潜水艇「タイタン」の破片を発見、乗組員5人は全員死亡と推定
6月18日(米国時間)に北大西洋で消息を絶った潜水艇「タイタン」について、船体の圧壊により乗組員5人は全員が死亡したという推定がなされた。
111年前に沈没したタイタニック号の残骸を見るという観光ツアー用の潜水艇「タイタン」は、沈没船の残骸から500メートルの地点で事故に遭ったとされる。
米沿岸警備隊のジョン・モーガー少将は22日、昼夜を徹した4日間にわたる捜索活動を経て最悪の事態が明らかになったことを発表したと米メディアが伝えた。
一方、タイタニック号見学ツアーを運営する米企業「オーシャンゲート・エクスペディションズ」も捜索の結果を発表、潜水艦に乗っていた5人の生存は絶望的として弔意を表した。
4日間にわたり懸命に続けられてきた捜索は最悪の結果で幕切れとなった。米沿岸警備隊によれば、遠隔操作型の探査機によって潜水艇の破片が発見され、それにより乗組員は全員死亡したと考えられるという。
ただし、ジョン・モーガー少将によれば米沿岸警備隊は今回の事故の原因や時刻を特定するにはまだ時期尚早だとみており、今後も情報の収集と分析をつづけるとしている。
ジョン・モーガー少将は記者団に対し、下のようにコメントした:「深海はきわめて過酷な環境です。事故が起こった時刻や場所、状況について多くの疑問があることは承知しています。しかし、真相解明が進めば今後の事故防止にもつながるでしょう。ともあれ、現在我々は事故状況の解明に注力しています」
「タイタン」を発見すべく懸命の捜索活動が行われていたものの、じつは潜水艇の残骸が発見されるよりも前に、乗組員5人が生存を続けられる時間は過ぎていたようだ。
「タイタン」は全長6.7メートルの小型潜水艇で、96時間分の酸素が積まれていた。6月22日木曜日の朝(日本時間で同日夕方)には供給期限が経過し、生存に必要な酸素が欠乏するおそれがあったのだ。
ソーシャルネットワークでも事故に関しさまざまな意見が交わされ、4日間にわたり酸素欠乏を待つよりも、乗組員が遭遇したような事故で即死する方がましだというコメントが多くを占めている。
潜水艇が連絡を絶ってから米国、カナダ、ノルウェー、フランス、英国のチームが最新の探査機器を投入、大規模な捜索活動を行っていた。その結果、事故を示す潜水艇の破片が発見されることとなった。
各国チームは2万平方キロメートル以上の範囲にわたって、海上はもちろんのこと水深4キロメートル近くまで捜索を行ったものの乗組員を見つけることはできなかった。「タイタン」はまさに絶海への旅に乗り出していたのだ。
北大西洋に沈んだ「タイタン」の乗組員は、「オーシャンゲート」CEOのストックトン・ラッシュさん、英国出身の実業家ハミッシュ・ハーディングさん、フランス出身で探検家のポール=アンリ・ナルジョレさん、パキスタン出身の実業家シャーザダ・ダウードさんとその息子スレマンさん。
沈没したタイタニック号の残骸を見るという本ツアーの料金は、乗客1人あたり25万ドル(約3,500万円)。10時間以内に海面から下降し、深さ4,000メートルの海底にあるタイタニック号の残骸を見学、海面への上昇を行うというものだった。
2022年に本「タイタン」ツアーに参加したCBSジャーナリストのデビッド・ポーグ氏は、長大な確認書にサインする必要があったこと、最初のページだけで死亡する可能性について3度も言及があったことを振り返っている。
今回の事故が及ぼした影響を考えれば、「オーシャンゲート・エクスペディションズ」がタイタニック号の残骸見学ツアーの4回目を実施することはきわめて困難と言わざるを得ないだろう。