消えたマレーシア航空370便の謎
いまから10年前、定期旅客便のマレーシア航空370便がクアラルンプールから北京に向かう途中で消息を絶った。
2014年3月8日、クアラルンプール国際空港を飛び立ったマレーシア航空370便は、200人以上の乗客乗員もろとも消えてしまい、目的地である北京首都国際空港に着くことはなかった。
マレーシア政府は2015年1月、同機がインド洋に墜落したと発表した。同機に搭乗していた乗員乗客あわせて239名はみな亡くなった。乗客の多くは中国国籍で、アメリカ、フランス、ルーマニア国籍の者もいた。5人の子供も搭乗していた。
この事件は「航空史上最大の謎」と呼ばれるようになり、インターネット上では陰謀論を含めてさまざまな憶測が飛び交った。徹底的な捜索にもかかわわらず、墜落した機体はまだ見つかっていない。
同機がレーダーから消えたのはベトナム領空に入ってまもなくのことだった。同機とホーチミン・タンソンニャット国際空港との交信記録はない。
だが、レーダーから消えた後の370便の動きについて、英民間企業の人工衛星が観測していたデータにそれらしきものが残っていた。
そのデータによると、同機は突然Uターンをし、ふたたびマレーシア上空を飛んでスマトラ島(インドネシア)を回り込み南下、インド洋を飛行中に燃料切れになったという。
『ナショナル・ジオグラフィック』によると、捜索には2億ドルが投じられ、マレーシアと協力国のオーストラリア、中国は徹底的な捜索を行なったという。しかし発見には至らず、2017年にいったん捜索は打ち切りとなった。
その後、ロイター通信によると、米海洋探査会社オーシャン・インフィニティがマレーシア政府と契約し、2018年に90日間の捜索活動を行った。しかし成果は得られなかった。
なお、オーシャン・インフィニティとマレーシア当局が結んだ契約によると、機体の発見に至らなかった場合には報酬が発生しないことになっていた。
マレーシア当局は2015年1月、機体がみつからないまま370便の墜落を公式発表した。
2015年7月、同機の翼の破片がフランス領レユニオン島の海岸で発見される。
米ネットワークCBSによると、事故から10年が経った今年、オーシャン・インフィニティ社はふたたび捜索に乗り出すかまえを見せているという。
マレーシア運輸相は、その申し出を前向きに検討したいとコメントしている。
ただ、『アトランティック』誌が論じるには、マレーシア政府としてはこの事件を過去のものとすることを願っているようだ。というのも、彼らは捜査の初期段階で多くのミスを犯したし、事故はマレーシア航空の信用にかかわることでもあるからだ。
この事件の謎について、最近ではNetflix制作のドキュメンタリーシリーズ『MH370:マレーシア航空機失踪事件』(2023年)がふたたび取り上げている。