バラエティ豊かな宇宙食のいま:日本では宇宙用カレーやラーメンも開発
宇宙開発技術の日進月歩だ。2023年には、米国・ロシア・中国に続いてインドが、翌年には日本が探査機を月面に着陸させた。さらに、中国は月の裏側に世界初となる探査機を送り込んでいる。
画像:JAXAデジタルアーカイブス
一方、米国ではイーロン・マスク率いるスペースX社が、再使用可能な宇宙船および大型ロケットブースターの実用化に向けて試験を重ねている。また、ジェフ・ベゾス率いるブルーオリジン社も、スペースXに後れは取っているものの、今年1月には大型ロケット「ニューグレン」の打ち上げに漕ぎつけた。
今のところ、一握りの人々しかアクセスできない宇宙だが、人類が大々的に宇宙へ乗り出す日も近いのかもしれない。しかし、そうなると気になるのは宇宙での食事だ。
さて、宇宙食と聞いてまっさきに思い浮かぶのは、チューブに詰められたドロドロの流動食やパサパサの固形物ではないだろうか? 率直に言って、あまり美味しそうなイメージはない。
写真は米国の宇宙船「ジェミニ3号」で用いられた宇宙食(1965年)
しかし、宇宙開発は食の分野でも大きく進展しており、宇宙飛行士が栄養補給のためだけに行う食事というイメージはもはや過去のものとなりつつある。そこで、今回は宇宙食にまつわる豆知識を見てゆくことにしよう。
そもそも、宇宙食にはどのようタイプの食品が用いられているのだろうか? 宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙技術部門のウェブサイトによれば、現在の国際宇宙ステーションではレトルト食品、フリーズドライ食品、ドライフルーツや干し肉、ナッツやクッキーに加えて、生野菜や果物もメニューに加えられているそうだ。
画像:ディスカバリー号によるミッション「STS-121」に向けて、乗組員の食事を準備するスタッフ(NASA Images, 2006)
ただし、生野菜などは持ち込める量が限られている上、傷んでしまう可能性もあるため、早めに食べなくてはならないそうだ。また、市販の食品を宇宙船に積み込むケースもあるとのこと。
画像:宇宙での水菜栽培を視野に入れた地上実験の様子(NASA Images, 2019)
NASAのウェブサイトによれば、市販品を宇宙食として用いる場合には、専用のパッケージに入れ替えることになっているそうだ。また、マヨネーズやケチャップ、マスタードをはじめとする調味料ももちろん完備されている。
画像:JAXA Digital Archives
ただし、コショウや塩のような粉末の調味料はそのまま用いると船内で飛び散ってしまうおそれがあるため、オイルや水に溶かした状態になっている。
一方、レトルト食品やフリーズドライ食品はストローを用いて食べるものもあれば、フォークやスプーンですくって食べる形式のものもある。いずれにしても、微小重力下で食べ物をこぼさずに食事するには、練習が必要となりそうだ。
ちなみに、ここまでご紹介してきたのはNASAが供給する宇宙食の話であり、ロシアの宇宙食では缶詰が多く用いられているとのこと。ちなみに、国際宇宙ステーションでは宇宙食をお互いにシェアしており、飛行士たちは米国製とロシア製の両方を口にしている。
画像:ロシア製宇宙食の缶詰(NASA Images, 2013)
では、その他の国々からやってきた宇宙飛行士たちは自国の宇宙食を船内に持ち込むことができないのだろうか? 実は、そんなことはない。
米国・ロシア製以外の宇宙食であっても、基準を満たせば、船内に持ち込み、各国それぞれの味を楽しむことができるのだ。日本の場合は、民間の食品メーカーが宇宙食の開発を行い、JAXAが基準を満たしているかどうか審査した上で「宇宙日本食」として認証するという仕組みになっている。
写真は認証を受けた「宇宙日本食」の数々(JAXAデジタルアーカイブス)
では、日本からはこれまでに、どのような食品が宇宙に持ち込まれたのだろうか? JAXAのウェブサイトによれば、歴代の日本人飛行士たちはカレーやたこ焼き、肉じゃが、ラーメンなどをミッション中の食事として楽しんだという。
画像:JAXAデジタルアーカイブス
また、現在、宇宙日本食の認証を受けている食品はカレーやラーメン、焼きそばといった日本の食卓に欠かせない料理に加え、うなぎの蒲焼や「柿の種」「からあげくん」といった変わり種まで、バラエティに富んでいる。
画像:JAXAデジタルアーカイブス
というわけで、現在の飛行士たちは、かつてのように流動食や乾燥キューブで生活しているわけではない。各国が腕によりをかけて開発した宇宙食に舌鼓を打っているのだ。
画像:JAXAデジタルアーカイブス
しかし、好きなものが比較的自由に食べられるとなれば、健康管理が気になるところ。船内での健康管理は一体、どのようにしているのだろう?
画像:船内で食事中のフランク・ルビオ、ジャスミン・モグベリ、古川聡飛行士(JAXAデジタルアーカイブス)
NASAのウェブサイトによれば、宇宙ステーションには宇宙飛行士が摂取したカロリーや栄養素を追跡するシステムがあるほか、微小重力下でも機能する専用の体重計が備え付けられており、体重変化を専属の医師に報告することになっているそうだ。
さて、現在の宇宙食は進歩しており、味気ない栄養補給でないことは納得いただけたことだろう。とはいえ、お味の方は実際に試食してみないことにはわからない。JAXA有人宇宙技術部門のウェブサイトによれば、宇宙食を模した製品が筑波宇宙センターの売店や各地の科学館などで販売されているほか、宇宙日本食を扱うオンラインショップも存在するとのこと。気になる方は試してみてはいかがだろう?
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