母国に反旗を翻し、ウクライナと共に戦うロシアの人々

ロシアも一枚岩ではない
ウクライナを支持する戦闘集団
ロシア人とベラルーシ人の志願兵
軍団の結成は2022年3月
軍団の規模はどのくらい?
白青白旗(はくせいはくき)
新生ロシアの象徴?
ロシア国旗は独裁主義のしるしと映る
訓練開始は3月
ドンバスの最前線でも
ガスプロムバンク元副社長も加入
占領軍として死ぬか、良心を守って死ぬか
侵攻に抗い、プーチン政権を打破せよ
オレクシイ・アレストビッチが軍団について語る
「志願者数は数えきれない」
「多数の入団希望者がいる」
ベラルーシ人とロシア人の軍団
入団前の厳しい審査
捕虜収容所での新兵募集
プーチン大統領の悩みの種?
ロシア兵を捕虜にする瞬間
ロシアのために、自由のために!
「ロシア政府は軍団を恐れている」
求心力を失うプーチン大統領
“L”と“Z”の対立
ロシアの法改正、反逆罪で最長懲役20年
ロシア政府中枢に高まる懸念
ロシアも一枚岩ではない

「ロシアにおいては政府が人民を完全に掌握している」と、そう考えるのは容易い。だが、すべてのロシア人がプーチン大統領やウクライナ戦争を支持しているわけではない。

ウクライナを支持する戦闘集団

有志らが集い、一般的には考えにくい戦闘集団がウクライナで新たに結成された。ウクライナ軍の対ロシア戦支援を目的とする団体、その名も「自由ロシア軍団」である。

写真: Instagram@freedomlegionrussia

ロシア人とベラルーシ人の志願兵

このグループは、ロシア軍を離脱した兵士たちに加えて、軍事訓練を受けてはいないがウクライナのために一肌脱ぎたいというロシア人、ベラルーシ人の志願兵からなっている。

軍団の結成は2022年3月

自由ロシア軍団は、およそ100名の兵士からなるロシア軍中隊によって2022年3月に結成された。彼らはロシアによるウクライナ侵攻の開始直後に、自らの意志でウクライナの側に寝返ったのである。

写真: Instagram@freedomlegionrussia

軍団の規模はどのくらい?

『ザ・モスクワ・タイムズ』紙によると、2022年7月、軍団は「十分な人員配置がなされた二個の歩兵大隊」を保有している。二個の歩兵大隊といえば、1000人以上の兵がいてもおかしくはない計算だ。

白青白旗(はくせいはくき)

軍団のメンバーは、上の写真のとおり、その印として服の袖に白・青・白の旗を、身につける物に特徴的なワッペンをつけ、自らのシンボルとしている。

写真: Instagram@freedomlegionrussia

新生ロシアの象徴?

自由ロシア軍団について、ジョージア(グルジア)の英字紙『ジョージア・トゥデイ』のある記事が論じている。軍団のメンバーにとって、この白・青・白の旗は重要な意味合いを持つという。

ロシア国旗は独裁主義のしるしと映る

記事の著者によると、この青と白の旗はロシア国旗から赤を抜いたものだという。「反プーチン派の多くは、ロシア国旗を帝国主義、軍国主義、独裁主義のしるしとして見ている。そうした印象はとりわけ赤色の部分と結びついている」

訓練開始は3月

2022年3月、自由ロシア軍団が初めて受け入れた志願兵たちは、ウクライナ軍関係者の指導のもと、予備訓練を開始した。

ドンバスの最前線でも

5月、ドイツの『ベルリナー・ツァイトゥング』紙は、自由ロシア軍団がドンバス地域の前線でウクライナ軍とともに戦っていると報じた。同紙によると、軍団はロシア国内で破壊活動や放火を組織しているという。

ガスプロムバンク元副社長も加入

「自由ロシア軍団」の名が世間の注目を集めたのは、イーゴリ・ヴォロフエフ(Igor Volobuev)氏が加入を表明したときだった。氏はロシア最大の非国有銀行、ガスプロムバンクの元副社長である。『ガーディアン』紙のインタビューに応じ、その選択について語った。

占領軍として死ぬか、良心を守って死ぬか

とはいえ軍団員の多くは、望まぬ戦争に駆り出されたロシア人兵士たちである。“Arni”と名乗る26歳の男性は、『モスクワ・タイムズ』の取材に対し、敵味方を入れ替えることに決めたその背景を次のように語った:「どのみち、僕が戦争に行くことは決まってしまったわけです。占領軍の人殺しとして死ぬか、心に疚しいところなく死ぬか、そのどちらかになるんだなと思いました。それで、ウクライナにつくことにしたんです」

