米軍車両が欧州内をロシア方面へ移動:NATOによるロシア牽制へ

欧州内を移動する米軍の車両
移動する米軍車両
NATOの事前配備集積(APS)施設
何が移送されたのか?
旅団を収容するために建設された
「旅団戦闘団」
旅団の派遣にかかる時間はわずか数日
NATOの東端を「鉄壁化」
転換点となった2014年
東部地域の強化を図るNATO
「ロシアがとった行動に対する帰結」
NATO加盟国にとって最大の脅威
同時期に完成したポーランド国内の米軍基地
即応態勢にある部隊が駐留
シフィエントシュフ基地の狙い
ロシアとの間で高まる緊張
ロシア側も国境付近に戦車部隊を移動
欧州内を移動する米軍の車両

最近、米国はドイツに配備されていた戦車や戦闘車両をポーランドのポドヴィツに移動させたが、ロシアはこの動きに苛立ちを募らせているようだ。

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移動する米軍車両

ポーランド局「ラジオZET」は、米軍の車列がドイツのマンハイムにある基地からポドヴィツに向かう様子を公開。なお、車両の移送は今年9月いっぱい行われることになっているとのこと。

 

NATOの事前配備集積(APS)施設

ポドヴィツにはNATOの事前配備集積(APS)施設があり、飛行場にも隣接しているため、有事には装備品を迅速に前線に送り出すことができるのだ。

 

何が移送されたのか?

『ニューズウィーク』誌いわく、移送される装備品は最終的に戦車87台、歩兵戦闘車150台あまり、自走榴弾砲18台に達する見込み。また、今年6月には、M1エイブラムス戦車14台がすでに到着したという。

旅団を収容するために建設された

同月にはさらに、M88装甲回収車もポドヴィツに到着。米陸軍の元大佐で現在は欧州政策分析センター(CEPA)のシニア研究員を務めるレイ・ヴォイチク氏はこのAPS施設について、最終的には装甲車両を備えた一個旅団を展開することができる規模になる、と『ニューズウィーク』誌上で解説している。

 

「旅団戦闘団」

『キーウ・ポスト』紙によれば、このようなユニットは「旅団戦闘団」と呼ばれており、「米軍が展開する包括的な機動編成としては基本単位」になるものだという。また、専属の戦闘支援・後方支援部隊や柔軟な砲兵部隊」も付属するとのこと。

旅団の派遣にかかる時間はわずか数日

『ニューズウィーク』誌によれば、ポドヴィツに集結した旅団を派遣するのにかかる時間はわずか数日。このような旅団を、艦船を用いて展開すれば1ヵ月はかかるため、圧倒的な時間の短縮となる。同時に、ロシア政府に対する強い抑止力になるだろう。

NATOの東端を「鉄壁化」

前出のヴォイチク氏いわく:「NATOの東端を『鉄壁化』するために同盟国が協力して行う取り組みとして、意義深いものです。負担の分担、抑止力、防衛協力の好例だと言えます」

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転換点となった2014年

同氏はさらに、「2014年以来、私たちは(NATOの)東部地域でプレゼンスを強化してきましたが、戦闘能力は限定的でした。今では当時より充実していますが、それでも、米国とNATOの前線防衛にはさらに多くの取り組みが必要です」と付け加えている。

東部地域の強化を図るNATO

NATOは今年7月に、東部地域の強化に乗り出すという目標を改めて表明。公式ウェブサイトはこれについて、「NATOの抑止力と防衛態勢にとって不可欠な要素」としたが、実際にはロシアに対する毅然とした姿勢を見せるのが狙いだろう。

「ロシアがとった行動に対する帰結」

同サイトはまた、「NATOはロシアがとった行動に対する直接的な帰結として、域内の東部における軍事プレゼンスを強化した。ロシアは近隣諸国や環大西洋地域に対し、攻撃的な姿勢をとり続けている」と指摘。

NATO加盟国にとって最大の脅威

さらに、「ロシアは加盟国の安全や、欧州大西洋地域の平和と安定をおびやかすもっとも重大かつ直接的な脅威だ」と結論づけた。

 

 

同時期に完成したポーランド国内の米軍基地

ポドヴィツへの車両輸送が開始されたのは、シフィエントシュフ(ポーランド)に1,000人規模の米軍部隊を収容できる新基地が完成してからわずか1ヵ月後のことだった。『キーウ・ポスト』紙によれば、この基地はNATO軍の訓練施設としても利用されるとのこと。

即応態勢にある部隊が駐留

シフィエントシュフの基地には即応態勢にある部隊が交代で駐留することになっており、一帯で戦闘が発生した場合には、この基地から米軍が出動する可能性が高い。

 

シフィエントシュフ基地の狙い

NATO投資部門のディレクターを務めるダリウシュ・メンドララ氏いわく:「この基地は集積地に移送する補給品を迅速に受け取ったり、戦闘部隊の編制を行ったりするためにも利用されます」

 

 

 

ロシアとの間で高まる緊張

『ニューズウィーク』誌は米軍が行った車両移送について、「ウクライナへの全面侵攻をめぐって、ロシアとの緊張が高まる中で行われたものだ」とした。

ロシア側も国境付近に戦車部隊を移動

実際、ロシア側はエストニアおよびフィンランドとの国境からおよそ160キロメートルの地点に、最新式の戦車部隊を移動させている。

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