中国の人口が60年ぶりに減少へ:過去最低の出生率
中国の人口が60年ぶりに減少し、出生率は1000人当たり6.77と統計開始以来最低を記録した。
長い間、中国は世界で最も人口の多い国として知られていた。しかし、中国の人口減少により早ければ2023年4月にはインドが世界一の人口大国になると予想されている。
中国の出生率はここ数年低下していたが、ある政府関係者は「人口のマイナス成長の時代」に突入したとコメントしている。
2021年に発表された10年に一度の国勢調査の結果、中国の人口増加率はここ数十年で最低となったことが明らかになった。
また、中国では2022年に初めて死亡率が出生率を上回った。1976年以降最も高い死亡率を記録し、人口1000人当たりの死亡者数は前年の7.18人から7.37人に増加した。
『エコノミスト・インテリジェンス・ユニット』のアナリストである蘇月によれば、この傾向はコロナ以降も続き、おそらく悪化するとしている。蘇月は2023年を通して中国の人口がさらに減少すると予測している専門家の一人だ。
蘇月はBBCに対し、若者の高い失業率や所得への不安から、結婚・出産計画がさらに遅れ、新生児数が低迷する可能性があると指摘している。
さらに、2023年の死亡率は、新型コロナウィルスのパンデミック以前より高くなる可能性が高い。12月に「ゼロコロナ政策」を大きく軌道修正して以来、中国では感染者数が急増しているのだ。
1979年に導入された一人っ子政策は、中国の人口動態に大きな影響を与えてきた。
昔から女子より男子を好む文化の中で、一人っ子政策は強制的な中絶にもつながった。中国では1980年代から男女比が偏っているとされている。
一人っ子政策は2016年に廃止された。近年は中国政府も減税や妊産婦医療の充実などの優遇策を講じ、少子化を逆転、少なくとも減速させようとしている。
出生率を上げるために、中国政府は2021年5月、出産費用や教育費の軽減の他、夫婦一組につき3人まで子どもをもうけることを認める法律を成立させた。
『グローバル・タイムズ』紙によれば、2021年7月、四川省にある攀枝花市は子どもを2人以上産んだ夫婦にベビーボーナスとして経済的サポートを行うことを発表した。
このような支援は、中国では初めての試みで、中国政府は人口減少への対策に必死なようだ。
一方で、国民はためらいを隠せない。1980年から2016年まで、子どもを2人以上生めば罰金を科された。それが今では、子どもを2人以上産むとボーナスがもらえるのだ。
ノースカロライナ大学の人口統計学者カイ・ヨンは、『サイエンス』誌に若いカップルが子どもを増やさない選択をする理由についてコメントした。
カイ・ヨンは『サイエンス』誌に「家族を持つこと、あるいはもう一人子どもを持つことを最優先事項としている若いカップルはほとんどいない」と語った。
中国では多くの女性が、社会の変化はあまりにも少なくしかも遅きに失している上、男女平等や雇用の安定がないとしている。
また、『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、多くの女性がこの政策に怒りを感じているという。子どもを持つことで与えられる手当ては結婚していなければ適用されず、シングルマザーは申請できないからだ。
中国政府の統計によれば、現在、人口の65%近くが都市部に集中している。こうした生活エリアも、夫婦が計画する子ども数に影響を与えている。
南京大学の人口統計学者Yong Cai(蔡勇)は『サイエンス』誌にこう語る:都市部の高い生活費や学費、混雑した生活環境などは、「第3子はおろか第2子を産む意欲も低下させる」
Yong Cai(蔡勇)は『サイエンス』誌にこう続けた。「出産を促進するためのあらゆる新しい取り組みやプロパガンダにもかかわらず、夫婦は単に子どもを増やすことを避けている」
中国の経済成長を支えてきたのは、10億人に近い生産年齢人口(15〜64歳)だ。
金融テクノロジー企業ブルームバーグが報じたように、中国が実質的に「世界の工場」となれたのは、大量の生産年齢人口を抱えているからだ。
今後、更に高齢化が進み、国連による人口予測を信じるならば、2030年代には中国の経済状況は全く違ったものになっているかもしれない。
しかし、全ての人口統計学者が、中国が人口危機に直面していると考えている訳ではない。香港科技大学のスチュアート・ギーテル=バステンもその一人だ。
スチュアート・ギーテル=バステンは『サイエンス』誌にこうコメントしている。「.....中国の人口もより健康になり、教育や技術が向上し、テクノロジーへの適応力が高まっています」