侵攻に抗い、プーチン政権を打破せよ

軍団の主たる目標は、ロシアのウクライナ侵攻を中止させ、プーチン政権を倒すことである。

オレクシイ・アレストビッチが軍団について語る

決して多くのことが知られているわけではないこの軍団だが、先だって『オデッサ・ジャーナル』が興味深い記事を発行した。ロシア人の人権活動家マーク・フェイギン(Mark Feygin)と、ウクライナ大統領府顧問、オレクシイ・アレストビッチの対談記事である。アレストビッチは、軍団の活動内容に言及している。

写真:By Yeremeev.d - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=118076053

「志願者数は数えきれない」

自由ロシア軍団の団員数は増え続けていると、アレストビッチ大統領府顧問は語る。「志願者数は、ロシア軍からのものも含めて、数えきれない」

写真:Freedom of Russian Legion/YouTube

「多数の入団希望者がいる」

昨年5月4日、同軍団のロシア人代表は、ウクライナのインテルファクス通信が主催する記者会見で、新規団員について「加入希望者は多い」と述べた。

ベラルーシ人とロシア人の軍団

別の団員はこう語る:「我々の軍団には、ベラルーシの同胞もいます。ロシア連邦やその他の国々からやってきた現役軍人、退役軍人もいます。プーチン政権と戦うべく、さまざまな国から人々が集まっているのです」

入団前の厳しい審査

しかしながら、自由ロシア軍団に加わるのは簡単ではない。アレストビッチが『オデッサ・ジャーナル』に語ったところでは、入団希望者には厳格な審査が行われるという。うそ発見器による二度のテストもあるほどだ。

捕虜収容所での新兵募集

『モスクワ・タイムズ』の報道によると、自由ロシア軍団は、ウクライナ国内の捕虜収容所からも新規団員を集めていることを認めたという。軍団はソーシャルメディア上で、ロシア軍の捕虜兵たちが同軍団に忠誠を誓う姿をおさめた動画を公開している。ただし、 『モスクワ・タイムズ』が書いているように、捕虜兵たちは強迫された可能性もある。

プーチン大統領の悩みの種?

アレストビッチによれば、ロシア当局は自由ロシア軍団の存在を認識しており、プーチン大統領も神経質になっているようだ。

ロシア兵を捕虜にする瞬間

アメリカの時事解説誌『USニューズ&ワールド・レポート』の報によると、同軍団はテレグラムのチャンネルに数多くの動画を、それも、ウクライナで戦闘中のロシア兵を捕虜にした際の映像を投稿しているという。

ロシアのために、自由のために!

昨年5月9日、プーチン大統領はその演説の最後を「ロシアのために、勝利のために」という言葉で締めくくった。アレストビッチが『オデッサ・ジャーナル』に披瀝した意見によると、その言葉は「ロシアのために、自由のために」という自由ロシア軍団のスローガンを、プーチン大統領が乗っ取ろうとしたもの、ということだ。

「ロシア政府は軍団を恐れている」

ウクライナのアレストビッチ大統領府顧問はさらに続けた:「……プーチン大統領がどれだけ足掻こうが、軍団のスローガンはすでにロシア全土に広まっているのです。そういった流れを阻もうとすること自体、すでに自由ロシア軍団が人心をつかみ、ロシア政府がそのことを不安視していることの証左であるように思います」

求心力を失うプーチン大統領

自由ロシア軍団の存在は、自国民に対する統制をロシア政府が失いつつあることを意味している、という見方がある。『ジョージア・トゥデイ』の報道によると、青と白のペイントで印された“軍団”という落書きが、ロシアの至るところで目にされている。

写真:Instagram@freedomlegionrussia

“L”と“Z”の対立

「L」の文字も、いたるところで見られる。これは軍団(Legion)を表しており、ロシア政府とウクライナ戦争を表す「Z」の文字への抗議を込めて描かれている。

写真:Instagram@freedomlegionrussia

ロシアの法改正、反逆罪で最長懲役20年

ロシア政府は2022年7月、国家反逆罪を厳罰化した。「武力衝突、敵対行為、その他の行為によって」国に歯向かう者を、最長20年間収監できるようになったのだ。この新法はつまるところ、「自由ロシア軍団」の存在感がプーチン大統領を刺激した、ということかもしれない。

ロシア政府中枢に高まる懸念

『USニューズ&ワールド・レポート』は、ロシア政権内部の動きに詳しい人々のコメントを伝えている。「……この法案は、ロシア政府高官の懸念の高まりを反映しています。ウクライナ戦線を離脱する兵士が予想より多いのです。くわえて、当局に愛想を尽かしたロシア市民数百人がウクライナ軍に協力し、専門部隊への配属を志願しているという話もあります」

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