中国人大富豪の容疑は10億ドルの投資詐欺:米国で逮捕された郭文貴(かく・ぶんき)
投資家やSNSのフォロワーをターゲットに10億ドル規模の詐欺を働いたとして、米国当局は中国出身の不動産王、郭文貴(かく・ぶんき)を逮捕。ビジネスのためと称して投資家たちから調達した資金を不正に利用したと見られている。
しかし、郭文貴はマンハッタン連邦裁判所で無罪を主張。郭は中国共産党に反旗を翻し米国に亡命して以来、ニューヨークに拠点を置いていた。
中国共産党に対する批判的な姿勢と米国における右派著名人との人脈によって、郭は欧米で暮らす中国人たちからとりわけ支持を集めていたという。
米国司法省によると、郭はメディアビジネスや会員専用ソーシャルクラブへの投資と称して、SNSフォロワーや投資家たちから数百万ドルを詐取した疑いがもたれている。
米国司法省によれば、この資金はニュージャージー州にある4,600平方メートルあまりの邸宅のほか、ペルシャ絨毯や中国絨毯をはじめ、およそ97万ドルに上る贅沢品の購入に充てられたとされている。
郭はさらに、ブガッティの特注スポーツカーなど高級車数台をおよそ44o万ドルで購入。また、ランボルギーニ・アヴェンタドールSVJロードスター も購入しているが、こちらは当局によってすでに押収されている。
画像:米国司法省
米国司法省はまた、郭の親戚名義だが実際には郭本人が利用している約3,700万ドル相当の豪華クルーザー(全長44メートル)の維持費230万ドルも、詐取された資金から流用されたものだったと指摘。
画像:米国司法省
米国当局によれば、郭文貴とパートナーは「ヒマラヤ」と呼ばれる暗号通貨を用いて投資家たちから資金を詐取したとされる。オンライン上で展開される暗号資産取引所「ヒマラヤ・エクスチェンジ」を通して、被害者から2億6,200万ドルの資金をだまし取ったというのだ。
郭の逮捕から数時間後、マンハッタンにある郭の高級マンションで火災が発生。BBC放送がニューヨーク市消防局の発表として伝えたところでは、負傷者の報告はなく、出火の原因はいまだ調査中だという。
マイルス・クォク、「ブラザー・セブン」をはじめ様々な異名を持つ郭文貴。しかし、米国当局が発表した起訴状における名前は「ホ・ワン・クォク(Ho Wan Kwok)」となっている。不動産開発業者として、中国有数の富豪だったらしい。
2017年、郭は中国を離れ米国に政治亡命。トランプ政権のチーフストラテジストだったスティーブン・バノンと親しく、反中国共産党を主張するイベントで何度もバノンと意見を交わしている。
バノンも今回の件とは別に、米国・メキシコ国境の壁に関する投資詐欺の疑いで昨年逮捕。逮捕当時、バノンはコネチカット州に停泊する郭のクルーザーに滞在していたという。
郭はSNSにおける影響力を政治活動に利用しており、中国政府によるネガティブキャンペーンをはじめ妨害工作のターゲットにもなっていた。一方で、新型コロナウイルスに関する誤った情報をSNSで拡散したこともある。
米国当局は郭が投資詐欺に利用した企業として、GTVメディアグループ、ヒマラヤ・エクスチェンジ、さらにヒマラヤ・ファーム・アライアンスという架空の融資事業を挙げている。
郭のメディア会社は昨年、暗号通貨に関する投資事業で意図的に投資家の判断を誤らせたという訴訟を受けており、米国の金融規制当局に5億 3,900万ドルを支払うこととなった。ただし、同社は不正行為を行ったこと自体は否認している。
BBC放送の取材によれば、郭が運営する財団の1つは今回の訴追について「でっち上げられたものであり、不当だ」と主張しているという。同財団はまた、米国の司法制度は中国共産党の影響下にあると非難している。