中国製装備を運用するロシア:軍に加えてモスクワ地下鉄公社まで装甲車を購入
最近公開された画像によって、ロシア軍がウクライナの戦場で中国製装甲車を使用していることが判明したそうだ。ウクライナの軍事情報サイト「Militarnyi」が報じている。
件の画像はTelegramチャンネル「Ugolok Sitha」が投稿したものだが、その後、別のTelegramチャンネル「Vodograi」がリポストしたことで、ネット上に広く拡散された。そして、そこに写っていたのは、中国製装甲車ZFB-05「新星」の前でポーズをとるロシア兵の姿だった。
画像:Telegram @Ugolok_Sitha
同メディアいわく:「画像にはZFB-05『新星』が写っている。この車両はドローン対策の屋根や強化フロントガラスに加え、側面にも飛来物対策が施されており、機関銃を備えている」
画像:Telegram @Ugolok_Sitha
同メディアによれば、ZFB-05がロシア軍によって運用されていることが初めて確認されたのは2023年6月だったという。そのときはロシア連邦国家親衛隊(ロスグヴァルディア)がこの車両を使用していた。
「Militarnyi」によれば、「これらの装甲車のうち8両はロスグヴァルディアを構成するチェチェン共和国の特殊部隊『アフマト部隊』によって運用されていた」とのこと。
画像:Wiki Commons By Легендарные подразделения от Геннадия Дубового, CC BY 3.0
なお、同メディアいわく、「今回の画像に写っているのがアフマト部隊のものなのか、それともロシア軍が新たに車両を購入しているのかは不明」だそうだ。
画像:Telegram @Ugolok_Sitha
また、今回の画像がウクライナ国内で撮影されたものなのかどうかについても、疑問が残るとされる。ただし、前出のTelegramチャンネル「Ugolok Sitha」は、この写真がウクライナ領内のロシア軍支配地域で撮影されたものだとしている。
画像:Telegram @Ugolok_Sitha
しかし、ロシア軍の運用する中国製装甲車の画像がネット上で出回ったのは今回が初めてではない。たとえば、今年8月には、モスクワ地下鉄公社が使用する中国製装甲車の画像が注目を集めた。
『ニューズウィーク』誌によれば、この画像はロシアのTelegramチャンネル「Avtobusy y Vobbechle」が投稿したものであり、「モスクワ地下鉄公社は武装を進めている」というコメントとともに、中国の自動車メーカー、東風汽車製の装甲車を捉えた写真が並んでいたという。
画像:Telegram @busandall
『ニューズウィーク』誌いわく、「Avtobusy y Vobbechle」はロシアの公共交通機関に関する情報を扱うチャンネルであり、件の装甲車はモスクワ地下鉄公社のセキュリティ部門によって購入されたものだと見られている。
画像:Telegram @busandall
実際、この装甲車の側面にはモスクワ地下鉄公社のロゴマークが赤でプリントされていた。
画像:Telegram @busandall
また、『ニューズウィーク』誌によれば、親露派メディアの「Tsargrad」はこの車両について、「民間特殊装備」として登録されており、ナンバープレートは通常トラクターに使用されるものだったと報じたという。
画像:スクリーンショット・YouTube @user-zu8ku4iu5p
軍事情報サイト「Defense News」いわく:「通常、地下鉄システムに装甲車は不要であり、疑念を抱かざるを得ない」さらに、ナンバープレートの種別に加えて、砲塔が設置されていることも懸念材料だとした。
画像:スクリーンショット・YouTube @user-zu8ku4iu5p
同メディアいわく:「この車両はAK-47ライフルによる銃撃にも耐えられる代物であり、中国国内では軍事用の対テロ車両とされているにもかかわらず、ロシアでは民間用トラクター扱いされているというのも不可解だ」
画像:Telegram @busandall
一方、「Militarnyi」はこの装甲車の車種について、東風汽車製の「EQ2091XFB」だと特定したが、車体に東風汽車のロゴマークはプリントされていなかったと指摘。
画像:スクリーンショット・YouTube @user-zu8ku4iu5p
同メディアによれば、「この車両には砲塔が装備された状態でロシアに送られたが、これは通常、重機関銃を設置するためのものだ」とのこと。さらに、「EQ2091XFB」の価格は通常13万ドルだが、オプションをすべて追加すると2倍に跳ね上がることもあるという。
画像:スクリーンショット・YouTube @user-zu8ku4iu5p
中国において東風汽車製の「EQ2091XFB」は全地形対応車に分類されており、おもに法執行機関が運用している。ところが、ロシアでは、なぜか地下鉄会社が使用しているのだ。しかも、「Militarnyi」によれば、モスクワ地下鉄公社は以前にもこの種の装甲車を購入したことがあるという。
画像:Telegram @busandall
「Militarnyi」いわく:「過去4ヵ月間のうちに、モスクワ地下鉄公社のセキュリティ部門は装甲車を4両も受け取った。1両目はRIDA社製の『Buran』、続いてZ-STS『Akhmat』、さらに『Patrol』、そして今回は中国の東風汽車が加わった」
画像:Telegram @busandall
また、「Defense News」は「地下鉄の運営に対テロ装甲車両を利用するという発想は不合理に思える」として、モスクワ地下鉄公社の方針に疑念を示している。
モスクワ地下鉄公社の不可解な行動について、もっとも納得のゆく説明は、ロシア政府が昨年承認した新たなセキュリティシステムの創設に関連するという見方だろう。
画像:Telegram @busandall
昨年4月にロシア政府の承認を受けたことで、モスクワ市は地下鉄システム防衛のため、新たなセキュリティシステムを構築してロスグヴァルディアと連携することができるようになったのだ。
また、「Defense News」によれば、「モスクワ地下鉄の駅や出口は引き続き警察が警備すると見られるが、モスクワ地下鉄公社がセキュリティ部門を立ち上げたことで、ロシア人たちの間では地下鉄会社が民間軍事会社を創設しようとしているのではないか、という冗談めいた憶測が流れている」とのこと。
しかし、同メディアいわく、「こういった冗談には徐々に懸念が含まれるようになってきた」らしい。セキュリティ部隊が実際に民間軍事会社に発展して、ウクライナに派遣されてしまうのではないかという見方も出てきているためだ。
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