宇宙人彗星「オウムアムア」:理解を超えた動きを示す天体の謎

恒星間天体の謎
発見は2017年
彼方からの来訪者
観測史上かつてない恒星間天体
歴史的発見
謎の加速
エイリアンの宇宙船?
「オウムアムア」と命名
科学者の試行錯誤
「トラップされた分子状水素の放出」
「太陽系で温められる」
「科学者たちを戸惑わせるほど加速」
『ネイチャー』に掲載
「この論はとても興味深い」
「解決とは言えない」
オウムアムアは未解決のまま去っていった
論争は続く
ゾウは縞模様のないシマウマ?
恒星間天体の謎

科学者たちはついに、解答にたどりついた。地球外生命体の宇宙船ともうわさされる、理解しがたい動きをする恒星間天体について、その謎が解明されたというのだ。

発見は2017年

話は2017年にさかのぼる。ハワイ、マウイ島に建設された望遠鏡によって、天文学者たちはある彗星を観測したのだった。その彗星は、当時の天文学によっては説明のつかないスピードと軌道とでわれわれの太陽系に突入しつつあった。

写真:NASA/ESA/STScI

彼方からの来訪者

『タイム』誌のジェフリー・クルーガーの記事によると、彗星のスピードは秒速およそ54マイル(秒速およそ87キロメートル)、極度に引き伸ばされた楕円軌道に乗っていたという。これらのことは、科学者たちによれば、彗星が太陽系に由来するものではなく、宇宙の彼方からはるばるやってきたものであることを意味するという。

観測史上かつてない恒星間天体

「何十年ものあいだ私たちは、そのような恒星間天体がきっとあるはずだという仮説のもと理論を組み上げてきました。その存在の直接的な証拠を、いま初めて手にしているのです」:NASAの科学局長トーマス・ザブーケンは彗星の発見時そのように語った。

歴史的発見

「この歴史的発見は、私たちの太陽系の外にある惑星系の組成についての研究を進めるための、新たな手がかりになりつつあります」とトーマス・ザブーケン博士は言い足したが、この発言は発言者が意図した以上に真実を言い当てていたのだった。

謎の加速

科学者たちがすぐさま気づいたように、その移動速度からいって、彗星はその旅程の中ほどから終わりにかけて速度を増してきたに違いないのだった。ジェフリー・クルーガーによると、科学界はこの事実にショックを受けた。そのような加速は、太陽の重力作用による引きによっても、その他いかなる理論によっても説明がつかなかったからである。

写真:NASA

エイリアンの宇宙船?

「これには保守的な科学者たちも、ひょっとするとこの天体はまさしく宇宙人の船で、自前の動力によって加速し、われわれの太陽系で曲芸飛行を披露していったのではあるまいか、といぶかしむことになった」とクルーガーは書いている。

「オウムアムア」と命名

彗星はのちに「オウムアムア」と名付けられた。ハワイ語で「遠方からの使者」という意味だという。メディアは地球外生命体にまつわる憶測を繰り広げ、いっぽう科学者たちは、オウムアムアについて、より現実的な説明を見出そうと研究に取り組んだ。

科学者の試行錯誤

私たちの太陽系に初めてやってきた恒星間天体の出自をめぐる労多き研究がようやく実を結び、二人の科学者がついに、オウムアムアの旅程後半部における説明のつかない加速について、納得のいく説明を見つけ出したと確信するにいたった。

「トラップされた分子状水素の放出」

ジェニファー・バーグナー教授とダリル・セリグマン教授の説明によると、「トラップされた分子状水素」の放出が、オウムアムアの加速の原因だという。太陽のエネルギーを受けて氷の状態が変化し、トラップされた分子状水素が氷から放出され、それが彗星から噴き出したことが加速の仕組みだというのだ。

「太陽系で温められる」

「このモデルでは、オウムアムアはまず微惑星体として出発します。星間空間を旅するときは低温状態で宇宙線の照射を受け、太陽系を通過するときに温められます」と、二人の教授は説明する。

「科学者たちを戸惑わせるほど加速」

オウムアムアが温められると、内部に閉じ込められた分子状水素が逃げることができるようになり、それによって彗星のスピードは科学者たちを戸惑わせるほど上がったのだという。

『ネイチャー』に掲載

バーグナーとセリグマンの両教授の論文は『ネイチャー』誌に掲載された。2人の論が正しければ、オウムアムアが旅の後半で太陽系にさしかかったときの突然の加速に説明がついたことになる。

写真:NASA

「この論はとても興味深い」

カレン・ミーチは彗星にかけて世界トップレベルの研究者であり、ハワイ大学の天文学研究所に所属している。彼女は『ニューヨーク・タイムズ』紙にメールを送り、オウムアムアの速度について、バーガーとセリグマンがおこなう説明は「とても興味深い」ものだと評した。

「解決とは言えない」

「私としては、それで『解決』と言うには憚られます。もし分光法によって水素が検出されれば、決定的な証拠があるといえるかもしれませんが」とカレン・ミーチは続けた。

オウムアムアは未解決のまま去っていった

「とはいえ、彼らの説明はとても妥当性が高い。もし今後オウムアムアに似た天体が発見されたときには、彼らが構築したモデルや理論が観測のための指針として大いに役に立つでしょう」とミーチ教授は付け加えた。

論争は続く

しかしながら、オウムアムアをめぐる論争はまだまだ盛んなようである。多くの天文学者たちが、バーガーとセリグマンの、オウムアムアの氷が燃料となり、彗星の加速を助けたとする鑑定について、反対の立場をとっているのだ。

ゾウは縞模様のないシマウマ?

ハーバード大学の天文学者アヴィ・ローブ博士は『ニューヨーク・タイムズ』で次のように語っている:「この論文の著者たちは、それが氷の彗星だと主張しています。ですが、彗星の尻尾はありませんでした。これは、『ゾウは縞模様のないシマウマである』と言っているようなものなのです」

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