戦用に移送されたのか定かではなかった。

 

画像:Wiki Commons By Mike1979 Russia, Own Work, CC BY-SA 4.0

M-46は全部でいくつあるのか?

「Defense Express」はロシア軍の保有するM-46カノン砲の数について350門と見積もったものの、「これらの画像からは、敵がM-46をいくつ引っぱり出したのか、数えることはできない」としていた。

実戦に向けて移送された65門

一方、『フォーブス』誌によれば、「HighMarsedon」はロシア軍がM-46カノン砲を665門保有していると見ているようだ。また、衛星写真の分析から、2024年2月までに少なくとも65門が実戦に向けて移送されたことが判明しているとのこと。

画像:Wiki Commons By Ministry of Defence of the Russian Federation, Screenshot

思いのほか切羽詰まっている?

ロシア軍が実際に戦場でM-46カノン砲をいくつ運用しているのかは不明だ。しかし、このような旧式兵器まで引っぱり出しているということは、思いのほか切羽詰まっているのかもしれない。

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画像:Wiki Commons By Ministry of Defence of the Russian Federation, Screenshot

 

 

 

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