人類が1,000人台に追い込まれた歴史が最新の研究で明らかに
最新の研究によって、人類はこれまで考えられていたより遥かに深刻な危機に瀕した時期があり、一時は絶滅寸前だったことが判明した。
『サイエンス』誌に掲載された論文では最新の遺伝子解析手法を利用し、人類がその進化の過程で個体数を著しく減らす「ボトルネック現象」に見舞われていたことが説明されている。
写真:Wiki Commons
『ガーディアン』紙によれば、論文の筆頭著者ジョルジョ・マンジ氏は「今回の研究で得られた数字は、絶滅一歩手前の種におけるものと同じでした」と述べたとのこと。
写真:Twitter @gi_manzi
では、具体的に人類はどこまで個体数を減らしたのだろう? この研究によれば、人類は繁殖可能な個体数がわずか1,280人という非常に危うい事態に陥っていたらしい。
『ネイチャー』誌によれば、論文共著者のハイペン・リー氏いわく「人類の祖先はおよそ98.7%が死滅」したということだが、これによって人類史のギャップが説明できる可能性があるという。一体どういうことだろうか?
人類のボトルネック現象は、93万年前ごろから81万3千年前ごろにかけておよそ11万7千年も続いたと見られている。
この時期、アフリカおよびユーラシア大陸では化石記録が途絶えており、論文の主張が正しいことを示唆している。
写真:Wiki Commons
前出のマンジ氏いわく:「90万年前ごろから60万年前ごろにかけてのアフリカ大陸では、人類の化石記録がないとは言わないまでも非常に少ないことがわかっています。ところが、その前後の時期ではたくさんの化石が見つかっているのです」
同氏はさらに、「ユーラシア大陸でも同じことが言えます。たとえば、80万年前ごろのヨーロッパには人類の祖先として知られる種が存在しましたが、その後およそ20万年間にわたって姿を消してしまったのです」と付け加えている。
写真:Wiki Commons
研究者たちは、人類の祖先を探るために特化したヒトゲノム解析手法を利用し、今回の発見に至っている。
写真:Wiki Commons
『ネイチャー』誌によれば、ヒトゲノムの解読技術が進歩するに連れて、遺伝学の観点から人類史を読み解くことができるようになったのだという。
イェール大学の人類学者セリーナ・トゥッチ氏によれば、人類初期の歴史を探る上で最大の難関となっているのはDNA資料が不足していることだという。
しかし、前出のリー氏をはじめとする研究者たちが開発した技術によって、現世人類の遺伝情報から古代人類の人口を推測することができるようになったのだ。
おかげで、人類が絶滅の危機に直面していた時期のボトルネック現象が高い精度で特定されることとなった。
この現象が生じたのは更新世前期から中期にかけてであり、氷河の周期が延びると同時にアフリカでは長期にわたる干ばつが発生。ネアンデルタール人およびデニソワ人より原始的なハイデルベルク人が出現したのもこの頃だと考えられている。
研究者たちは「私たちの研究結果によれば、人類は深刻なボトルネック現象によって絶滅寸前に追いやられたものの、その後、遺伝的多様性を獲得して現在に至ったことになる」と述べ、人類史を書き換える発見だとしている。