熊による被害がエスカレート:熊の駆除に一頭5,000円の報奨金も
昨年は日本各地で熊による被害が相次いだ。こういった事態を受けて様々な対策が取られており、その一環として熊の駆除に奨励金を出すという制度も作られている。
環境省の報告によれば、2023年の熊による人身被害は219人で、うち6人が死亡している。
NHKによると、この被害件数は記録開始以来最多だという。
熊による被害では直接的な負傷も当然問題だが、傷からの感染症が深刻化することも多く、死亡につながる場合もある。
冬眠直前の秋シーズンがもっとも被害が多くなると予想され、政府や自治体も警戒感を高めている。熊の駆除に報奨金を出すという制度もそういった流れでの新たな試みのひとつだ。
まず、政府が熊による被害の多い自治体(北海道、青森、岩手、秋田)に補助金を出し、熊の追跡や駆除を支援する。伊藤信太郎環境相が発表した。
同時に、環境相は市民に熊を目撃しても近づかないよう求め、万一襲われた時のために熊撃退スプレーなどを携行するよう呼びかけている。
だが、秋田県の佐竹敬久知事はさらに積極的な駆除策を実施、熊一頭あたり5,000円の報奨金を出して地元猟師による駆除を推奨している。
さらに、秋田県では駆除にかかった諸経費も負担すると発表、かつてない支援策となっている。
熊による被害は前例を見ないレベルに達しつつあり、政府は更なる対策を検討し自治体を支援すると表明している。
伊藤環境相は「地域のニーズに応じた緊急的な支援、必要に応じて新たな制度創設も含めて検討する」と発言、補正予算による自治体の支援・補助の方針を示した。富山新聞が報じている。
熊による被害は急増しており、秋田県だけでも昨年の3倍にもなっている。いったいどうしてこれほど増えてしまったのだろうか。
専門家の間では、山間部で熊が主食とする木の実などが不足したせいで、冬眠に備えるための食べ物を求めて熊が人里まで降りてきているため被害が増加していると考えられている。
長岡技術科学大学で熊の研究をしている山本麻希准教授によると、熊は通常11月下旬には冬眠に入るが、十分な餌を確保できなければずっと寝ずに探し続けるのだという。さらに、今年は暖冬で雪も少ないため出没の長期化が懸念されている。新潟ニュースNSTが伝えている。
また、こういった変化には気候変動の影響も当然無視できない。北海道立総合研究機構で熊の研究をしている間野勉研究主幹によると、気候変動は「植物の開花時期や、花粉を伝播する昆虫の活動など、実がなるのに必要な現象に影響している可能性が高い」とされている。CNNが報じた。
寒さが厳しい時期は熊も冬眠に入ることになる。だが、春には冬眠明けの熊による被害が再び増える恐れがあり総合的な対策が課題だ。
今年に入ってからは秋田県内ですでに198件の目撃情報が寄せられているほか、警察官2人が熊に襲われるという大事故が起きた。山に入らないなどの自主的な対策のほか公的な対策も進められている。