プーチン政権を悩ませる「自由ロシア軍団」
プーチン大統領が推し進めるウクライナ侵攻に対抗し、ウクライナ軍を支援するため新たに結成されたグループ、それが自由ロシア軍団だ。
写真:Instagram @ freedomlegionrussia
自由ロシア軍団はロシア軍を離脱したロシア兵と、軍事訓練は受けていないもののウクライナを支援したいと考えるロシア人・ベラルーシ人のボランティアで構成されている。
自由ロシア軍団が結成されたのは2022年3月、ウクライナ侵攻の開始直後にウクライナ側に寝返ったおよそ100名のロシア兵が中心となった。
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自由ロシア軍団のメンバーは白・青・白の旗と拳をかたどった徽章で身元を示している。
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ジョージアの『Georgia Today』紙によれば、自由ロシア軍団が用いる白・青・白の旗には意味があるという。
前述の記事によれば、白・青・白の旗はロシア国旗から赤色の部分を抜いたものだという:「反プーチン派にとってロシア国旗は帝国主義や軍国主義、権威主義の象徴となっているが、こういった思想はなかでも赤色の部分と結び付けられている」
2022年3月、自由ロシア軍団の初期メンバーたちはウクライナ軍の指導のもと、予備訓練を開始した。
『Berliner Zeitung』紙は5月、自由ロシア軍団がドンバス地方の最前線でウクライナ軍とともに戦闘を行っていると報じた。また、同紙によれば、ロシア国内で放火や妨害行為なども行っているとされる。
自由ロシア軍団が注目を集めたのは、ガスプロムバンク元副総裁のイーゴリ・ヴォロフエフがSNSで参加を表明し、『ガーディアン』紙のインタビューに応じたときだ。
自由ロシア軍団の目標は、ロシアによるウクライナ侵攻を中止させ、プーチン政権を打倒することだ。
自由ロシア軍団の実情については不明な点も多い。しかし、ニュースサイト「Odessa Journal」は最近、ロシアの人権活動家マーク・フェイギンとウクライナの大統領府顧問オレクシイ・アレストビッチの対談を公開した。その中で、アレストビッチは自由ロシア軍団の活動について触れている。
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アレストビッチ大統領府顧問は「自由ロシア軍団を含む義勇軍への加入申請者数は予想を上回っている」と述べ、自由ロシア軍団が規模を拡大していることを明かした。
写真:自由ロシア軍団 / YouTube
5月4日、自由ロシア軍団のロシア人代表はインテルファクス・ウクライナ通信が主催した記者会見で、新規加入者について「参加希望者は多い」と述べた。
また、自由ロシア軍団のメンバーは「我々の軍団にはベラルーシの同胞も参加している。ロシア連邦の現役・退役軍人もいる。様々な国々からプーチン政権打倒を目指す人々が集まってきているのだ」と語っている。
ただし、自由ロシア軍団に参加するのは簡単ではない。アレストビッチが「Odessa Journal」に語ったところによれば、参加希望者は二重ポリグラフ検査をはじめとする厳格な審査をパスしなくてはならないという。
アレストビッチによれば、ロシア当局は自由ロシア軍団の存在を認識し、神経質になっているようだ。
ニュースサイト「U.S. News」の報道によれば、ウクライナで戦闘中のロシア兵を捕虜にした自由ロシア軍団のチームがTelegramのチャンネルにビデオ投稿を行っているという。
5月9日の戦勝記念日の演説を「ロシアのために、勝利のために」という言葉で締めくくったプーチン大統領。しかし、ウクライナのアレストビッチ大統領府顧問が『Odessa Journal』紙に述べたところによれば、これは自由ロシア軍団のスローガン「ロシアのために、自由のために」を真似たものであるらしい。
アレストビッチ大統領府顧問はさらに、「ウラジーミル・ウラジーミロビッチ(プーチン大統領)はすでにロシア中に浸透しつつある反体制派のスローガンを打ち消そうと試みているようだが、自由ロシア軍団はますます人心を掴んでおり、ロシア当局は恐れを抱いている」とした。
また、自由ロシア軍団の存在は、クレムリンがロシア国民を制御できなくなっていることを示す兆候だと考える人もいる。『Georgia Today』紙によれば、ロシア全土で自由ロシア軍団を象徴する白と青の落書きが見つかっているという。
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また、自由ロシア軍団を示す「L」の文字が、ウクライナ侵攻への支持を示す「Z」の文字に対抗するように描かれることもある。
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ロシア当局が検討中の新法は、プーチン政権が自由ロシア軍団の存在に頭を悩ませていることを示すものだ。戦場での離脱兵や外国軍の味方をするロシア人志願兵に対し、懲役20年を宣告できるようにする新法を承認するかもしれないのだ。
「U.S. News」によれば、この法案はロシア連邦議会下院に提出されており、「ロシア連邦の利益に反して、外国領土における武器や軍装を用いた武力紛争、敵対行為、およびその他の行動に参加する」人々に対しては、追加の罰則が規定されているという。
「U.S. News」によれば、クレムリンの内情に詳しい情報提供者の話として「ロシア政府高官たちは、ウクライナの戦場で離脱するロシア兵の多さに懸念を抱いているほか、反体制派のロシア市民がウクライナに味方して参戦していることに頭を悩ませている」と伝えている。