主要都市の一つをついに占領したロシア軍:一方、国連はロシアのウクライナ侵攻を非難
激しい戦闘が続くウクライナでは、ロシア軍がウクライナ第2の都市ハリコフ(写真)の攻撃を開始。また、人口28万人あまりを抱える、クリミア半島にほど近い港湾都市ヘルソンを占領した。
しかし、『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ロシア軍の侵攻は思うように進んでいない模様。食糧および燃料の不足に悩まされるロシア軍では上層部に対する不満が渦巻いており、少なくない数の兵士たちが投降しているというのだ。
一方、近隣諸国は避難してきたウクライナ難民の受け入れを始めた。国連の報告によれば、すでに難民の数は100万人を超えており、このまま衝突が続けば400万人に達する可能性もあるという。
141ヵ国がロシアのウクライナ侵攻を非難する国連決議を支持。一方、この法案に反対票を投じたのはロシアを筆頭に、ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、シリアのみ。棄権したのは中国、キューバ、イラン、インドをはじめとした34ヵ国。
米国のジョー・バイデン大統領は2022年の一般教書演説でウラジーミル・プーチン露大統領を厳しく非難。「専制政治には決して屈しないという断固とした決意」を強調した。
「(ウラジーミル・プーチン露大統領は)ウクライナを簡単に占領できると考えていたようだ。そうすれば、世界は黙って受け入れるだろうと甘く見ていたのだ。ところが今、彼は予想もしなかった頑強な抵抗にあっている。ウクライナの人々のパワーを思い知らされることになったのだ」バイデン米大統領は演説の中でこう述べた。
ドイチェ・ヴィレ放送の報道によると、ここ数日でアップル、エクソンモービル、ディズニー、アメリカン・エクスプレス、ボーイングといった大手企業もついにロシアでの営業停止を表明。経済専門ウェブサイト『Investopedia』によれば、ロシアの経済規模はカナダや韓国に次ぐ世界12位だという。
ベラルーシ国境で行われたロシア政府とウクライナ政府の一度目の交渉は決裂に終わった。
『ニューヨーク・タイムズ』が引用したペンタゴンの情報筋によると、ロシア軍はキエフを包囲し始めたとのこと。
一方、ロシア中央銀行は相次ぐ制裁に対処するため緊急の措置を取っている。モスクワ証券取引所は取引停止しているものの、ロシアルーブルはたった1日で米ドルに対して25%も下落した。
一方、石油価格は1バレル100ドルを超える暴騰を見せ、世界中でガソリン価格が急騰することになった。
緒戦では電撃的な侵攻作戦を成功させたロシア軍だが、その後、失速し始めたようだ。ウクライナ第2の都市であり、ロシア軍の主要な攻撃目標になっているハリコフでは週末に激しい戦闘が行われたが、ハリコフの地元政府によればウクライナ側が街を掌握しているという。
また、週末には世界中の人々がウクライナとの連帯を訴えデモを行った。
ヨーロッパ諸国の首都にあるモニュメントはウクライナ国旗の青と黄色にライトアップされ、ロシアに対する抗議の意を示した。
一方、ウクライナ政府とロシア政府の代表は、ベラルーシ国境で無条件の会合を行うことで一致した。
しかし、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこの会合にあまり期待していないようだ。『ガーディアン』紙は彼のコメントとして「大統領は停戦に消極的だったなどと後でウクライナの人々に言われないためにも、ロシアにチャンスを与える」と述べた。
写真:ウクライナ大統領
ウラジミール・プーチン露大統領はロシアの核戦力の警戒態勢を高めるよう命じた。冷戦時代に戻ったかのようなこの措置は、少し前には考えられなかった。
アルジャジーラの報道によれば、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「欧州連合(EU)は史上初めて、攻撃されている国が武器をはじめとした装備を購入・搬入するための資金援助をする」と宣言した。
欧州委員会委員長はまた、EUはプライベートジェットを含むロシアの航空機に対して空域の閉鎖を検討していると述べた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、キエフから彼を安全に避難させるという米国政府の申し出を拒絶。自国にとどまり、最後まで戦う意思を明らかにした。 CNNの引用によれば、ゼレンスキー大統領は「私に必要なのは弾薬だ。逃げる手段ではない」と述べたという。
