損害を度外視してアウディイウカ攻略にこだわるロシア軍:装甲車を200両あまり喪失か
イギリス国防省が最近発表した情報によれば、ロシア軍はウクライナ東部で損害を度外視した攻撃を行い、装甲車数百台を失ったばかりか歩兵部隊でも多数の死傷者を出している模様だ。
イギリス国防省は11月4日に情報を更新。ロシア軍はウクライナ軍が守るドネツク州のアウディイウカ攻略を目指し、無謀とも言える作戦を展開。ロシア軍が失った装甲車はすでに200両あまりにのぼっていると伝えた。
イギリス国防省はロシア軍の大損害について、複数の要因が重なった結果だとしている。具体的には「ウクライナが利用する最新の携行式対戦車兵器や地雷、ドローンによる空爆、さらに精密誘導システムがかなりの効果を挙げている」ようだ。
ワシントンに拠点を構えるシンクタンク「戦争研究所」も、11月1日に公表された戦況評価の中でロシア軍装甲車の損失について情報を提示。10月9日以降、装甲車197両が損傷または喪失したという推定を伝えた。
同研究所によれば、ロシア軍は10月9日から13日にかけて敢行したアヴディイウカへの攻勢で装甲車99両を失い、10月14日から23日にかけて行われた2度目の攻勢でさらに94両を喪失したとのこと。
アウディイウカに対する2度の攻勢が失敗に終わった後も、ロシア軍は車両を損失し続けているようだ。戦争研究所によれば、10月24日から31日にかけて装甲車4両の撃破が確認されたほか、確認できていない損失も含めれば22両にのぼる可能性があるという。
11月4日、ニュースサイト「ビジネスインサイダー」の取材に応じた戦争研究所のアナリスト、ジョージ・バロス氏は「開戦以来、ロシア軍が1つの都市を攻撃する中で3週間のうちに被った被害としては、今回のものが最大だという結論に達した」とコメント。
ロシア軍は10月10日にアウディイウカに対する攻撃をスタート。しかし、あまり占領地を広げることはできていない上、多数の死傷者を出す結果となっている。
ロシア軍の被害状況はウクライナ当局や報道機関によってリアルタイムで世界に伝えられている。
ロシア軍がアウディイウカに対する攻撃を開始してから数日後、ウクライナ軍タヴリア部隊のオレクサンドル・シュトゥプン報道官は「我が軍はロシア軍の装備を多数破壊しており、敵は歩兵のみによる進軍を試みている」とコメント。
『ニューズウィーク』誌によれば、シュトゥプン報道官はロシア軍が「ミンチ機攻撃(自軍の人的被害を度外視した強引な攻撃)」を行っていると主張。ウクライナ軍はロシア軍の装備300点あまりを破壊し、敵兵3000人を排除したと付け加えた。
『ニューズウィーク』誌は同報道官のコメントについて独自に検証することはできなかったとしている。とはいえ、その後に判明したロシア軍の死傷者はかなりの数にのぼっている。また、このような兵士の損失は、車両が多数撃破されたことによるものかもしれないという。
イギリス国防省が11月4日に発表した最新情報によれば、多数の車両を失ったロシア軍はアウディイウカ一帯で「生身の歩兵による攻撃」に戦術を切り替えた可能性が高いと見られている。
イギリス国防省によれば、「ロシア軍はこれまで同様、アウディイウカでも開けた土地で無謀な前進を試みており、甚大な損害を出している」ため、死傷者は数千人にのる可能性もあるという。
同省いわく:「2023年10月初旬以降、ロシア軍はこの一帯で数千人の死傷者を出している可能性が高い」しかし、多大な損害によってロシア軍が攻勢を緩めることはなかった。
イギリス国防省によれば「ロシアの指導部はわずかな領土を獲得するため、多大な人的損害を出すことも厭わない姿勢だ」とのこと。では、ウクライナはアウディイウカを喪ってしまうのだろうか?
『ニューヨーク・タイムズ』紙のカルロッタ・ゴール記者は、アウディイウカについてロシア軍にとって戦略的に重要だと指摘。この街を占領することができれば、「ウクライナ軍はドネツク州の入り口から押し返され、一帯のロシア軍は主要な鉄道路線や幹線道路を利用できるようになる」ためだ。
ゴール記者はまた、プーチン大統領にとってアウディイウカが大きな政治的意義を持ちうると解説。同市は2014年以来、ロシア軍による占領を拒んでおり、ここを攻略できれば冬に向かって士気の下がるロシア軍とって「大戦果」になるかもしれないのだ。とはいえ、アウディイウカの命運はいまだ定かではない。