土星には145もの衛星があることが判明:太陽系内で最多数
これまで未発見だった衛星が数多く発見されたことにより、土星が「太陽系で最多の衛星を抱える惑星」の座をふたたび手にした。
国際的な天文学研究チームが2023年5月に行った発表によると、同チームは土星の周りに新たに62の衛星を発見したという。ブリティッシュコロンビア大学がプレスリリースを通じて発表した。
これにより土星は最多の衛星を抱える惑星となった。さらに、太陽系内の巨大ガス惑星にも100を超える衛星を持つものがあったことがわかったという点でも興味深い発見だ。
今回の発見の結果、土星の衛星の数は145となった。『ガーディアン』紙によると、これは木星の95を抜いて太陽系内でトップだという。
じつは、木星が最多衛星を持っているとされていたのも最近の発見によるものだ。2023年2月、同じく巨大ガス惑星である木星の周囲に新たに12の衛星が発見され、土星の衛星の数を抜いていた。
今回の発見について、ブレット・グラッドマン教授はこう語っている:「土星の衛星の数は倍近い数になりました。それだけでなく、全太陽系に存在する衛星の数の合計すら上回っています」
グラッドマン教授はブリティッシュコロンビア大学の天文学者であり、2019年から2021年にかけて土星の衛星を新たに発見した国際研究チームの一員でもある。
今回の発見をもたらしたチームはエドワード・アシュトン博士が率いており、2019年からデータを収集していたという。
アシュトン博士らは研究開始当初はまだ学生だったが、カナダやフランス、ハワイの天文台から得た画像データの分析を通じて土星上空に存在する新たな物体を特定していった。
だが、土星の周囲に新たな物体があるというだけでは衛星と認定することはできない。大学のリリースによると、研究チームはその個々の物体を数年間に渡り追跡し、軌道を明らかにしていったのだという。
アシュトン博士はこう語っている:「衛星候補をひたすら追跡していくと、なんだか点をつないでお絵かきをしているような気分になりました。各データの衛星候補をつなげて、理論的に可能な軌道を描いていったのです」
「しかも、ひとつの画像に100個ほどの別の物体があり、どの点がどの点とつながるのかわからないのです」と、現在は台湾の中央研究院天文及天文物理研究所で博士研究員を務めているアシュトン博士が語っている。
研究チームにはハーヴァード大学のマイク・アレクサンダーセン博士とブザンソン天文台のジャン・マルク=プティ博士も参加していた。
新衛星の発見に際してはシフト・アンド・スタックという手法が用いられている。この手法それ自体も、発見と同様興味深いものだ。
大学の発表によると、その手法では一連の画像データを衛星候補が動くと想定されるレートで移動(シフト)させるのだという。そのデータがたまったところでそれらをまとめて(スタック)、そのままでは見えづらかったオブジェクトの動きを明らかにするのだ。
同じく大学の発表で指摘されているが、この手法は海王星や天王星の衛星を観測するために用いられたことはあったものの、土星に適用したのはアシュトン博士のチームが2019年に始めた研究が最初だったという。
また、今回新たに発見された衛星はその多くが不規則衛星と呼ばれるものだという。発表では不規則衛星とは「一般の衛星に比べると軌道が大きく、形も楕円形だったり大きく傾いたりしているもの」だと説明されている。