新型コロナウイルスが最初ではない:過去100年間に大流行したパンデミックとは?

パンデミックの歴史
スペイン風邪(インフルエンザ):1918年~1920年
スペイン風邪:米国の死者数67万5000人
なぜスペイン風邪と呼ばれたのか?
アジア風邪:1956年~1958年
香港風邪:1968年〜1970年
コレラ:1961-1975
HIV:1960年~現在
HIV感染・エイズ発症を公表した有名人
HIVの世界的大流行
クロイツフェルト・ヤコブ病:1999年~2001年
SARS(2003年)・MERS(2012年~2015年)
SARSの流行:2002年~2003年
豚インフルエンザ:2009年
鳥インフルエンザ:2013年
ポリオ:2014年~現在
エボラ出血熱:2013〜 2016年
ジカ熱:2015年~2016年
ジカ熱:2015年~2016年
キヴ・エボラ:2018年~現在
新型コロナウイルス:2019~現在
パンデミックの歴史

この2年余りが示す通り、新種の感染症が広がると私たちの日常生活は一変してしまいます。しかも、新型コロナウイルスはその一例に過ぎません。というのも、この100年間で人類は感染症の世界的大流行を10回以上経験しているからです。

スペイン風邪(インフルエンザ):1918年~1920年

新型コロナウイルスはヒトインフルエンザウイルスの一種ですが、世界的大流行を引き起したウイルスは他にもあります。たとえば、1918年に発生したスペイン風邪は、近現代のパンデミックの中でも最も重大なものの一つです。スペイン風邪は世界人口の3分の1に感染し、推定5,000万から1億人の死者を出したとされています。

スペイン風邪:米国の死者数67万5000人

最初に確認されたのは米国カンザス州のファンストン基地(写真は国立健康医学博物館所蔵のもの)でしたが、わずか18か月で遠く離れた太平洋の島々や南極の基地まで、地球全体に広がったのです。このウイルスは、インドで1700万人、英国で20万人、米国で67万5000人の死者を出しました。

なぜスペイン風邪と呼ばれたのか?

当時は第一次世界大戦中であり、世論誘導の必要からフランス・ドイツ・英国・米国といった参戦国は犠牲者数を公表するのを拒んでいました。しかし、スペインにおける死者数は公表されていたため、スペイン風邪と呼ばれることになったのです。

 

アジア風邪:1956年~1958年

インフルエンザはタイプによって名前がつけられています。たとえば、スペイン風邪のウイルスはH1N1といった具合です。一方、1957年に中国の貴州省で発見され「アジア風邪」と呼ばれることになったウイルスはH2N2です。このウイルスはまずシンガポールと香港に広がり、続いて米国やその他の国に広がりました。世界保健機関(WHO)の報告によれば、死者数は世界で200万人に上るといいます。

香港風邪:1968年〜1970年

アジア風邪流行の10年後、香港でアジア風邪ウイルスの変異株H3N2が確認されます。この新種のウイルスは他の国々にも広がり、世界で約100万人の死者を出しました。

コレラ:1961-1975

コレラは汚染された水を介して広がる細菌性の感染症です。コレラの世界的流行はインドネシアで始まりました。1960年代半ばにはバングラデシュ、インド、ソビエト連邦へと広がり、その後、中南米およびアフリカに広がりました。大流行での死者数は約20万人でしたが、今でも様々な地域で集団感染が発生しています。

HIV:1960年~現在

すでに3000万人以上の犠牲者を出しているHIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、性交や血液接触によって感染する感染症です。 アリゾナ大学の研究によれば、HIVが発生したのはアフリカのコンゴ盆地ですが、 1960年代にハイチを経由して米国に広がったとされています。HIVはエイズ(後天性免疫不全症候群)を引き起すため、最近開発された抗HIV薬で治療しないと致命的になってしまうことがあります。

HIV感染・エイズ発症を公表した有名人

1980年代には英国や米国のゲイコミュニティにおける流行が特に顕著だったため、欧米のメディアはHIVを同性愛者の男性と関連付ける傾向がありました。しかし、この病気は誰にでも感染します。有名なHIV感染者としてはフレディ・マーキュリー(1991年死去)、俳優のチャーリー・シーンやバスケットボール選手のアーヴィン・"マジック"・ジョンソンなどがいます。

HIVの世界的大流行

HIVの世界的流行は今も続いており、成人ばかりか子供(胎児)にまで影響を及ぼしています。世界保健機関( WHO)の報告によれば、アフリカ南部および東部における感染率は25%に上る可能性もあるのです。国連は、アフリカ諸国におけるエイズの死亡者数が2025年までに9000万人に達する可能性があると推定しています。

