動物たちのコロナ禍:アニマルシェルターに溢れる仔犬たち

アニマルシェルターの過密化
1歳でしつけゼロ
ロックダウンの影響
ペットの飼育が流行
バイデン大統領まで……
英国では320万匹
その他の国々でも同じ傾向
ベルギーの「ふわふわ欲」
最大の理由
ロックダウン中も許可されていた犬の散歩
外出するため犬を貸し借り?
ペットが人々にもたらす効果
ストレスを軽減するホルモン
「ポストコロナ」で問題に
家に置いてきぼり
きちんと躾されていない
ドッグスクールに行けなかった犬たち
独りぼっちになると……
シェルターは満員、里親探しにも限界が
飼い主の知識不足
一方、米国では……
シェルターに引き渡された犬は10%、猫は15%
経済的理由で手放すことも
貧しい家庭
里親探しは難航
「ペットのせいではない」
アニマルシェルターに持ち込む前に
アニマルシェルターの過密化

現在ヨーロッパではアニマルシェルターの過密状態が深刻化している。新型コロナウイルスの流行に伴うロックダウンで孤独感や退屈感を紛らわせるためにペットを飼い始めたものの、手放してしまう人が後を絶たないためだ。

1歳でしつけゼロ

ドイツのザールブリュッケンにあるアニマルシェルターの職員、フレデリック・グルドナーは『ベルリナー・ツァイトゥング』紙に対し「過去8ヶ月に持ち込まれた犬の多くは1歳で、まったくしつけされていない」と述べている。

 

ロックダウンの影響

グルドナーいわく:
「彼らは自分以外の動物や子供、自動車、外界の影響といったものにまったく不慣れです。ドアがバタンと閉まるだけでパニックになってしまうほどです」

 

ペットの飼育が流行

米国では2020年に新型コロナウイルスの世界的流行が始まってからわずか12ヶ月で、2,300万世帯の家庭がペットを飼い始めたという。『ワシントン・ポスト』紙はアメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)のデータに基づき、これは5人に1人に相当する数字だと伝えている。

 

バイデン大統領まで……

同紙はまた、この風潮の一例として「バイデン大統領までコマンダーという新たな犬を飼い始めた」と報道した。

写真:@POTUS / Instagram

英国では320万匹

一方、BBC放送によれば、英国ではパンデミックが始まってから12ヶ月で320万匹のペットが販売または譲渡されたという。

その他の国々でも同じ傾向

同じころ、ドイツではペットの数が約100万匹増加(ペットの譲渡を行う団体および獣医学専門家協会のデータ)。それほど厳格なロックダウンを実施しなかった隣国のオランダでも、2020年から2021年にかけて約8万世帯がペットを購入したという。

ベルギーの「ふわふわ欲」

ベルギー・ペットフード協会(BEPEFA)によると「ロックダウン以降、ベルギーでは10世帯に1世帯以上が新たなペットを飼い始めた」という。ベルギーの新聞『デ・シュタンダールト』紙はこの傾向を「ふわふわ欲(fur hunger)」と形容した。

最大の理由

人々がペットを飼い始めた理由として挙げるのは家庭での孤独感だ。ロックダウンをはじめ、社会的な接触を制限する措置がとられたことで、人々はふれあいを欲していたのだ。

 

ロックダウン中も許可されていた犬の散歩

しかも、犬の散歩はロックダウン中に外出する口実ともなった。実際、厳格なロックダウンが実施された国々では、犬の散歩が唯一の外出手段だった。そこで、ペットを外出パスポートの代わりにする人々が続出したのだ。

 

 

外出するため犬を貸し借り?

ミュンヘンのアニマルシェルター職員、クリスティーナ・ベルヒトルトは『デア・シュピーゲル』紙に対し、「ロックダウン中でも犬の散歩は認められていたので、施設の犬を一晩貸し出してくれないか」というような問い合わせがあったことを明かした。

 

ペットが人々にもたらす効果

エアフルト大学の心理学教授、アンドレア・ベーツはターゲスシャウ放送の番組で、「ペットが人々に良い影響を与えることは科学的に証明されています」とコメント。

ストレスを軽減するホルモン

これは動物とふれあうことでオキシトシンというホルモンが分泌され、恐怖やストレス、攻撃性を軽減してくれるためだ。

 

「ポストコロナ」で問題に

しかし、2022年には大半の人々が再び出社するようになった。そして、休日や休暇を利用してコンサートに出かけたり旅行を楽しんだりしている。問題は、犬を連れてゆくことができないことも多いということだ。

