徴兵逃れがウクライナ国民の間に分断を呼ぶ

7万人のウクライナ兵が犠牲となる
防衛のために必要な人員を揃えるのが難しい
新法が成立
厳しい罰則を定める
身を隠す人も
ほとんどの人が身近な人を失う
バスから引きずり下ろして徴兵センター送りに
自宅に閉じこもるしかない
数千人の男性が違法に出国
新法を受けて出国を決意
費用は約130万円
「戦争向きではない」
分断を呼ぶ
社会に緊張を生む
兵士の反感も高まる
「誰がこの国を守ってくれるというのか」
7万人のウクライナ兵が犠牲となる

ウクライナでの戦争は2022年2月以来続いており、いまなおその終わりは見えない。「ユーロニュース」によると、全面侵攻開始以来少なくとも7万人のウクライナ兵が国を守って犠牲となったとされている。

防衛のために必要な人員を揃えるのが難しい

死亡者以外にも負傷して前線を引いた兵も多く、防衛のために必要な人員数を維持するのも難しい状況が続いている。

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新法が成立

そのため、ウクライナは2024年に入ってから、より多くの男性を動員し兵員を増強する方策を採ってきた。たとえば、5月には新法が成立、25歳から60歳の全男性は国の電子データベースに個人情報を登録、すぐに招集に応じられるようにすることが義務づけられた。

厳しい罰則を定める

また、新法では徴兵逃れに対する厳しい罰則も定められ、運転免許証の剥奪や銀行口座の凍結、資産の没収などが行えるようになった。

身を隠す人も

当然ながら個人情報の登録には消極的な男性が多く、徴兵担当者はそういった人々の特定に努めている。そのため、懲役を逃れるために身を隠す人も増えている。

ほとんどの人が身近な人を失う

侵攻開始から2年以上が経過し、戦争で家族や友人など身近な人を失っていないウクライナ人はもはやほとんどいない。それだけに、戦場に行きたくないという人の気持ちも理解はできる。だが、ウクライナに留まりながら徴兵にも応じないというのは決して楽な道ではない。

バスから引きずり下ろして徴兵センター送りに

BBCによると、ウクライナの徴兵部隊は「恐るべき評判」を得ているのだという。徴兵逃れをしていた人物が電車やバスから引きずり下ろされ、そのまま徴兵センターに連行されたという目撃談が寄せられている。

自宅に閉じこもるしかない

このように、徴兵部隊はウクライナの街路をパトロールしており、徴兵を逃れている人は身を隠し、公共交通機関やスーパーマーケットを避けるのみならず、週末に外出することもままならないのだという。

数千人の男性が違法に出国

ウクライナに留まりながら徴兵を逃れることが困難な以上、多くの人は国外脱出を目指すことになる。18歳から60歳の男性は出国が禁じられているのだが、『ガーディアン』紙によると、侵攻開始以来数千人の男性が違法に国外に脱出しているという。

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新法を受けて出国を決意

同紙の取材に答えたディミトロ(仮名)は、秋になれば仲介人の手で密出国できる予定なのだという。ディミトロは新しい徴兵法が制定される前は国外脱出するつもりはなかったそうだが、いまは事情が変わってしまったという:「自分の部屋にずっと閉じこもっているわけにはいきません」とディミトロは語っている。

費用は約130万円

もちろん、違法に出国するのは簡単でもなければ、費用もかかる。ディミトロは仲介人とオンラインで接触、脱出のために8000ユーロ(約130万円)支払ったという。

「戦争向きではない」

ディミトロが国外に逃れる理由はBBCが伝える他の徴兵忌避者らと同様のものだ。彼は『ガーディアン』紙にこう語っている:「私は戦争向きの人間ではありません。たとえロシア人でも、人を殺すことなんてできません。前線に行けば長くはないでしょうし……家族を持って、世界を知りたいんです。まだ死にたくありません」

分断を呼ぶ

BBCによる徴兵逃れ特集記事でも強調されていたように、こういった行動はウクライナ国民の間に分断を呼んでいる。一般的に言って、ウクライナ軍への支持は強く、多くの男性はいまでも動員されて国のために尽くすことを望んでいる。

社会に緊張を生む

徴兵逃れは職場や社会において分断のもととなっている。たとえば、自分の恋人や兄弟が前線で戦っているのに、職場の同僚が恋人を自宅に隠していることが分かれば、穏やかな気持ちではいられないだろう。

兵士の反感も高まる

『ガーディアン』紙によると、いま戦闘に就いている兵士や、負傷して退役した人の間では、徴兵に消極的な人への批判が高まっており、ロシアに抗うためのウクライナの力を削いでいるとされているという。

「誰がこの国を守ってくれるというのか」

キーウでの取材に応えたある傷痍兵は同紙にこう語っている:「怖くなる気持ちは分かります。でも、戦い続けるためには新兵が必要なんです。我々が戦わなければ、いったい誰がこの国を守ってくれるというのですか」

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