ロシア・オリガルヒ所有のクルーザー:各地ですすむ差し押さえ

億万長者アブラモビッチ氏のクルーザー
イタリアで差し押さえられたクルーザー「A」
豪華クルーザー「A」
イタリアが差し押さえた「Lady M」
「Lena」
すんでのところで逃走失敗
ハンブルクでのクルーザー差し押さえ
バルセロナでも始まった差し押さえ
監視を強化するスペイン・バレアレス諸島
クルーザーはどこに向かうのか?
トスカーナに停泊する所有者不明のクルーザー
象徴的な意味合い
別荘の差し押さえ
繰り広げられる経済戦争
クルーザーに波及した戦争の影響
停戦まで続く制裁
億万長者アブラモビッチ氏のクルーザー

写真は、チェルシーFCのオーナー、ロマン・アブラモビッチ所有の巨大クルーザー、ソラリス。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、すでに何隻かのクルーザーが各国当局によって差し押さえられている。英国、欧州連合(EU)、米国、オーストラリアをはじめとする西側諸国が課した経済制裁によって、プーチン大統領と親しいとされるロシアの新興財閥(オリガルヒ)たちのクルーザーは差し押さえを回避するため、一斉に逃げ出し始めたのだ。

 

 

イタリアで差し押さえられたクルーザー「A」

世界最大級のクルーザーを差し押さえたイタリア。対象となったのは、銀行や肥料、石炭事業に携わるロシアのオリガルヒ、アンドレイ・メルニチェンコ所有のクルーザー「A」(写真)。『インディペンデント』紙の報道によれば、トリエステ港でイタリアの財務警察が接収したという。

豪華クルーザー「A」

メルニチェンコ氏の「A」は造船技術の粋を尽くしたクルーザーであり、6億9000万ドルの資産価値があるとされる。その豪華さはすこし近づいてみるだけでわかるだろう(写真)。アンドレイ・メルニチェンコ本人は平和を支持すると発言したものの、プーチン政権と関わりの深いオリガルヒとして経済制裁を逃れることはできなかった。

 

イタリアが差し押さえた「Lady M」

また、『コリエーレ・デラ・セラ』紙をはじめとするイタリアの地元メディアによると、アレクセイ・モルダショフが所有するクルーザー「Lady M」も差し押さえられたとのこと。モルダショフ氏に対しては財務警察がトスカーナにある別荘の差し押さえも行っている。モルダショフ氏は鉱業と鉄鋼業で財を成した。

「Lena」

写真で観光客の向こうに写っているクルーザー「Lena」もイタリア当局の手で差し押さえられた。「A」や「Lady M」に比べれば質素だが、それでも豪華クルーザーであることには変わりがない。所有者は天然ガスおよび石油化学産業で財を成したゲンナジー・ティムチェンコ。『フォーブス』によれば110億ドル以上の資産を所有しているという。

 

 

すんでのところで逃走失敗

地中海ではフランス当局も石油会社ロスネフチの会長、イーゴリ・セーチン(写真:プーチン大統領とともに)のクルーザーを差し押さえた。ウェブサイト『ビジネスインサイダー』によると、彼のクルーザー「Amore Vero」はマルセイユにほど近いラ・シオタの造船所で修理中で、制裁回避のため出港の準備を急いでいたという。

ハンブルクでのクルーザー差し押さえ

放送局ドイチェ・ヴェレの報道によると、ドイツ当局は、ロシアで3番目の大富豪、アリシェル・ウスマノフが所有するクルーザー「Dilbar」を差し押さえたとのこと。

バルセロナでも始まった差し押さえ

しかし、ロシア・オリガルヒのクルーザに対する制裁の主な舞台になっているのは地中海だ。南仏コートダジュールでは逃走劇が繰り広げられたが、バルセロナでも同様の事態が起きている。『El País』紙によると、バルセロナの港湾局は、全長85メートルのクルーザー「Valerie」を差し押さえを命じたという。このクルーザーはロシアの巨大コングロマリット「ロステック」のCEO、セルゲイ・チェメゾフが所有していた。

写真:Enes / Unsplash

監視を強化するスペイン・バレアレス諸島

地元メディアの報道によると、スペインで出港できなくなっているロシア・オリガルヒ所有のクルーザーはもっとあるはずだという。これは、地中海に浮かぶリゾート地、マジョルカ島・イビサ島・メノルカ島・フォルメンテラ島で、クルーザー逃亡を防ぐための監視が強化されたためだ。

クルーザーはどこに向かうのか?

欧州連合(EU)の港は差し押さえのリスクがあるとなると、逃げ出したクルーザーは一体どこに向かえばよいのだろう?今のところ、中立の立場を維持している国もあり、たとえば、トルコは経済制裁に関しては消極的だ。そこで、トルコの港に錨を下ろすという手があるのだ。写真は2015年にトルコ・ムーラ県で撮影されたロシア・オリガルヒのクルーザー。

トスカーナに停泊する所有者不明のクルーザー

また、『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によれば、イタリア・トスカーナ州には巨大クルーザー「シェヘラザード」をはじめ、所有者不明のクルーザーが無数に停泊しているという。「シェヘラザード」はヘリポート2つを備えた豪華クルーザーだが、ロシア・オリガルヒの所有かどうかは不明。しかし、財務警察は監視を続けている。

写真:Federico Burgalassi / Unsplash

象徴的な意味合い

富を誇示するロシアのオリガルヒのクルーザーを差し押さえることは経済的影響に加え、象徴的な意味合いを持っている:ウクライナ侵攻が続く限りヨーロッパはロシアの富豪たちに安住の地を提供しないというメッセージを送っているのだ。写真は2014年に撮影されたスレイマン・ケリモフのクルーザー「Ice」。

別荘の差し押さえ

しかし、差し押さえの対象になっているのはクルーザーだけではない。トスカーナ地方の別荘に対して制裁が科されていることはすでに触れたが、ロシアの大富豪たちは地中海の様々な地域に別荘を持っている。写真はイタリア・トスカーナ地方の風景。

写真:Reuben Teo / Unsplash

繰り広げられる経済戦争

ウクライナ国内で砲火が交えられる一方、世界ではロシアに対する経済戦争が繰り広げられている。欧州連合(EU)は、600人以上の制裁対象者リストを作成した。

写真:Waldemar Brandt / Unsplash

クルーザーに波及した戦争の影響

現在、ヨーロッパの海ではロシア・オリガルヒ所有のクルーザに対する追及の手が伸びているが、これも経済制裁の一環である。

写真:David Ramirez / Unsplash

停戦まで続く制裁

ロシア・オリガルヒに対する制裁は、プーチン露大統領に対して停戦に向けた間接的圧力をかけるための措置だ。地中海はすでにロシアの富豪にとって安住の地ではなくなったが、果たして効果のほどは?

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