 

 

家に置いてきぼり

RTL放送に対し、オランダでペットの里親探しサイトを運営しているフェムケ・パスキーノ=デ・ハーデは「パンデミック中に購入された犬や猫は家に置いてきぼりになってしまっている」と述べた。

 

きちんと躾されていない

さらに、こういった「コロナ犬」たちはきちんと躾されていないことも多く、アニマルシェルターの頭を悩ませているという。

ドッグスクールに行けなかった犬たち

前出のフェムケ・パスキーノ=デ・ハーデいわく:「仔犬は最初の半年間、社会に慣らす訓練をしなくてはいけません。これはドッグスクールで行われるのが一般的ですが、ロックダウン中には閉鎖されていたのです」

 

独りぼっちになると……

これまで家で独りぼっちになったことがなかったペットについて、ドイツ動物愛護協会のアンドレアス・リンディッヒは、「アパートで物を壊してしまったりするほか、リードに繋がれて散歩することにも不慣れです」とコメント。

 

 

 

 

シェルターは満員、里親探しにも限界が

RTL放送によれば、 新型コロナウイルス流行前に里親探しサイト「Verhuisdier」に登録されていたペットの数は平均1,400匹だったという。ところが、現在では2,200匹のペットたちが里親を探しているのだ。サイトの運営者によると「こういったペットたちの半分は2歳未満であり、ロックダウン中に購入されたとわかる」という。

 

飼い主の知識不足

専門家たちは、人々が「ペットを飼うということを甘く見ている」と考えているようだ。オランダのヴァンホールラレンシュタイン応用科学大学で動物福祉学の講師を務めるジョセフィーヌ・ウォルトマン・エルパースは「コロナペット」の飼い主たちについて「動物の世話や行動に関する正しい知識を持っていない」と述べている。

 

一方、米国では……

一方、米国ではこの傾向はそれほど顕著になっていないようだ。2021年5月に複数のメディアが報じたところによれば、米国動物虐待防止協会(ASPCA)のデータから、2,300万匹に上るペットたちのうちシェルターに引き渡されたのはごくわずかであることが示されたという。

シェルターに引き渡された犬は10%、猫は15%

ASPCAは2021年5月に「ほとんどの家庭 ―犬については90%、猫については85%― では今もペットを飼い続けており、近い将来手放すつもりもない」と報告。それ以降もこの数字が低下する兆しはない。

経済的理由で手放すことも

しかし、米国では西欧諸国とは違う理由でペットを手放す人々がいる。ロイター通信によれば、米国では経済的理由で犬や猫を手放さざるを得なくなってしまう飼い主が少なくないというのだ。これについて『ワシントン・ポスト』紙は、ペットの医療費が高額になることも理由の1つだと指摘している。

 

貧しい家庭

ロイター通信は、新型コロナウイルスの大流行から1年で「シェルターに引き渡される犬が急増している」と報じた。しかし、それは主に貧しい家庭で起きていたのだ。「ロサンゼルス・アニマル・ケア・アンド・コントロール」のアリソン・カードナ副所長は、その理由について「貧しいコミュニティの飼い主たちが、パンデミックで収入や家を失ったためだ」としている。

 

 

里親探しは難航

専門家たちは、シェルターで暮らす「コロナペット」が里親に引き取られることは稀だと考えている。というのも、こういったペットたちはきちんと躾られておらず、飼いやすいとは言い難いためだ。しかし、アニマルシェルターはペットの躾をするための施設ではない。

 

「ペットのせいではない」

しかし、ロサンゼルスで活動するペットの里親探し団体「Wags and Walks」のクロエ・エスペリケットは、引き渡された動物たちは「キズモノ」などではないと声を強める。彼女はロイター通信に対し、「シェルターに持ち込まれたペットは飼い主にとって邪魔になってしまっただけであり、それはペット自身のせいではない。不当な話だ」とコメントした。

写真:Cierra Voelkl / Unsplash

アニマルシェルターに持ち込む前に

『Dogs』や『Cat People』で知られるTVプロデューサーのグレン・ジッパーが言うように、万が一ペットを飼いきれなくなってしまった場合は、新たな飼い主を探すことが大切だ。彼はロイター通信に対して「アニマルシェルターに連れて行くのは最後の手段だ」とコメントしているが、それはシェルターに送られたペットは安楽死させられてしまう可能性も高いためだ。

写真: Thomas Park / Unsplash

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