バチカン国旗に間違いみっけ!まちがったウィキペディア版が全世界で広まる
もしもウィキペディアに掲載されている国旗のディテールにこっそり変更が加えられたらどうなるだろう。きっと、ものの数分のうちに修正されるはずだ。多くの人がそう考えていたのだが、果たしてそうなのだろうか......?
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もし誰かがジャスティン・ビーバーの生年月日を変更したとしたら、何百万人ものファンが反応し、次の日を待たずに間違いは訂正されるだろう。しかし、バチカン国旗の場合はそうはならず、何年にもわたって間違いが放置されることになった。
ことの起こりは2017年7月に、何者かがウィキペディアに掲載されていたバチカン国旗のイラストのディテールを書き換えたことにはじまる。
写真: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Flag_of_the_Vatican_City.svg
バチカン国旗の白い部分には、教皇が公式行事で着用する冠「三重冠」あるいは「教皇冠」が描かれている。その下部の色が、白から赤に塗り替えられてしまったのだ。
ここで問題となるのは、公式な国旗仕様書では、この冠の色は白とされていることだ。ソーシャルサイトRedditのユーザーがスレッドでこの問題を指摘し、議論を巻き起こした。
国旗の間違いに気付いた匿名のユーザーが、長い説明とともに誤りを報告したにもかかわらず、ディテールは修正されなかった。その結果、とんでもない現象が世界中で起こった。
ローマ教皇の海外訪問に合わせて、世界中の印刷業者がウィキペディアの画像を使用してバチカン国旗を大量に印刷してしまったのだ。
その結果、2017年の夏以降、ローマ教皇フランシスコが訪れた多くの国々で、教皇冠の下部が赤いバチカン国旗が振られるようになった。
2018年6月にはスイスのジュネーブで開催された世界教会協議会(WWC)でWikipedhia版の「間違った」バチカン国旗がローマ法王の前で振られていた。
アメリカでは2019年3月に開催されたペンシルバニアのカトリック協議会で、ハリスバーグの建物に正しくないバチカン国旗が掲げられた。
同じ年の11月に教皇フランシスコがタイのバンコクを訪問した際には、何千人もの人々が冠の一部に赤が使用されたバチカン国旗を振っていた。
2021年3月に教皇がイラクのバグダッドを訪問した際にも、同様の現象が起きた。
ローマ教皇が2018年10月にペルーを訪問した際には、パパモビルと呼ばれる一般拝謁時用の特別車が正式ではない国旗で飾られていた。興味深いことに、バチカン公国自体も"非正規"デザインの国旗を使用しているのだ。
不思議なのは、2015年9月の時点で、ニューヨークの国連本部に正式ではない国旗が掲げられたことだ。ウィキペディアで国旗に変更が加えられた時点より2年前の出来事にあたる。
しかし、バチカン国旗のズレは冠の赤い部分だけではおわらない。ニック・ヒアはWEBサイト『Pixel Envy』の記事で、2017年度版の国旗の黄色い部分は、オリジナルより明るいと指摘している。
バチカン国旗に関する著書のあるウィリアム・M・ベッカーは、実は冠の下部が赤い旗は1980年から使用されていると指摘している。正しい旗とは言えないものの、40年以上にわたってバチカンでも却下はしておらず、ローマ教皇や関係者も、一部の行事では間違いを承知の上でこちらの旗を受け入れているということだ。