太陽から噴き出した巨大なフィラメント:太陽嵐で表面が乖離
太陽表面から噴き出した巨大なフィラメントが太陽の北極を取り囲み、強力な嵐の渦のような様相を呈しているが、研究者たちはその原因をいまだ特定できていないようだ。
NASAは太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SOD)」から、太陽の北極付近で発生した極渦を観測。
回転する渦として映像にとらえられた太陽嵐は非常に強力で、表面の一部が分離してしまうほどだったという。
この画像はNASAが公開した2月2日の太陽嵐の様子だ。左上部分には表面から飛び出すガスがはっきりと写っている。
宇宙天気の専門家タミサ・スコフ博士は、「太陽北極のプロミネンスから飛び出した物質は、主要フィラメントからも分離し、太陽の北極をとりまく巨大な渦となって回転しています」とツイート。
写真:spaceweatherwoman.com, Tamitha Skov
かつてない規模の現象を前にして、研究者たちも困惑を隠せないようだ。
天文専門ウェブサイト「Space.com」 によれば、このような現象は前代未聞だという。
米空軍で宇宙天気に関する作戦を担当するサラ・ハウシール将校はCBS放送に対し、太陽の極渦は地球で発生するものに比べ十分な説明がなされていないとコメント。
前出のスコフ博士もまた、「太陽から離脱した部分が太陽の大気にどのような影響を及ぼすのかは、いまのところ不明です」とツイート。そして、この現象を軽視するべきではないと付け加えた。
写真:spaceweatherwoman.com, Tamitha Skov
太陽の磁場はおよそ11年ごとに入れ替わる。つまり、北極・南極における磁極が反転するということだ。
写真:spaceweatherwoman.com, Tamitha Skov
太陽の活動は周期的に変化しており、活発な時期と不活発な時期が交互に訪れる。NASAによれば、2019年12月に極小期に達した後、再び活発化し黒点や太陽嵐が頻発しているとのこと。
太陽物理学者のスコット・マッキントッシュ氏はSpace.comに対し、過去の太陽活動周期でも常に緯度55度の地点で太陽嵐や爆発が観測されていると述べた。しかし、今回ほどの規模は例がないという。
写真:Twitter, Scott McIntosh
NASAは今回の極大期についてもっと穏やかなものになると予測していた。すなわち、宇宙飛行や衛星の運用、送電網や通信に対する太陽嵐の影響は小さいはずだったのだ。いずれにせよ、ピークは2024年から2026年にかけて訪れると見られている。
穏やかだと予想されていた活動周期に突如、発生した今回の太陽嵐。これほど大規模な爆発に至った原因はいまだ明らかになっていない。
前出のマッキントッシュ氏は太陽嵐について次のように述べている:「(太陽嵐には)大きな謎が残されています。なぜ、極に向かって移動し、消滅するのでしょう? 一体なぜ、3~4年後にまったく同じ地点に戻って来るのでしょうか?」
写真:Pixabay / Alexas_Photos
一方、CBS放送によれば、前出のスコフ博士は太陽嵐の速度について、時速34万5,000キロメートルという「信じがたいスピード」だとしている。
スコフ博士はまた、太陽は土星や木星をはじめとするガス惑星と見た目以上によく似ていると指摘。実際、こういった惑星では強力な極渦が観測されている。
写真:spaceweatherwoman.com, Tamitha Skov
いずれにせよ、このような大規模な現象は研究者たちにとって大きなチャンスでもある。スコフ博士いわく:「私たちはこの巨大な磁気活動マシンについて、もっと詳しく研究しなくてなりません。宇宙天気を作り出す原因に他ならないのですから」