台湾の「独立勢力」を威嚇する中国:大規模な軍事演習を実施
CNN等のメディアが、中国が台湾周辺海域で大規模な軍事演習を行ったことを伝えた。中国はこれを台湾の「独立勢力への強い懲罰」だとしている。
中国はかねてから台湾を自国の不可分な領土の一部と見なしており、習近平政権となってからは台湾を実効的に支配しようとする野心を隠さなくなっている。
台湾周辺海域での軍事演習が行われたのは、台湾で民主的な選挙の結果新たな総統が誕生してほどなくのことだった。
CNNによると、台湾国防部は次のように述べて中国の演習を非難したという:「我々は確固たる意志と自制心でこの事態に臨んでいる。紛争を自ら求めるところではないが、逃げるつもりもない。自分たちの国家の安全を守る矜持がある」
台湾で頼清徳新総統(民主進歩党)が誕生したのは5月20日のことだ。就任演説では中国に対して「台湾への恫喝を止めよ」とかなりはっきりしたメッセージを送ったという。BBCが伝えている。
頼総統は台湾は決して脅しに屈しないと宣言、中国政府に対して武力による恫喝を止めて対等な立場での対話に応じるよう呼びかけた。
頼総統はこう述べている:「中国には台湾に対する政治的・軍事的恫喝を中止するよう求めたい。そして、台湾とともにグローバルな責任を担い、台湾海峡のみならず、全世界的に平和と安定を維持する立場となって、世界平和に寄与しようではないか」CNBCが伝えている。
同じくCNBCによると、頼総統は「民主主義と自由に関して一歩も引くことはできない」とも述べたという。
当然ながらというべきか、習近平政権は頼総統のこういった発言に反発、完全な独立を目指すという台湾の方針には未来がないと主張した。
毎日新聞によると、中国の汪文斌(おうぶんひん)外交官はこう述べたという:「台湾独立に未来はない。どのような名目や旗印を掲げようとも、台湾の分離・独立はすべて失敗する運命にある」
日経新聞によると、中国の習近平政権は頼総統を台湾の「独立分子」と見なして危険視しているという。
BBCによると、台湾の前総統で現在は副総統を務める蔡英文(民進党)も同様に中国からは「独立派」とみなされているという。
頼総統の父親は炭鉱労働者だったが早くに亡くなり、女手一つで育てられた。それでも苦学の末アメリカのハーバード大学で公衆衛生の修士号を取得、その後政治の世界に飛び込んだ。
頼総統は台湾で立法委員を11年間務めていたことがあるほか、7年間にわたって台南市の市長にも就いていた。その後、2017年には蔡英文政権下で行政院長(首相に相当)就任、2020年からは副総統も務めた。
かつては急進的な独立派だったこともあると言われている頼総統だが、『ニューヨーク・タイムズ』紙も指摘するように、今回の総統就任演説では台湾はすでに事実上中国からの独立を達成しているとして現状維持の方針を提示した。
苦難の時期にある台湾を率いる存在として、頼総統は多くの困難に直面することだろう。直近の問題としては、総統選と同時に行われた選挙で自身の所属する民主進歩党は議席の過半数を維持できなかったため、政権運営が難しくなりそうだ。
その間にも中国は周辺海域での軍事的存在感をいや増しつつあり、大規模な軍事演習も行われている。これらの問題に頼総統はどのように取り組んでいくのだろうか。