「ロシア軍は甚大な被害を出しても5年以内に立ち直れる」:イギリス海軍大将の分析
オープンソースインテリジェンス大手「Oryx」によれば、ロシア軍は2022年2月のウクライナ侵攻から今年8月26日までに、装備品を少なくとも1万7,529点失ったとされる。
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さらに、ウクライナ軍参謀本部の発表によれば、ロシア軍はこれまでに60万人以上の兵力を失うという多大な損害を被っているという。
このようにウクライナの戦場で甚大な損害を出し続けるロシア軍だが、この程度の損失ならば、数年以内に立て直すことができると見る専門家もいる。
この驚くべき発言を行ったのは英国のトニー・ラダキン海軍大将だ。今年7月に英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)が主催した2024年陸戦会議で演説を行い、ロシア軍の戦力はわずか5年で開戦前のレベルまで回復するという見方を示したのだ。
ラダキン大将は7月の時点で、ロシア軍の死傷者数は55万人に上ると説明。これはウクライナ軍参謀本部の発表を裏付けるものとなった。同大将はまた、ロシア軍がこの損害から立ち直るためには一定の時間がかかるとした。
ラダキン大将は英当局の分析として、「ロシア軍を2022年2月時点の状態まで回復させるためには5年かかる」ほか、「今回の戦争で明らかになった弱点を克服するためにはさらに5年かかる」と述べている。
英国防省の議事録によれば、ラダキン大将は「この指摘は独りよがりなどではなく、責任ある行動だ」と主張。さらに、「軍の指導者として、我々は国民を安心させ、決意を固めさせなければならない」と述べたそうだ。
一方、ウクライナ軍参謀本部はラダキン大将が陸戦会議の場で演説した7月23日に、ロシア軍の死傷者数が56万8,980人に達したことを発表した。
『ニューズウィーク』誌のエリー・クック記者はラダキン大将の発言を受けて、ロシア軍の死傷者数を「正確に把握するのは非常に難しい」と指摘。ウクライナやロシアが発表した数字を鵜呑みにすべきではないとした。とはいえ、ウクライナ当局の推計は西側諸国の分析によって、一定の裏付けがなされているのだ。
実際、英国防省はウクライナ侵攻に関するデータを定期的に公表しており、ロシア軍の死傷者数についても頻繁に報じてきた。とりわけ、7月12日に発表された推計はロシア軍が死傷者を急増させていることを示すものだった。
5月と6月におけるロシア軍の死傷者数は1日平均でそれぞれ1,262人、1,163人に上ったのだ。つまり、わずか2ヵ月で7万人あまりの兵士を失ったということになる。
このような膨大な死傷者数について、英国防省のアナリストたちはロシア軍が人海戦術をとっていることに加えて、複数の地域で攻勢をかけはじめたこと、適切な訓練を受けた兵士が不足していることを挙げている。
英国防省は当時、「ロシア軍はハルキウ州で新たな戦線を開く一方で、その他の戦線でも今までどおり攻勢を続けており、このことが死傷者数の増加として表れている」と分析していた。
同国防省はさらに、「この新たなアプローチは前線における圧力を高めることになったが、ウクライナ軍の巧みな防衛とロシア軍の訓練不足によって、ロシア軍は前線を押し広げようと試みているにもかかわらず、戦術的な成功を戦果につなげる能力が低下している」と結論づけた。
英国防省の見立てでは、ロシア軍が「人海戦術でウクライナ軍の陣地を圧倒する試み」を続ける限り、1日平均の死傷者数が1,000人を下回ることはないという。
しかし、ロシア軍がゆっくりと進軍し続けているのもまた事実だ。実際、陸戦会議の場でラダキン大将は「ロシア軍は戦術的な成功を収めている。莫大な犠牲を払って集落を手に入れているのだ」と発言している。
ラダキン大将はその一方で、「ロシア軍はまた、ウクライナの同胞たちの弱点、つまり、電力セクターや都市、さらには病院をターゲットにしており、これは憂慮すべきことだ。しかし、全体的な状況がプーチン大統領にとって厳しいことには変わりない」とも指摘した。
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