ケネディ家を分断:ロバート・ケネディ・Jr米大統領候補の独特な主張とは
2024年の米大統領選が近づいてきている。トランプ元大統領とバイデン現大統領の一騎打ちとなりそうな様相だが、ここにきて民主党陣営を脅かすダークホースが登場した。ケネディ元大統領の甥である、ロバート・ケネディ・ジュニア候補(無所属)だ。
BBCも伝えているようにケネディ候補が当選する可能性はかなり低いが、その存在によって大統領選の結果に無視できない影響をあたえるかもしれない。
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『ニューヨーク・タイムズ』紙が11月に実施した調査では、大統領選がトランプ元大統領、バイデン現大統領、そしてケネディ候補の三人で争われると仮定した場合、25%の有権者がケネディ候補に投票するとしたのだ。
また、『ヴァニティ・フェア』誌はクイニピアック大学が行ったある調査を紹介している。それによると、18歳から34歳の有権者の中ではケネディ候補が38%の支持率で一番人気となったとされている。なお、バイデン大統領は32%、トランプ元大統領は27%だった。
そもそもこのケネディ候補はいったいどういう人物なのだろうか。物議を醸しているその政治的主張と合わせてチェックしてみよう。
ケネディ候補はもともと民主党所属だったが、2023年10月に無所属候補として大統領選に立候補を表明、民主党から除名されている。
実はそれに先立つ2023年4月にケネディ候補は民主党からの大統領選候補指名をバイデン大統領と争っていた。だが、民主党内に有力な支持基盤もなかったため敗北している。
ケネディ候補はある演説でこう語っている:「民主党と共和党はもはや二大政党としての体を成しておらず、ふたつの頭が常に言い争っている一体のモンスターにすぎない。われわれはその怪物に崖っぷちまで追い詰められているのだ」BBCが伝えている。
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「ビジネスインサイダー」によると、ケネディ家の人々の中にはケネディ候補やその主張から距離を置く人物も少なくないのだという。
ケネディ家の中にこのような分断が生じてしまったのはなぜなのだろうか。
ケネディ候補(ロバート・F・ケネディ・ジュニア)は1954年1月17日生まれ。ジョン・F・ケネディ元大統領の弟ロバート・F・ケネディの息子であり、ケネディ元大統領の甥ということになる。
父親のロバート・F・ケネディは大統領選に出馬していた際に銃撃を受けて暗殺されている。1968年、ケネディ候補が14歳の時だ。
ケネディ候補は1976年にハーヴァード大学を卒業。その後もロンドン・スクール・オブ・エコノミクスやヴァージニア大学ロースクール、ペース大学などで学業を修めている。
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卒業後は弁護士として環境保護活動に邁進。その道では有名な人物となり、リベラルな立場から社会問題に挑んでいった。
だが、その主張は物議を醸すことも多かった。CNNによると、ケネディ候補はアメリカでももっとも強硬に反ワクチン的主張を行っている人物なのだという。
その活動はコロナ禍以前からのもので、ABCニュースによると2016年には反ワクチン団体を結成しているほか、2007年設立で子どもに対するワクチン接種などに継続して反対している「Children's Health Defense(CHD)」という団体にも資金的に深く関与している。
ケネディ候補の反ワクチン的な主張にはかなり過激なものも含まれており、『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、ワクチンが原因で子供の自閉症が引き起こされるとか、スペイン風邪の流行時には予防接種が原因で数百万人の死者が出たなどと述べたことがあるという。
さらに、『ガーディアン』紙によるとケネディ候補は新型コロナウィルスへのワクチン接種を推進した政府の方針をナチスドイツになぞらえて批判したという。
ただし、その後ケネディ候補は主張を軟化させ、AP通信によると反ワクチン的主張をしたことはないとも述べているという。
興味深いことに、ケネディ候補は一部の共和党支持者からも共感の声を集めている。かつてアレックス・ジョーンズやタッカー・カールソンなどとともに反ワクチンというテーマで語り合ったこともある。
ロス・ペローやジョージ・ウォレスのように、これまでも大統領選で独特の存在感を発揮した無所属候補は存在したが、得票という意味では残念な結果に終わっている。それでも二大政党の候補者の票を奪うことで選挙結果に影響する可能性も否定はできない以上、今後の動向には注意が必要かもしれない。