日本各地に存在する、オリジナリティあふれるご当地条例
「フロッグ・ジャンプ・コンテストの最中に死んでしまったカエルは食べてはならない(米カリフォルニア州)」、「甲冑を着込んで国会議事堂に入場してはいけない(英国)」など、世界各地に実在するユニークな法律やルールについて耳にしたことがあるという方は多いのではないでしょうか?
実は日本にも、ちょっと変わった条例を制定している地域が各地にあります。そこで、今回は日本全国のユニークなご当地条例をご紹介しつつ、その背景を見てゆくことにしましょう。
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まずご紹介するのは、リンゴの名産地として知られる青森県板柳町の「りんごまるかじり条例」です。同町のウェブサイトによれば、この条例には「町民は、りんごのまるかじりの普及に努める」責務があると定めた条文が含まれています。
画像は青森県の岩木山
ただし、この条例の狙いはまるかじりできるような安全でおいしいリンゴを生産することであり、切って食べてはダメということではないそうです。
「日光さる軍団」をはじめ、ニホンザルを観光資源として活用しているイメージのある日光市ですが、観光客によるサルの餌付けには手を焼いているようです。餌付けによって人間を恐れなくなったサルたちが、人里で悪さをするようになってしまったためです。
画像は日光山輪王寺にある大猷院
そこで、同市は「日光市サル餌付け禁止条例」を制定し、餌付けによってニホンザルたちが野生を喪失し、人里で問題行動を起こすのを防ごうとしています。日光で野生のサルを見かけても、くれぐれもエサを与えてはいけません。
平均寿命が日本一短いことで知られる青森県。鶴田町の観光情報サイトによれば、同町の平均寿命も男女ともに全国平均を下回っているそうです。その一方で、子供たちの食生活も乱れており、朝食をとらない児童が1割もいることが判明したと言います。
画像は鶴田町のシンボル「鶴の舞橋」
そこで、同町は「鶴田町朝ごはん条例」を制定。朝ごはんを足掛かりとして、町民に早寝早起きを促すなど、生活習慣の改善を目指すと同時に、子供たちに対する食育や地元農業の発展を推し進めている。
画像:写真AC
福島県会津若松市と新潟県魚沼市をつなぐローカル線、只見線。古きよき日本の原風景や紅葉で色づいた渓谷、幻想的な雪景色など、車窓から絶景が眺められることで有名ですが、秘境を走る路線だけに経営には苦戦している模様。
そこで、魚沼市や只見町をはじめとする沿線の市町村では、「只見線にみんなで手をふろう条例」を制定。住民は只見線の列車が見えたら、笑顔で手をふり、乗客をもてなすことになっています。これによって、人々が只見線に抱く愛着を高め、路線を応援するのが狙いです。
「南高梅」発祥の地として、梅干しの生産量日本一を誇る和歌山県みなべ町。しかし、梅干しの消費量は日本全体で年々減少しており、みなべ町でも梅干しを食べない人々が増えていました。
そこで、同町では「梅干しでおにぎり条例」を制定。おにぎりの具として梅干しを奨励するほか、生産者や町民が一丸となって梅干しの普及に努めることになりました。ただし、『産経新聞』によれば、この条例には強制力がないため、その効果について疑問の声もあがっているそうです。
画像:写真AC
社会の変化とともに「おひとりさま」が珍しくなくなった昨今。その一方で、ひとり暮らしの高齢者が地域社会の中で孤立してしまうケースも増えてきました。
画像は大和市の航空写真
そんな中、「おひとりさま支援条例」を制定したのが神奈川県大和市です。この条例はひとり暮らしの高齢者が孤立してしまわないよう、市が積極的に手を差し伸べることを定めています。
画像は「神奈川大和阿波おどり」の様子
都心へのアクセスがよいためベッドタウンとしての開発が進む埼玉県川口市。住環境や子育て施設なども充実しており、住宅ローン大手が選ぶ「本当に住みやすい街大賞」では、2度にわたってトップに選ばれています。しかし、ブランド的な知名度という点では、あまりパッとしないという印象が否めません。
画像は川口市の鋳物工場
そこで、川口市がとったのは「大きな声で川口が大好きだと叫んでみませんか川口プライド条例」を制定し、住民に川口市民としての誇りをもってもらおうという取り組みでした。果たして、効果のほどは?
画像は川口市にある古刹、長徳寺
酪農が盛んな北海道中標津町。人口は2万人あまりですが、乳牛はおよそ4万頭も飼育されており、人間よりもウシの方が多い町となっています。それだけに、牛乳の生産量も日本ではトップクラスです。
地域経済を支える酪農を広くアピールし、牛乳の飲用を普及させるため、同町は「牛乳で乾杯条例」を制定。会食などの場では、できるかぎり地元産の牛乳で乾杯することを町民に推奨しています。
最近では、IT技術の進歩によって、世界中の人々と容易につながることができるようになりました。しかし、ネット上では匿名でお互いに傷つけあう一方で、身近な人々との関わりが希薄になってしまうなど、新たな問題も出てきています。
そこで、兵庫県多可町は「一日ひと褒め条例」を制定。同町のウェブサイトによれば、一日に一度は他人をほめたり、感謝の気持ちを伝えたりすることで人々の交流を盛んにし、「明るく前向な活力ある社会」を目指しているそうです。
画像は同町伝統の和紙作りの様子
日本有数の豪雪地帯として知られる秋田県横手市。日本全体では温暖化の影響などで降雪量が減ってきていますが、横手市では数年前に観測史上最高となる2メートル越えの積雪を記録するなど、大雪の勢いがおさまる気配はありません。
しかし、横手市は大雪をポジティブに捉え、雪国であることを活かしたまちづくりを目指すため、「横手市雪となかよく暮らす条例」を制定。住民に対して、雪にまつわる伝統行事やスポーツに取り組むよう促す一方で、除雪の際のマナー向上などを求めています。
画像は「横手の雪まつり」の様子