クロイツフェルト・ヤコブ病:1999年~2001年

非常にまれな病気ではあるものの、世紀の変わり目に西欧および北米でパニックを引き起こしたクロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)。1999年から2001年にかけて家畜の間で感染が拡大した「狂牛病」(BSE)に関連して話題となったこの病気は、脳の損傷や痛み、精神医学的問題を引き起こします。 世界保健機関(WHO)によると、129の感染例が確認されており、とりわけ英国とフランスで多く見られたということです。

SARS(2003年)・MERS(2012年~2015年)

重症急性呼吸器症候群(SARS)はコロナウイルスSARS-CoVによって引き起こされる感染症です。流行は2003年に収束しましたが、再び発生する可能性も残っています。そして、2012年には別のタイプのコロナウイルスがサウジアラビアに現れました。こちらは中東呼吸器症候群(MERS)と呼ばれています。どちらのウイルスも気道に感染し、致命的なダメージを引き起こす恐れがあります。 MERSによる死者数は約500人だとされています。

SARSの流行:2002年~2003年

SARSウイルスが発見されたのは2003年。この強力な感染力を持つウイルスをつきとめたのはイタリア人医師カルロ・ウルバーニですが、彼自身もSARSに感染して命を落としてしまいました。世界保健機関(WHO)や各国の自治体が迅速かつ徹底的に対応したおかげでSARSの流行は世界規模には至りませんでしたが、約350人が犠牲になりました。

豚インフルエンザ:2009年

SARS危機を教訓に、世界保健機関(WHO)は世界的流行を引き起す恐れのある感染症については、国際的な警告プロトコルを発することになりました。それが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と呼ばれるものです。初めての宣言は、2009年に発生した豚インフルエンザの世界的流行のときに行われました。この病気はスペイン風邪同様、H1N1ウイルスによって引き起こされるもので、20万人以上の死者を出しました。

鳥インフルエンザ:2013年

H7N9型インフルエンザウイルスは通常、鳥類にみられるものですが、2013年、ヒトへの感染が初めて確認されました。世界保健機関(WHO)の報告によれば、約1,500人が感染し、600人以上が死亡したとされています。しかし、流行は中国国内に留まり、感染性も低いとみられたため、WHOは緊急事態を宣言しませんでした。

ポリオ:2014年~現在

ポリオは汚染された水によって広がる感染症で、麻痺を引き起こします。20世紀に一度は根絶されたように見えたポリオですが、2014年、アフガニスタンおよびパキスタンで野生株(ワクチン由来でない)ポリオの症例が発生したのです。世界保健機関(WHO)はポリオに関する緊急事態宣言を発令し、これは2020年まで継続しました。

エボラ出血熱:2013〜 2016年

血液およびその他の体液を介して感染するエボラ出血熱。2013年に西アフリカ一帯で流行し、リベリア、ギニア、シエラレオネで犠牲者を出しました。 世界保健機関(WHO)は、米国およびヨーロッパでも感染例が確認された2014年になって緊急事態を宣言。感染が拡大した地域では、ウイルスの拡散を防ぐために家ごと隔離するという措置が行われました(写真はシエラレオネのポルトロコ)。

ジカ熱:2015年~2016年

蚊によって媒介されるジカウイルス。ブラジルで発生したこのウイルスは、南北アメリカ大陸でジカ熱の地域的流行を引き起こし、150万人以上の感染者を出しました。世界保健機関(WHO)は地域的流行が終息しない場合、世界的大流行につながる恐れがあると警告しています。その結果、 2016年にオリンピックを開催したリオデジャネイロをはじめ、多くの都市で蚊を根絶するための消毒が行われたのです。

ジカ熱:2015年~2016年

ジカウイルスは胎児にとりわけ悪影響を及ぼします。妊娠中の母親がウイルスに感染すると胎児は脳の発達を阻害され、小頭症になってしまう恐れがあるのです。

キヴ・エボラ:2018年~現在

2018年、アフリカ大陸に新たなエボラ出血熱が出現しました。発生源となったのはコンゴ民主共和国の北キヴ州です。当初、国連の派遣団は「地域的流行であり、世界的脅威ではない」と主張していました。ところが、 2019年にこの病気が隣国ウガンダに広がり、約1,500人の死者を出すに至って、世界保健機関(WHO)は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

新型コロナウイルス:2019~現在

現在も続いている新型コロナウイルスの世界的大流行は、2019年12月に中国の武漢市で始まりました。死者数は世界で500万人に達しており、都市封鎖や感染対策、渡航制限といった措置が世界中で取られています。

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