世界のスーパーコンピューター、トップ10:日本の「富岳」が4位に
コンピューターの世界は急速に進歩しており、その変化についていくのは容易なことではない。とりわけスーパーコンピューターの分野では、より高い性能を求めて開発競争が激しさを増している。
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アメリのテネシー大学、国立エネルギー研究科学計算機センター、ローレンス・バークレー国立研究所に所属するコンピューター・サイエンスの専門家たちは、世界で計算速度の速いコンピューターをリストアップし、「TOP500」というランキングを発表している。
世界のスーパーコンピューターを対象にした「TOP500」は年に2回更新され、新たなランキングが発表されている。また、同じプロジェクトを通じて「エネルギー効率」および「I/O帯域幅(input-output bandwidth:出入力における周波数範囲)」についてもランキングが作成されている。
本ランキングでは1から10位までの多くを米国勢が占めている。実際、米国はほかのどこよりも多くスーパーコンピューターを所有する国となっているのだ。
調査の対象となったスーパーコンピューターは、すべてLinuxベースのオペレーションシステム(OS)で稼働している。マイクロソフトのスーパーコンピューターでさえLinux系のOS「Ubuntu」を使用しているほどだ。では、最新のランキングを見ていこう。
画像:6heinz3r / Unsplash
500のスーパーコンピューターから栄えある10位となったのは、米IBMが開発し、カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立研究所で構築されたスーパーコンピューター「シエラ(Sierra)」だ。実際の核実験を伴わない保有する核兵器の試験と管理を目的として、米国家核安全保障局がその運用を行っている。
ランキングの9位は米半導体メーカーNVIDIAが構築したスーパーコンピューター「Eos DGX SuperPOD」となった。これは、法人向けインフラの中でも世界最先端とみなされている「DGX H100」システム576台で構成されている。
8位はスペインのバルセロナ・スーパーコンピューティング・センター(BSC)に設置されている「MareNostrum(マレノストルム)」だ。同センターは欧州先進コンピューティング・パートナーシップ(PRACE)に加盟する8か所のひとつであり、ここでは主に遺伝解析や気象予報、新薬設計などが行われている。19世紀の教会を改修した建物内にあることでも知られている。
7位は米テネシー州のオークリッジ国立研究所にあるスーパーコンピューター「Summit(サミット)」 だ。米IBMが開発を手がけたコンピューターで、2018年11月から2019年11月にかけてランキング「TOP500」で栄えある1位をキープしていた。
画像:A street on Oak Ridge, Tennessee
イタリア、ボローニャのスーパーコンピューター「Leonardo(レオナルド)」が6位にランクイン。EU全域のスパコンネットワークの構築を目指す「欧州高性能コンピューティング共同事業(European High-Performance Computing Joint Undertaking)」の一環として開発され、ボローニャの研究ハブであるテクノポールに設置されている。
5位はフィンランドの「LUMI(ルミ)」で、こちらも「欧州高性能コンピューティング共同事業(European High-Performance Computing Joint Undertaking)」によりすすめられたプロジェクトだ。2024年1月現在、欧州で最も高性能なスーパーコンピューターとみなされている。
日本を代表するスーパーコンピューター「富岳」がランキング4位に輝いた。「富岳」は文部科学省の予算で開発が行われ、2020年に運用を開始。神戸市の理化学研究所計算科学研究センターに設置されている。
3位は米国の「Eagle(イーグル)」となった。トップ1位、2位のスパコンとは異なり、112万3,200コアを誇るこのスーパーコンピューターはクラウドシステムであり、プラットフォーム「Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)」を通じてアクセスできることが大きな特徴だ。
2位にランクインしたのは米エネルギー省協力のもとでインテル社とクレイ社が設計し、イリノイ州のアルゴンヌ国立研究所に設置されている「Aurora(オーロラ)」だ。核融合、低炭素技術、素粒子などの研究に利用されている。
画像:Barack Obama visiting Argonne in 2013.
1位に輝いたのはヒューレット・パッカード社が開発したスーパーコンピューター「Frontier(フロンティア)」となった。世界初のエクサスケールコンピューターとしてテネシー州のオークリッジ国立研究所内に設置されたもので、毎秒110億200万回の演算処理が可能だ。
画像:Oak Ridge National Laboratory
今回は米国勢が1位から3位を占める結果になった。日本の「富岳」は前回の2位から4位と後退したとはいえ、世界最速の計算能力を誇るスーパーコンピューターのひとつでありつづけている。今後の技術開発にも期待が高まる。