砲弾不足で追いつめられるロシア、食料と交換で北朝鮮から武器を調達
ロシア当局は、ウクライナ戦争に投入するための武器について、北朝鮮に頼っているという。その見返りとして北朝鮮国内でひどく欠乏している食糧の供給が提示されていると、ホワイトハウスのジョン・カービー高官は明らかにした。
3月30日にカービー高官が記者たちに述べた内容によれば、ロシアは北朝鮮から武器や弾薬を得ようとしており、その軍事的支援の見返りとして北朝鮮は食糧支援を受け取るという内容の取り決めが提案されたという。
「この取り決めによると、ロシアは北朝鮮から20種類以上の武器や弾薬を受け取ることになります」とカービー高官は記者会見で語った。
「さらにロシアは、北朝鮮に代表団を送り込もうとしており、軍需品の見返りとして食料の提供を申し出ています」とカービー高官は付け加えた。
ウクライナ東部で戦っているロシア兵たちは、冬季の軍事攻勢の間に弾薬や武器に事欠くようになり、時間が経つにつれ苦戦を強いられるようになっていった。数千の防弾板が破壊され、砲弾は底をついていたのである。
イギリス国防省によると、かつては使用に不向きとされた旧式の砲弾をロシア軍は兵士たちに配らざるをえず、砲弾の配給は戦地においてますます頻繁に確認されるようになってきたという。
「ここ数週間、ロシア軍の砲弾不足は深刻さを増している模様で、前線の広範囲にわたり砲弾の配給が厳しくなっている」と、イギリス国防省は3月14日付けの文章で述べている。
イギリス国防省はさらに、この砲弾不足が大きな足かせとなって、おそらくロシア軍はその陣形を動かすことができず、作戦上重要な攻撃を仕掛けることができずにいるのでは、と付け加えた。この見立てが正しかったことは、分析の公表から2週間後に明らかになった。
ロシアと北朝鮮の「取り引き」のニュースが飛び込んだその数時間前、米国財務省外国資産管理局は、この軍事取引の交渉を受け持っているとしてスロバキア国籍のアショト・ムクルティチェフを制裁対象にしたのだった。
AP通信によると、ムクルティチェフは今回の取引に深く関与しており、かつて北朝鮮当局を相手にロシアの代理人としてあまたの武器や弾薬の確保を請け負い、北朝鮮にはその対価として民間航空機や原材料などを受け渡したことがあった。
「ロシアは戦争開始以来、9千点以上の軍用重装備品を失ってきました。また、多角的な制裁措置や輸出制限の影響もあり、ロシアにとって武器を補充することはますます難しくなっています」と、ジェネット・イエレン米国財務長官は声明のなかで述べた。
「ムクルティチェフが加担した今回の軍事取引をはじめとする計画をみるにつけ、プーチン大統領は武器を入手するため、イランや北朝鮮の力を借りるという最終手段に訴えていることがわかります」と、イエレン長官は付け加えた。
ウクライナ侵攻開始後、ロシアが軍事的な支援を北朝鮮に頼ったのは今回が初めてのことではない。2022年9月に『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じたように、ロシアは北朝鮮から多数の大砲を購入している。このことは、国際的な制裁が機能していたことを示している。
北朝鮮にとってみれば、今回の取引は歓迎すべきものだった。新型コロナの流行により、国内の食糧難はきびしさを増しているからである。
「確かな筋からの情報ではないが、北朝鮮では餓死者が出ているようだ」とAP通信の2月下旬の記事は伝えている。一方で同記事は、「専門家たちは大量死や飢饉の気配はうかがえないとしている」とも指摘している。
今回明らかになったロシアと北朝鮮の「武器と食料」の交換取引からは、両国に対する制裁が一定の効き目を示していることが窺える。だが、公式データを出し渋る各政府を相手にしている以上、正しい情報の入手はけっして簡単ではないことは明らかだ。