ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた最古の宇宙とは
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がもたらしたデータの分析によって、天文学者たちの国際研究チームは私たちが暮らす宇宙や銀河の理解にまた一歩近づいたようです。
欧州宇宙機関のプレス リリースによれば、天文学者チームは既知のものとしては最古の銀河を4つ発見したといいます。
画像:NASA, ESA, CSA, M. Zamani (ESA/Webb)
これらの銀河と地球の間の距離は1,340万光年以上。このことから、これらの銀河はビッグバンからわずか4億年後に誕生したと見られています。
欧州宇宙機関のプレスリリースの解説によれば、これらの銀河は非常に古く、宇宙が現在の年齢のわずか2%だった時期に誕生したことになるといいますが、これは驚くべき発見です。
宇宙最古の銀河の候補については、以前からジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって得られたデータをもとに絞り込まれていたといいます。しかし、欧州宇宙機関によれば、今回の分光観測の結果が明らかになるまで、決定的な証拠はなかったということです。
ハートフォードシャー大学の天文学者、エマ・カーティス博士は「カギとなったのは、これらの銀河が初期宇宙に本当に存在したことを証明することでした。比較的近くの銀河を非常に遠くの銀河と誤認してしまう可能性はとても高いのです」と述べています。
画像:NASA
カーティス博士はさらに「これらの銀河が私たちの視界の限界にあることを示す、期待通りのスペクトルが得られたんです! ハッブル宇宙望遠鏡で見ることができる領域よりさらに向こう側です。これは研究チームにとって、とてもわくわくする成果でした」とコメント。
画像: NASA, ESA, CSA, M. Zamani (ESA/Webb), Leah Hustak (STScI)
『タイム』誌のジェフリー・クルーガー記者によれば、4つの銀河が発見された領域は20年以上前から知られていたといいます。しかし、これまでは古い銀河を突き止めるための観測手段がなかったのです。
クルーガー記者いわく:「ハッブル宇宙望遠鏡は20年以上にわたって深宇宙を調査していましたが、検出力に限界がありました」
クルーガー記者によれば、ハッブル宇宙望遠鏡は主に可視光を通して宇宙を観測していましたが、それは「赤外線に対して盲目」であることを意味していたのです。
同記者によれば、赤方偏移とよばれる現象のため、古い銀河を発見するには赤外線の検出が不可欠だといいます。
同記者は、「遠くにある物体は宇宙の膨張によって、より高速で遠ざかっていることになります。これによってその物体が発する光の波長は引き延ばされ、赤色に近づきます」と解説。
「そして、非常に遠くにある天体からやってくる光の場合、波長が赤外線の領域まで引き延ばされてしまい、ハッブル宇宙望遠鏡や肉眼では捉えることができなくなってしまいます。しかし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡なら観測可能なのです」
NASAによれば、天文学者チームはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載された近赤外線カメラを利用し、10日間かけて赤外線領域の波長9種類をスペクトル分析して今回の発見につなげたということです。
こうして得られた画像からは、250の古い銀河からやってきた光が観測されていたことが判明。しかし、天文学者チームは、既知のものの中では最古であることがはっきり証明された4つの銀河にとりわけ着目しています。
写真:NASA
天文学者チームの一員でカリフォルニア大学サンタクルーズ校のブラント・ロバートソン教授は「ビッグバンからわずか 3億5000万年後の銀河の姿をとらえたのはこれが初めてです。そして、その驚くべき距離についても確証があります」とコメント。
同教授はさらに「息を呑むような美しい画像の中から初期銀河を発見するというのは特別な体験です」と感慨深げに語っています。この新発見によって得られたデータはさらなる銀河の探索に活用されると見られており、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が再び画期的な発見をする日も近いかもしれません。