オバマ元大統領の妻、ミシェル・オバマが大統領候補に?:米民主党の苦肉の策とは
アメリカ大統領選が迫っている。そんななか、民主党の候補としてオバマ元大統領の妻、ミシェル・オバマの名前が囁かれ始めている。
『ニューヨーク・ポスト』紙によると、民主党が大統領選の候補として現職のバイデン大統領ではなくオバマ元大統領の妻ミシェル・オバマを擁立する可能性があるという噂があるのだという。
また、CNNによると、2月中旬、次期大統領が誰になるかという賭けにおいてラスベガスのカジノではミシェル・オバマがバイデン大統領とトランプ元大統領に次いで3番人気となっていたのだという。共和党候補のニッキー・ヘイリーを上回る人気というわけだ。
確かに、政治ニュースサイト「The Hill」も書いているように、ミシェル・オバマは最近民主党において一番人気のある人物と言えるほどの存在感を獲得してきている。
ミシェル・オバマが大統領選に出馬するという噂は以前から囁かれており、共和党議員のマージョリー・テイラー・グリーンなども言及したことがある。
テキサス州選出の共和党議員、テッド・クルーズも昨年9月に「Fox News」に対してこう語っている:「来年の夏、民主党は全国大会でバイデン大統領を捨てて、代わりに候補としてミシェル・オバマを投下するだろう」
とはいえ、「The Hill」はこの噂の信憑性を疑い、ミシェル・オバマをやり玉にあげようとする陰謀論的な考え方を背景にした「極右の憶測」に過ぎないと述べている。
「The Hill」によると、ブッシュ政権を支えた政治コンサルタント、カール・ローヴはバイデン大統領の続投は否定しつつも、ミシェル・オバマが候補になるという考えは「まったくの妄想」だと断じている。
ローヴはミシェル・オバマの自伝をもとにこう語っている:「彼女はそもそも夫が政界に進出することも望んでいませんでした。大統領になることもです。政治的なタイプではないのです」
オバマ政権のアドバイザーだったデヴィッド・アクセルロッドも、ミシェル・オバマはコミュニケーション能力こそ傑出していたものの、政界には夫のせいで「巻き込まれた」に過ぎないとCNNに語っている。
保守派ジャーナリストのリッチ・ローリーは政治サイト「ポリティコ」上で、仮にミシェル・オバマがいまから大統領選出馬を望んだとしても遅すぎであり、いまから候補になるというのはありそうもないと論じている。まだしもカマラ・ハリス副大統領やカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事の方が可能性があるということだ。
『The National Review』誌編集長でもあるローリーは、「ポリティコ」での論説記事でこう語っている:「そもそもミシェル・オバマが出馬を望むかどうかという点は措くとしても、彼女はこれまで何にも出馬したことはなく、選挙戦を戦う能力が十分にあるとは考えづらい」
実際、ミシェル・オバマ本人も、8年続いたオバマ政権後にもう政治からは離れたいという趣旨のことをなんどか語っている。
ただし、昨今はファーストレディに求められる能力も高まっているということは指摘しておこう。もはや大統領の横で笑顔を保っていればいいという時代ではなく、権力者の配偶者にも否応なく高い政治的スキルが要求される。
たとえば、ヒラリー・クリントンがそうだ。ビル・クリントンは大統領として精彩を欠いた存在だったが、いまやヒラリーは議会や省庁で非常に大きな存在感を発揮している。
ミシェル・オバマも、政界を後にしてからも様々な社会運動を牽引し、独自の存在感を示し続けている。
その巧みなスピーチは多くの場所で歓迎されているほか、動画制作やノンフィクション作家としても活躍している。
2019年には『タイム』誌の選ぶ最も影響力のある女性100人に選出された。
さらに、2020年には回顧録『マイ・ストーリー』のオーディオブック版でグラミー賞を受賞している。
米世論調査会社「Gallup」によると、ミシェル・オバマは数年連続でアメリカでもっとも尊敬されている女性なのだという。
繰り返すが、ミシェル・オバマ本人はもう政界に戻る気はないという意向を数度にわたり表明している。だが、万一その前言が撤回されたとしても、あながち悪くないのではないだろうか。