反プーチン派指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏が謎の獄中死
ロシア国営のタス通信は反プーチン派の野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が獄中で死亡したと報道。
ロシア・トゥデイ放送によれば、ロシア当局はナワリヌイ氏の死因について血栓だと見られると発表したようだ。
一方、『ガーディアン』紙はロシア刑務所当局のプレスリリースを引用。それによれば、ナワリヌイ氏は「散歩後に不調を訴え、にわかに意識を失った」とされる。
ただし、『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、ナワリヌイ氏の支援チームは同氏の死亡を確認できていないとのこと。ナワリヌイ氏は昨年12月に北極圏の刑務所に移送され、外部との連絡を制限されていた。
ナワリヌイ氏は、自身の率いる反プーチン派勢力が「過激派組織」にあたるとして禁固19年の判決を受け、服役中だった。
そのような背景から、ナワリヌイ氏の急死はプーチン政権の関与によるものではないか、という疑惑が持ち上がっているのは言うまでもない。メディア各社によれば、西側諸国の首脳たちは相次いでプーチン大統領を非難する姿勢をあらわにしたという。
アレクセイ・ナワリヌイ氏がロシア政界に影響力を及ぼすようになったのは2010年代初頭。政治活動家でブロガーでもあった同氏は、2011年のロシア下院議員選挙で不正が行われたと主張。モスクワで行われたデモに参加し、逮捕されている。
その後、ナワリヌイ氏は反プーチン派のリーダーとして広く知られるようになる。2013年にはモスクワ市長選、2018年にはロシア大統領選、2019年には副大統領選に立候補を表明したが、そのたびに詐欺や不正の告発がなされ、妨害されてしまった。
一方、西側諸国はナワリヌイ氏の政治活動を高く評価。2017年には『タイムズ』誌によって「オンライン上で最も影響力がある25人」のひとりに選出されたほか、2021年には欧州議会からサハロフ賞を授与されている。
2020年8月には、トムスク発モスクワ行きの飛行機内で神経剤「ノビチョク」による暗殺未遂に遭う。一命をとりとめたナワリヌイ氏はベルリンに避難し、そこで治療を受けることとなった。
治療によって容体を回復したナワリヌイ氏はリスクを承知で2021年1月に帰国。モスクワの空港に到着するや否や身柄を拘束され、ロシア全土で抗議デモが巻き起こった。
ウクライナ侵攻が長期化する中、立場を異にする人々への弾圧をいっそう強めるプーチン政権。道半ばで倒れたナワリヌイ氏の志は、はたしてロシア国内で受け継がれるだろうか?