写真:キエフのシェルターで仮眠をとるウクライナのボランティア
米国と欧州連合(EU)は、ロシアの銀行を国際金融決済システムSWIFTから排除し、同国の主要銀行をヨーロッパ諸国から遮断する措置を取ることで一致した。
ロシア軍が攻撃を続ける首都キエフでは、数千人のウクライナ人たちが避難しようとしている。『ガーディアン』紙によれば、ロシア軍はキエフから32キロあまりの地点に到達したという。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、少なくとも137人が死亡したが、彼らはロシア軍と戦うために残っていた人々だと述べた。そして、大統領も首都を離れないと宣言した。
一方、ロシア国内でも全土で抗議活動が行われ、逮捕者は数百人に上った。多くの人々が街角に繰り出し、ロシア人全員がウクライナにおける自国政府の行動を支持しているわけではないことを示したのだ。
画像:2月24日にサンクトペテルブルクで行われた無許可デモの参加者たち。
ウラジミール・プーチン露大統領は、ウクライナ東部での軍事作戦の開始を承認。一方、西側のメディアは、キエフを含むウクライナ全土に対する攻撃が行われていることを報じた。
多くの人が予期していた戦争の勃発にホワイトハウスも素早く反応:「この攻撃による犠牲や被害の全責任はロシアにある」ジョー・バイデン米大統領はこう断言。「米国および同盟国、パートナーは結束して断固とした対応を取る。ロシアはツケを払うことになるだろう」
『ガーディアン』紙によれば、ウクライナが国家非常事態を宣言したのは2月23日。ウォロディミル・ゼレンスキー率いるウクライナ政府は旅行の制限や、夜間外出禁止令を発令し、危険な地域にいる人々の避難を開始した。
一方、ドネツクとルハンシクの分離主義者たちはウクライナ軍と戦うため、ロシアによる支援を正式に要請。
AP通信によれば、ロシア政府もキエフにあるロシア大使館員の退避を開始。また、ウクライナ政府のウェブサイトにはサイバー攻撃が仕掛けられた。
米国政府は、最近のロシアの行動を「侵略の第一歩」であるとして非難。かつてない規模の経済制裁を発動した。
アルジャジーラはジョー・バイデン米大統領の言葉をこう伝えた:「ロシア政府は西側諸国との経済的なつながりを失った。西側諸国から資金を調達することができないだけでなく、米国市場やヨーロッパ市場で新しい債務を取引することもできない」
同時に、欧州連合(EU)はロシアに制裁を課すことで全会一致。制裁にはビザ発行の停止や、ロシア下院に議席を持つ351人の議員の資産凍結などが含まれる。
また、EUはウクライナ難民の流入に備え、準備を始めた。
BBC放送によると、英国のボリス・ジョンソン首相は「ウクライナに対するさらなる軍事的支援」を約束したという。
一方、野党党首のキア・スターマーは、保守政権はロシア人富豪が英国で不動産を購入するの防ぐためにもっと踏み込んだ措置を取るべきだと批判。
他方では、キューバやベネズエラをはじめとした国々がロシアとの連携を表明。『El País』紙によると、共同声明に加え、ロシア議会はキューバがロシアに対して負っている債務の期限を2027年まで延長したという。
2021年2月21日、ウラジーミル・プーチン露大統領は、独立派が支配するウクライナ東部の2州、ドネツクおよびルハンスクの独立を承認。続いて両地域を守るためとしてロシア軍を派遣した。
アルジャジーラが引用した声明の中で、プーチン露大統は両国間の歴史的なつながりを強調。また、ウクライナが「国家としての体を成していたことは一度もない」と主張。ウクライナがNATOに加盟した場合、「ロシアの安全保障上の直接的脅威」になるだろうと述べた。
画像:2月22日、ドネツクの兵士。
欧州連合、米国、および英国は、ロシアの行動をすぐさま非難。ジョー・バイデン米大統領は、ドネツク人民共和国およびルハンスク人民共和国に投資した者には制裁を発動するという大統領命令に署名した。
一方、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ロシアとドイツを結ぶガスパイプライン、ノルドストリーム2の操業許可を凍結。
