戦争の影響をまともに受けるウクライナの子供たち
ロシアによるウクライナ侵攻が勃発してから早2年あまり。ウクライナの子供たちはこの戦争によって大きな影響を受けている。
国際的な人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、ウクライナでは2022年2月の開戦以来、学校や幼稚園およそ4,000ヵ所が損傷したり破壊されたりといった被害に遭っているという。
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教育施設が受けている被害は主に砲撃やロケット弾、ミサイル攻撃によるものだ。
しかし、ときにはロシア兵が占領した地域の学校を略奪するケースも報告されている。無論、このような行為は戦争犯罪だ。
国連児童基金(UNICEF)の推計によれば、2023年1月時点で子供たち530万人の教育に差し響いており、そのうち360万人は学校閉鎖などによって直接的な影響が出てしまっているとのこと。
また、国連が公開した調査データによれば、ウクライナの子供たちの教育レベルは開戦以来、低下し続けているという。
2023年8月時点で、国語や言語能力の低下が見られる子供は57%。算数についても子供たちの45%が問題を抱えているそうだ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのヨーロッパ・中央アジア部門を率いるヒュー・ウィリアムソン氏はウェブサイト上で、「教育に対する攻撃は将来性を損なうものであり、ウクライナの子供たちは高い代償を払うことになっています」と指摘。
同氏はさらに、「国際社会はロシア軍がウクライナで行っている学校の破壊や略奪を非難すべきです」とした。
また、ユーロニュース放送によれば、戦争の影響はすでに学校のカリキュラムにも及んでいるそうだ。たとえば、ウクライナの子供たちは地雷の外見や、発見した場合の対処法などを学ばなくてはならないのだ。
国連が行った報告によれば、ウクライナの子どもたちは2023年8月の時点で、その3分の1が学校に通っているが、3分の1はオンライン授業に頼っており、残りの3分の1は2つの方法を併用しているとのこと。
また、『フィナンシャル・タイムズ』誌が2024年2月に掲載した記事によれば、激しい戦闘が続くロシアとの国境地域では、子供たちの90%以上がリモート学習を利用しているという。
さらに、ハルキウ市など一部地域では、低学年の生徒たちが避難所や地下鉄の駅構内に設置された教室を利用している。しかし、こういった地下の教室だけで、地域の学生全員を受け入れることはできない。
ハルキウ州の学校教師、アナスタシア・プロヴォトロワさんは『フィナンシャル・タイムズ』誌のインタビューに対し、「いま起きている出来事については極力、話題にしないことにしており、子供たちにもその話をしないように努めています。子供たちが戦争について話しはじめたら、私たちがそれとなく話をそらすようにしています」と語っている。
独誌『デア・シュピーゲル』によれば、ウクライナの子供たちは将来「失われた世代」になってしまうおそれがあるという、
同誌はまた、ウクライナでは150万人もの子供たちがうつ病やPTSD、ストレス障害、不安障害といった精神疾患の兆候を見せはじめていると書いている。
プーチン政権が開始した戦争の真っ只中で成長するウクライナの子供たち。その影響はかなり長期間にわたって爪痕を残すことになりそうだ。