有名企業の社名、その由来は?:キユーピー、太田胃散……
現代を生きる私たちは、企業のさまざまな製品に囲まれている。そんな企業のいくつかは消費者にとってなじみ深いが、社名の由来となると、あまり知られていないかもしれない。今回はそんな企業名の秘密を探ってみよう。
キユーピー株式会社HPによると、国産初のマヨネーズ「キユーピー」が誕生したのは、今からちょうど100年前の1925年(大正14年)のことである。「キユーピー」というブランド名は、太平洋戦争後の1957年に社名となったが、それまで同社は「食品工業株式会社」と名乗っていた。
画像:キユーピーHP
その「キユーピー」の由来は、アメリカのイラストレーター・漫画家のローズ・オニールがローマ神話のキューピッドをモチーフに1909年に生み出したキャラクターである。キユーピー株式会社の広報担当者によると、「キユーピーちゃんは大正時代すでに人気があり洋風のイメージと合うこと、そしてキユーピーちゃんのように愛される存在に育って欲しいと願って」、マヨネーズにその名をつけたのだという(神戸新聞NEXT、2023年3月24日の記事より)。
画像:『Evening Star』紙(ワシントンD.C.)、1915年3月21日号、アメリカ議会図書館所蔵品
花王の創業者、長瀬富郎は1890年に「花王石鹸」を製造・販売した。花王HPによると、「顔も洗える高品質の国産石けん誕生への想いを込め、当時、化粧石けんが“顔洗い”と呼ばれていたことから“カオ(顔)石鹸”と名付け、“花王”という文字をあてました。これが社名の由来となりました」とのこと。「花王株式会社」という現在の商号は1985年から使われている。
画像:X @KaoCorporate_jp
キヤノン株式会社の前身となっているのは1933年(昭和8年)に開設された精機光学研究所である。この研究所は1934年に国産初の35mmフォーカルプレーンシャッターカメラ「KWANON(観音)」を試作した。「観音様の御慈悲にあやかり世界で最高のカメラを創る夢を実現したい」という願いがそのネーミングに込められていると、同社はHPで明かしている。
画像:X @Canon_mj
この「KWANON」は翌年の1935年、より西洋的なネーミングである「キヤノン(Canon)」として商法登録された。その後、1937年に精機光学工業株式会社が創業、1947年にキヤノンカメラ株式会社に社名変更、1969年からはキヤノン株式会社という商号に落ち着き現在にいたる。
画像:X @Canon_mj
カミソリや爪切り、はさみなどのメーカーとして知られる貝印。同社HPによると、創業の地は刃物の街として名高い岐阜県関市で、遠藤斉治朗(初代)が1908年(明治41年)にポケットナイフの製造を始めたことに端を発する。戦後、事業を二代目が継ぎ、1949年に貝の印の最初のトレードマークが制定された。
画像:貝印株式会社HP
では、なぜ貝なのか? 同社によると、「刃物の原点が貝であること、貝の姿形が美しいこと、扇のように末広がりであることなど」のほかにも、英語の“Shell”の発音が二代目の本名である繁(しげる)の音にも似ていることも理由のひとつだとか。
画像:貝印株式会社HP
太田胃酸HPによると、同社の礎を築いた初代・太田信義は1837年(天保8年)、下野国(現在の栃木県)に生まれたという。彼が胃散、すなわち胃病につかう散薬(こなぐすり)の製造・販売を始めたのは1879年(明治12年)のことだった。これがのちの太田胃酸であり、つまり「太田」は創業者の名前なのだ。
画像:太田胃散HP
この胃薬のもとになっているのは、オランダの名医ボードウェインの処方になる胃薬であったという。太田は元来胃弱だったのだが、その薬を飲み始めたところ、胃の調子がすこぶる快調になったというのだ。「太田胃散」の商標が登録されるのは1898年、社名が「株式会社太田胃散」になるのは1963年のことである。
画像:川崎近雄編『売薬製法全書』艸楽新聞社、大正6年。国立国会図書館デジタルコレクションより。