強硬派「アルマゲドン」将軍がロシア軍の総司令官に:ターニングポイントを迎えるウクライナ侵攻

「アルマゲドン将軍」
残虐性と汚職
傭兵組織「ワグネル」のお墨付
現代ロシア軍の模範
実質的に司令官だった?
クリミア大橋の爆破
アフガニスタン侵攻
著しい暴力
ソ連8月クーデター
「命令に従っただけ」
学生時代のスロヴィキン
軍歴にはなし
タジキスタンとチェチェン共和国
「アルマゲドン将軍」の台頭
アサド政権に加勢
アレッポの戦い
「片時もロシア防衛を忘れない」
「指令責任者」
シリアでの戦略
制裁リスト入り
勝つためなら何でもする
「問題が一気に解決されるわけではない」
「アルマゲドン将軍」

プーチン大統領からウクライナ侵攻の新司令官に任命されたセルゲイ・ウラジミローヴィチ・スロヴィキン将軍。シリア内戦で強硬手段に出たことから「アルマゲドン将軍」とあだ名されており、クレムリンは劣勢に立たされるロシア軍の立て直しを彼の辣腕に託した形だ。

残虐性と汚職

『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、スロヴィキン将軍は複合戦争における豊富な経験を持つとされるが、同時に残虐で汚職に手を染めていたことでも悪名高いようだ。

 

傭兵組織「ワグネル」のお墨付

ロシアの傭兵組織「ワグネル・グループ」の設立者、エフゲニー・プリゴジンはスロヴィキン将軍について「伝説的」だと賞賛する公式声明を発表している。彼がこのような声明を発表するのは稀なことだという。

写真:プーチン大統領とプリゴジン(2010年)。

現代ロシア軍の模範

すでに、ウクライナ侵攻に深く関与しているスロヴィキン将軍。10月8日に総司令官に任命されるまで、ウクライナ南部でロシア軍部隊の指揮を執っていたのだ。

 

実質的に司令官だった?

『ニューヨーク・タイムズ』紙などは、スロヴィキン将軍は総司令官に就任する前からウクライナにおけるロシア軍の実質的なトップだったとしている。

クリミア大橋の爆破

スロヴィキン将軍が総司令官に昇進したのは、ロシアとクリミア半島をつなぐクリミア大橋が爆破された直後だ。この事件はロシア軍の兵站と士気に大きな影響を与えることとなった。しかし、スロヴィキン将軍のキャリアも身の毛のよだつようなものである。

アフガニスタン侵攻

1966年にノヴォシビルスクで誕生したセルゲイ・ウラジミローヴィチ・スロヴィキン。BBC放送の報道によれば、彼が軍人としてのキャリアをスタートさせたのは1980年代のアフガニスタン侵攻だったという。

著しい暴力

ロシア史の専門家ピーター・ウォルドロン教授がBBC放送に語ったところによると、スロヴィキン将軍は新米のころから「著しい暴力」に関与していたとされる。

ソ連8月クーデター

1991年8月には、ソ連共産党の強硬派がゴルバチョフ政権の転覆を図って起こした8月クーデターにも参加。

「命令に従っただけ」

その結果、反クーデター派のデモ参加者3人の殺害に関与したとして、数ヶ月を獄中で過ごすこととなった。しかし、エリツィン政権がスロヴィキン将軍は命令に従っただけだと結論付けたため、釈放されたという。

 

学生時代のスロヴィキン

BBC放送によれば、1995年には名門フルンゼ陸軍士官学校に在学中だったスロヴィキンが同級生に対し違法に銃を売りつけ、停学処分を受けたという。

 

軍歴にはなし

しかし、スロヴィキン将軍自身はこの件について陰謀だと主張。実際に、彼の軍歴からこの事件は削除されている。

タジキスタンとチェチェン共和国

1990年代から2000年代初頭にかけて、タジキスタンおよびチェチェン共和国で実施されていた軍事作戦に参加。

「アルマゲドン将軍」の台頭

しかし、スロヴィキン将軍が「アルマゲドン将軍」と称されるようになったのはシリア内戦のときだ。

アサド政権に加勢

ロシアは2015年にシリア内戦に介入、バッシャール・アル=アサド大統領率いる政府軍に加勢した。

 

アレッポの戦い

シリア内戦でスロヴィキン将軍は航空作戦の経験がないにもかかわらず、ロシア航空宇宙軍を率いることとなった。BBC放送によれば、アレッポ全域に及ぶ破壊を主導したのは彼だったという。

「片時もロシア防衛を忘れない」

また、2019年にはシリアにおけるロシア軍の総司令官を数ヶ月間務めており、彼の「シリアで戦闘任務を遂行している間、我々はロシア防衛を行っているのだということを片時も忘れなかった」という言葉は『ガーディアン』紙に取り上げられることとなった。

「指令責任者」

人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、当時のシリアで横行した人権侵害の「指令責任者」として、ロシア軍の中でもスロヴィキン将軍を名指しで批判している。

シリアでの戦略

『ガーディアン』紙の解説によれば、スロヴィキン将軍は「シリアでの強硬な戦略」をウクライナにも持ち込み、幹線道路や公園を含む民間施設を標的としたミサイル攻撃を実行しているとのこと。

 

制裁リスト入り

また、ウクライナ侵攻が始まる前日の2月23日に欧州連合(EU)がロシア政府高官や関係者を対象に科した制裁リストにも名を連ねることとなった。

勝つためなら何でもする

気になるのはスロヴィキン将軍が戦況をクレムリンの望むようなものに変えることはできるのか、その過程で大規模な虐殺や破壊を引き起こすのか、ということだろう。

「問題が一気に解決されるわけではない」

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、アメリカ欧州軍の元司令官フレデリック・B・ホッジス氏の「(スロヴィキン将軍の就任で)ロシア軍の抱える問題が一気に解決するわけではない」という言葉を引用している。それによれば「ロシア軍の問題は汚職や準備不足といった、根深く制度的なものである」とされる。

 

 

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