大統領選挙までは動員なし?:ウクライナ軍事侵攻をめぐるプーチン大統領の賭け

大統領選を控えて
立候補はまだ
ロシア大統領選は2024年3月に実施
チェチェン首長の発言
「非友好国によってつけこまれる」
候補者はプーチン大統領ひとり?
立候補は確実
ロシア・ウクライナ戦争との関連
「動員はきわめて考えにくい」
大統領選の重要性
予想される選挙スローガン
「正鵠を得ている」
攻撃ではなく防衛を重視?
動員の必要性
「動員は避けられないでしょう」
ウクライナの動きは?
2022年の動員
大統領選を控えて

プーチン大統領は2024年に控えている次の大統領選挙まで、再度の動員をかけたくないと考えているようだ。この政治的な賭けはうまくいくだろうか? ウクライナ戦線は手薄にならないのだろうか?

立候補はまだ

プーチン大統領は今のところ立候補を正式に発表してはいない。しかし米『ニューズウィーク』誌によると、ロシア連邦の現職大統領は「特別軍事作戦」に対する国民の抗議にもかかわらず、次の選挙でも再選を果たすと予想されている。

ロシア大統領選は2024年3月に実施

10月9日、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、来年3月に予定されている選挙を予定どおり実施するという政府の意向を述べ、ロシア政府は民主主義と憲法の求めるところに従うだろうと記者会見で説明した。

チェチェン首長の発言

ペスコフ報道官のこの発言は、チェチェン共和国の首長ラムザン・カディロフのコメントを受けてのものとロイター通信は解説している。ウクライナで現在進行中の軍事作戦を考慮すると、ロシア政府は次の選挙を延期するか、候補者をプーチン大統領のみにすべきとカディロフ氏はソーシャルメディアで発信したのである。

「非友好国によってつけこまれる」

ニュースメディア「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」によると、カディロフ氏はテレグラムに次のように投稿した:「ほぼ確実に、選挙のようなロシア国内の大規模な動きは、西側諸国をはじめ多くの非友好国によってつけこまれ、挑発の機会として利用される。我々の敵たちはロシアの内部情勢をひっかき回そうとするだろう」

候補者はプーチン大統領ひとり?

もし選挙の延期をしないならば、候補者をプーチン氏ひとりに絞るべきだとカディロフ氏は提言している。

立候補は確実

プーチン大統領はまだ公式発表をしていないが、英国国防省の情報機関によると、立候補することはほぼ確実で、早ければ11月中に非公式の選挙キャンペーンを開始するものと見られている。

 

ロシア・ウクライナ戦争との関連

この選挙キャンペーンは、ウクライナで戦うロシア兵にとっても重大な影響を間接的にもたらしうる。英国国防省の指摘によると、ロシア政府は来年3月の選挙を終えるまで、新たな動員をかけない構えでいるらしいのだ。

「動員はきわめて考えにくい」

英国国防省は10月、次のように報告した:「選挙の予備工作として、国民の不平が集まる施策をロシア政府ができるだけ少なくしようとすることはほぼ間違いない。したがって、2024年3月の大統領選挙が終わるまでは、大規模な動員が実施される可能性はきわめて低い」

大統領選の重要性

さらに英国国防省によると、ロシアにおける選挙は政府の干渉とコントロールの下にあるものの、政府に正当性を付与するための重要な道具であり続けているという。つまり、来年3月17日の大統領選挙によって、ウクライナにおける戦争もまた、民主的な意思決定プロセスに則った行為として再度正当化されるというわけだ。

 

予想される選挙スローガン

ウクライナにおける戦闘とプーチン大統領への権力集中を正当化するためにしばしば用いられる、「われわれは国外の敵から独立国ロシアを防衛しなければならない」というナラティヴ(ストーリー)があるが、プーチン大統領の次の選挙キャンペーンも、このテーマをめぐって展開されることはほぼ間違いないと英国防省は分析している。

「正鵠を得ている」

ジョージ・メイソン大学の政治学者マーク・N・カッツ教授は、ロシアの動員をめぐる英国情報機関の見立てが「正鵠を得ているかもしれない」と『ニューズウィーク』誌に語っている。また、動員が無いとしたら、ロシア軍がウクライナに対して新たに大掛かりな攻勢をかける可能性は弱まるだろうとカッツ教授はコメントし、次のように言い添えた。

攻撃ではなく防衛を重視?

「あるいは、プーチン大統領はそのような攻撃計画をまったく考慮しておらず、もっぱら防衛に専心しており、現在ロシアが占領しているウクライナの領土保持を目標としているのかもしれません」

 

動員の必要性

仮にウクライナへの大規模攻勢を計画していないとしても、それでもプーチン大統領は動員をかける必要があるだろうとロシアの軍事アナリストであるイアン・マフティーフ(Ian Mavteev)は見ている。

「動員は避けられないでしょう」

「戦争を続けるには動員が必要だからです。ロシア政府と軍幹部は、志願兵で新しい部隊を作ろうとしていますが、今のところうまくいっていません。前線でも苦戦しています。動員は避けられないでしょう」と、軍事アナリストは「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」に語っている。

ウクライナの動きは?

ところで、ロシアが次の大統領選挙を終えて新しく動員をかけるまでの間、ウクライナはどう動くだろうか? ウクライナ軍の反転攻勢はいまのところ成功しており、しばらく動員をかけないというプーチン大統領の選択は裏目に出る可能性がある。

 

 

2022年の動員

ウクライナ侵攻が2022年2月に始まって以来、プーチン大統領が動員を発表したのは同年9月の一回のみである。そのときは30万人のロシア国民が動員された。戦争開始から8ヶ月経ち、兵力の損失を埋め合わせるためだった。

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