ロシアによる万が一の核攻撃に備えるウクライナ当局

核兵器をちらつかせるプーチン大統領
最悪の事態に備えて
2種類のシェルター
しかるべき備え
「迷惑な隣国」
キーウにある425基の核シェルター
ウクライナ全土で設置が進む核シェルター
「何が起きても不思議ではない」
フィルター付きでラジオもある地下核シェルター
ヨウ化カリウム剤の備蓄
「核兵器を使用する直接的理由」
緊急作業員用の防護服
避難経路の見直し
核攻撃アラートの準備
チェルノブイリの経験
政府が公開するガイドライン
万が一のための行動計画
市民が知っておくべきこと
準備に取り組むウクライナ兵たち
ロシアは「ダーティー・ボム」を使用するのか?
核の脅しを真剣に受け止めるウクライナ
核兵器をちらつかせるプーチン大統領

ロシアによるウクライナ侵攻が始まってしばらくすると、ウラジーミル・プーチン露大統領は各国首脳に対し、必要とあらば同国が多数保有する核兵器の使用も辞さないと表明するようになった。

 

最悪の事態に備えて

核兵器をちらつかせるプーチン大統領の声明はウクライナの戦意を喪失させるためのこけおどしに過ぎないと受け止める向きもあるが、ウクライナとしては最悪の事態に備えざるを得ないのも事実だ。

 

2種類のシェルター

『Politico』誌の報道によれば、キエフ郊外にある「セルヒー・プリトゥラ・チャリティー財団」が核攻撃への対策を講じているとされる。この財団には2つのシェルターが備えられており、1つ目は地下駐車場にある「通常兵器用」のシェルター、もう1つは核攻撃を受けた場合に備えた専用シェルターだ。

 

しかるべき備え

TVタレントで同財団のトップも務めるセルヒー・プリトゥラ氏(写真)は『ポリティコ』誌に対して次のように語っている:「2つ目のシェルターではしかるべき準備をしています。医薬品や食料、飲み物、蒸留水、懐中電灯、電池などを備蓄しています」

「迷惑な隣国」

プリトゥラ氏はまた、ロシアと対峙する以上、あらゆる対策を講じる必要があるとコメント:「普通の論理的思考に基づいてロシアの軍事・政治的判断を予測するのは、いつだって容易ではありません。はた迷惑な隣国ですよ。だからこそ、核攻撃の可能性も真剣に受け止め、適切な対策を講じる必要があるわけです」

 

キーウにある425基の核シェルター

さらに、核兵器の使用に備えているのはセルヒー・プリトゥラ・チャリティー財団だけではない。『ニューヨーク・タイムズ』紙はウクライナ政府高官の話として、首都キーウには425基の核シェルターが設置されており、物資の備蓄も行われていると伝えたのだ。

 

ウクライナ全土で設置が進む核シェルター

また、キーウ州のオレクシー・クレバ知事(写真)はウクライナ局「Hromadske」に対し、核シェルターの設置はウクライナ全土で進んでいると語っている。

写真:Telegram@OleksiyKuleba

「何が起きても不思議ではない」

クレバ氏は同メディアに対し、「この8ヵ月間を振り返ると、今後、何が起きても不思議ではありません。私は知事として最悪の事態に備えていますが、杞憂に終わることを願っています」と述べた。

 

フィルター付きでラジオもある地下核シェルター

クレバ氏によれば、核シェルターは地下に設置されており出入り口は2つ、汚染された空気を浄化するフィルターとラジオが備えられているという。ラジオは核兵器が使用された場合、外界と連絡を保つ唯一の手段になる可能性が高いとされている。

 

ヨウ化カリウム剤の備蓄

一方、首都キーウの市当局はウェブページ上で、放射能の吸収を防ぐために用いられるヨウ化カリウム剤の備蓄は十分に整っているとしている。

「核兵器を使用する直接的理由」

ウクライナ当局の懸念は根拠のないものではない。ロシア安全保障会議のメドベージェフ副議長は、ウクライナが全占領地の回復を目指すとすれば、それはロシアにとって「国家存亡の危機であり、ロシア連邦の解体を引き起しうる」と警戒しているのだ。また、メドベージェフ副議長は、そのことがロシアによる核抑止力行使の「直接的な理由」になり得ると述べた。

 

 

緊急作業員用の防護服

前出のクレバ氏は「Hromadske」のインタビューで、緊急作業従事者には防護服が配布されることになっており、核兵器が使用された場合の対応についても訓練を受けていると説明した。

 

避難経路の見直し

さらに、ウクライナ全土の市町村で避難経路の全面的な見直しが行われたという。

核攻撃アラートの準備

さらに、『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によれば、ウクライナ当局は核攻撃の危険が迫っていることを「政府のホットラインやラジオ放送、車載拡声器」を通じて人々に知らせるシステムを構築している最中だという。

 

チェルノブイリの経験

ウクライナには、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故という悲惨な経験がある。しかし、この時の知識を活用することで、ウクライナ政府は最悪の事態から国民を守ろうとしているのだ。

 

政府が公開するガイドライン

ウクライナ当局は最近、「『ダーティー・ボム』および核兵器の使用、原子力発電所事故から身を守る方法」という文書をオンラインで公開。これは核攻撃を受けた際の明確なガイドラインを市民に提示するものだ。

 

万が一のための行動計画

同ガイドラインによれば、ウクライナ政府は核攻撃の可能性は低いものの、市民による備えは不可欠だとしている。:「ウクライナ国民は、核兵器やダーティー・ボムの使用、原子力発電所事故をはじめとするあらゆる緊急事態に対応すべく、事前に行動計画を立てておかなくてはならない」

 

 

市民が知っておくべきこと

ガイドラインでは、路上で核爆発に遭ってしまった場合の対処法から放射線障害の症状、「ダーティー・ボム」とは何かといった説明まで、詳細に解説されている。

 

準備に取り組むウクライナ兵たち

もちろん、核戦争に備えているのは市民だけではない。ウクライナ軍では訓練中の兵士にも最前線で戦う兵士にもヨウ化カリウム剤がすでに配布されており、核攻撃に対応するための訓練も行われているという。

 

 

ロシアは「ダーティー・ボム」を使用するのか?

ロシア当局は、ウクライナがロシア占領地域で「ダーティー・ボム」(放射性物質をまき散らす爆弾)を使用するかもしれないと唐突に主張しはじめた。これに対し、ウクライナおよび各国の当局は、プーチン政権がこの種の爆弾を用いた偽旗作戦を計画しているのではと警戒を強めている。

核の脅しを真剣に受け止めるウクライナ

ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府長官顧問(写真)はAP通信のインタビューの中で、ロシアによる核の脅しを真剣に受け止める必要性について、次のように述べている:「無論、ウクライナはこの脅しを真剣に受け止めています。相手はあのロシアですから」

 

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