世界のトップリーダーが集まる「ダボス会議」閉幕:フランスのマクロン大統領も出席
今月15日から19日にかけ世界経済フォーラム(WEF)の年次総会「ダボス会議」がスイスのダボスで開催され、世界経済の喫緊の課題について政財界のトップたちが話し合った。
今年のダボス会議のテーマは「信頼性の回復」だった。WEFの取締役ミレク・デュセクがインタビューに応えて、このテーマになったのは「様々な社会や国家に対する信頼性が失われていることが明白であり、そういった動きに直接対応するため」だと語っている。
2022年、国際的な調査会社「Glocalities」が世界中の26,000人のひとを対象に行った調査では、WEFに対する信頼性も大幅に低下していることがわかった。調査結果では39%のひとがWEFを信頼していないと回答し、信頼すると答えた27%を大きく上回った。WEFを信頼しないと答えた人たちは社会から軽視されていると感じており、抑圧や不平等、腐敗、表現の自由などについて懸念を抱いていたという。
今回の会議に先立って、WEFは現在の社会が抱える短期的・長期的リスクを伝える新たなレポートも公開している。それに関して、同じくWEFの取締役であるサディア・ザヒディはSNS上の投稿でこう語っている:「世界の指導者たちは短期的な危機に対して協力するべきなのはもちろんのこと、長期的な問題に対しても、より柔軟で持続可能、インクルーシブな未来を築くための基礎を整える必要もある」
短期的には、いまから2年間は偽情報やデマなどのリスクがもっとも懸念されている。というのも、2024年には世界人口の約4割が投票に関わることになるからだ。WEFはフェイクニュースやデマが選挙結果の正当性を毀損し、選挙というプロセスを損なう恐れがあると警告している。
また、WEFの専門家たちは気候変動による異常気象も強く懸念しており、短期的には二番目、長期的には一番のリスクと考えられている。その理由はこう語られている:「2030年代初頭には1.5℃の気温上昇が起こるとみられるが、その前後には長期的かつ、潜在的に不可逆的・自己増殖的な変化が地球上にもたらされることになる。だが、世界の国々はいまだそのような変化を引き起こすことに対する備えが十分とは言えない」
3番目に懸念される短期的リスクは社会の分断の加速だ。会合ではこの問題についても話し合われ、WEFはこう述べている:「社会の分断は政治的なものだけではなく、現実をどのように捉えるかというレベルにまで及びつつあり、社会の統合性だけでなく個々人のメンタルヘルスすら脅かす問題となっている」
専門家によると、4番目に懸念される短期的リスクはサイバーセキュリティの脆弱性だという。これはAIの発達によって引き起こされるリスクとも関連しており、会合の主な論点ともなった。AIそれ自体は短期的には29番目のリスクでしかないが、10年というスパンで見ると6番目にまで上昇している。
5番目に懸念される短期的リスクは武力衝突の頻発と、それに伴う戦死者数の急増だ。こういった戦争の増加は各地に伝播する懸念があり、治安の悪化や人道的危機をもたらす恐れがある。
ダボス会議の参加者は一般的に超富裕層の人々だが、6番目に懸念される短期的なリスクとして経済的成功の機会が奪われ、インフレが進むことについても話し合われた。専門家によると、短中期的な経済の見通しは非常に不明瞭で、インフレがさらに進む可能性も存在するのだという。
主催者の発表によると、今年のダボス会議には100ヵ国以上の国から政府関係者が参加し、1000以上の各種フォーラムや社会活動団体のリーダー、専門家、若年層の代表者、起業家なども集まったという。もちろん、例年通り多くの大富豪も参加している。
とはいえ、ダボス会議にはだれでも参加できるというわけではない。そもそも招待状が必要だし、WEFメンバーなら参加費は無料だが、『アントレプレナー』誌によるとそれ以外の場合はおよそ28,000ドル(約420万円)ほどの費用がかかる。しかも到着してからもさらにお金は必要で、たとえばテレビ局「CNBC」のレポートでは近場のホテルで買えるブリトーがなんとひとつ55ドル(約8,200円)もするという。付け合わせにフライドポテトが欲しければ、さらに22ドル(約3,300円)必要だ。
『ブルームバーグ』によると、ダボス会議には60人ほどの各国の指導者層が集まったという。とりわけ注目されたのがアメリカのブリンケン国務長官やフランスのマクロン大統領、中国の李強国務院総理などのスピーチだ。もちろん、多くの大富豪たちとお近づきになれるチャンスでもある。
2023年にダボス会議が開催されて大富豪や各国の政治家が大きな問題について話し合っていた時に、貧困問題に取り組む団体「オックスファム」が厳しいレポートを公表した。それによると、直近の2年間で、世界の富裕層上位1%(その多くがダボス会議に参加している)だけで残りの99%の人々の2倍の金額を稼いでいたのだという。英紙『ガーディアン』は会議などやめて「どうも。来年もこんな感じでグローバル資本主義をやっていこうと思います。いいよね? よろしく」というメールでも書けばいいと皮肉っている。
2022年に発表された調査によると、会議に向かう飛行機のうち半分はプライベートジェットであり、参加者の10人に1人はプライベートジェットでやってきたという。しかもそれで地球温暖化について話し合っているというのだ。もっとも短いフライトはなんとたったの21kmしか飛んでおらず、それだけで車35万台分に相当する二酸化炭素を排出している。
ジャーナリストのピーター・グッドマンは『ダボスの男』という本を書いて、こう言った会議で大富豪の影響力が増大していくことを批判している:「投資ファンド『ブラックストーン』のCEOスティーヴン・シュヴァルツマンやその仲間のダボスの男たちは莫大な富を得ただけでは満足しなかった。自分たちが倫理的にも優れていると、社会から承認されることを求めたのだ」