寿司がアメリカで広まったきっかけはある宗教団体?
寿司はいまや日本だけの料理ではなく、世界中で愛される「SUSHI」となっている。
とくにアメリカではピザやタコスと並んでごく一般的な食べ物として定着しているが、実はその背景にはなんとあの新興宗教団体、旧統一教会こと世界平和統一家庭連合の暗躍があったのだ。
BBCによると、長年日本で愛されてきた寿司がアメリカで人気を博するようになったのは1970年代、カリフォルニアでのことだったという。
そして、統一教会の創立者である文鮮明が韓国を離れてアメリカへと移住したのも、奇しくもまさにこの頃だった。
統一教会こと世界平和統一家庭連合は開祖である文鮮明を頂点とした強固なヒエラルキーが定められており、そのカルト的側面が問題視されている。
その統一教会がアメリカで存在感を発揮し始めたのは1970年代から80年代にかけて。この写真は、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた合同結婚式の様子を収めている。
統一教会が日本でも大きな影響力を持っていたことは広く報道されている通りだが、実はそこで培った人脈などを利用してアメリカでのビジネスに乗り出したのだ。
BBCいわく文鮮明は釣りや魚に目がなかったらしく、アメリカ、そしてやがては世界へと生魚を食べる習慣を輸出することが世界統一につながると信じていたのだとか。
『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、文鮮明は1980年にニューヨークにある教団本部で「マグロの道」という演説を行い、全米に寿司を広めるよう指示したという。
『シカゴ・トリビューン』紙によると、文鮮明はこう言ったという:「私は全システムを構築した。船を造るところからだ。そして魚を穫り、市場用に加工し、物流ネットワークへと送り込むのだ」
この言葉を聞いていた日系移民のタケシ・ヤシロが、ほかの信者らと起業したのが「True World Foods」だ。
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これはまさに最高のタイミングだった。1980年代のアメリカは先進性とエキゾチックさを兼ね備えた日本に魅せられており、電子技術とサムライの歴史が共存する国に心酔していた。
日本の寿司はまず、レーガン政権時代の都市エリートサラリーマン「ヤッピー」文化の間で人気となった。そしてその人気が中流・下流階層へとトリクルダウンしていくのにそう時間はかからなかった。
アメリカの従来の水産業は寿司にすぐには適応することができなかった。だが、統一教会の信者らが構築したネットワークや労働者たちは、こうして新たに高まった寿司需要に的確に応えたのだ。
以来、統一教会系企業であるTrue World Foodsはアメリカや世界の寿司市場において非常に大きなシェアを占めることになった。ちなみに、教団側は過去にこの会社との関係を否定していたこともある。
そして、『シカゴ・トリビューン』紙が伝えるように、True World Foodsはアラスカからマサチューセッツまで、全米で数多くの労働者を雇用していた。
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『ニュヨーク・タイムズ』紙によるとTrue World Foodsはアメリカ唯一の全土に渡る鮮魚コングロマリットで、全米17州以外にもカナダやイギリス、日本、韓国、スペインに支社を持っている。
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アメリカのある都市では、True World Foodsが全寿司レストランの7~8割ほどに魚を卸しているという報告もあるほど。
だが、文鮮明は1982年に脱税などの罪で実刑判決を受ける。以降、80年代後半から90年代にかけて文鮮明の影響力は低下していき、2012年に死亡した。
『ニュヨーク・タイムズ』紙によると、文鮮明の娘の文仁進はある演説で、父親は世界を変えたと述べたという。
曰く、父である文鮮明がTrue World Foods設立のきっかけを作った頃、「スシ」がなんなのかすら誰も知らなかったという:「父の偉業は糧となり、身体となっているのです」とのことだ。