ドイチェ・ヴェレ放送によると、ガスパイプラインは完成しているものの、ドイツ政府の許可なしでは操業できないという。
専門家たちは、ドネツクとルハンスクの保護を名目としたロシアの軍事作戦は、ここ数年間くすぶり続ける紛争の分かれ道になると考えていた。
2014年3月、ロシアはウクライナの社会不安を背景にクリミア半島を侵略、併合した。
同年、ウクライナ東部に位置し、多くのロシア系住民を抱えるドネツクおよびルハンスクの2州がウクライナからの独立を宣言。
この紛争はドンバス戦争と呼ばれ、はじめは散発的なものだったが、ここ10年で激しさを増し続けている。
転機は2020年半ばに訪れた。ウクライナは、ウォロディミル・ゼレンスキー政権の下でNATOのパートナーシップ・プログラムに参加したのだ。コメディ俳優から政治家に転身したゼレンスキーがウクライナ大統領に選出されたのは、2019年初頭だった。
NATO首脳部はプログラムに参加したからといって、その国がNATOに加盟することになるわけではないと述べたが、ゼレンスキー大統領にとってNATOは最優先課題の一つだ。
ロシア政府は、NATOの東方拡大が同地域におけるロシアの影響力低下につながりかねないという危惧を何度も表明している。
一方、2020年11月のジョー・バイデン政権誕生は、NATO最大のパートナーが国際政策を変更する可能性を意味していた。
アルジャジーラの報道によれば、ロシア軍はウクライナ国境の兵力を2021年11月には増強していたという。また、ウクライナ政府はロシアが10万人以上の兵士を動員したと主張している。
バイデン政権は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、「抜本的な」経済制裁を課すと述べてロシアを牽制した。
2021年12月、ロシアはNATOに対し、東欧での軍事活動を停止し、旧ソビエト諸国を加盟させないよう要求した。
NATOは1月下旬までにプーチン露大統領に返答したが、その内容は、NATOは開放的な政策をとっており、加盟基準を満たすならばウクライナの加盟も拒否できないというものだった。
同じ頃、バイデン米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は電話会談を行っていた。米大統領は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、米国は「断固とした対応」を取ると約束した。
米国政府は1月下旬までにキエフの大使館職員から家族を退避させたほか、8,500人の部隊に出撃準備を命令した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領とドイツのオラフ・ショルツ首相は外交努力で危機回避の糸口を見つけるため、1月下旬と2月上旬にモスクワとキエフを訪問した。
ラジオ局NPRによると、米国は2月5日に兵士1000人をドイツからルーマニアに移動させたほか、ドイツとポーランドにさらに2000人を増派した。
ロシアと同盟国のベラルーシは2月10日に合同軍事演習を開始。ベラルーシ・ウクライナ間の国境地帯に3万人の軍隊を駐留させた。
バイデン米大統領とプーチン露大統領は2月12日に首脳会談を行った。米大統領が侵略は人道危機をもたらすことを強調したのに対し、露大統領はNATOが譲歩してウクライナの加盟を拒否するよう求め、会談は平行線を辿った。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領と中国の習近平国家主席(写真)は、2月16日に紛争の政治的解決を呼び掛けた。
アルジャジーラは2月20日、ロシアとベラルーシがドネツクおよびルハンスクの民間人をロシアに避難させ始めると同時に軍事演習を延長したと報道した。
その頃、アントニー・ブリンケン米国務長官はG7の外相たちと会談を行い、ロシアがウクライナ侵攻の準備をしていると訴えた。
2月21日、バイデン米大統領とプーチン露大統領は、マクロン仏大統領が仲介するサミットで会合を持つことで合意した。しかし、米政府はロシアが侵攻に踏み切らないことをサミット参加の条件にしていた。プーチン露大統領がドネツク人民共和国およびルハンスク人民共和国の独立を承認した結果、合意は不透明になってしまった。
一方、プーチン大統領がドネツクとルハンスクの2州がウクライナから独立することを承認した翌日、石油価格は上昇し、ルーブルは下落した。