水底を彩る「海の宝石」:バラエティに富んだウミウシの世界
日本近海にも意外とたくさん生息しており、潮だまりや浅瀬でも出会うことができる「ウミウシ」。色とりどりの華やかな姿をしていることから「海の宝石」と呼ばれ、ダイバーや生きもの好きたちのあいだで人気の観察対象になっています。
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ウミウシはうねうねとした身体ににょっきりと角を生やし、ふさふさのエラをたなびかせるという奇怪な風体をしていますが実は巻貝の仲間。大阪にある水族館「海遊館」のウェブサイトによれば、幼生は貝殻をもっていることが多いそう。
その生態は種類によって様々。一般的には海綿やホヤを食べて暮らしていますが、なかには毒クラゲを好むゲテモノ食いや、藻類から取り込んだ葉緑体で光合成をしてしまうものまで多種多様です。また、大きさは全長数センチの小型種がほとんどですが、海遊館のウェブサイトによれば数十センチメートルに達するような大型種もいるとのこと。
ふだんは海の底でひっそりと不思議な魅力を放つウミウシたち。今回はそんなウミウシたちのカラフルで優雅な姿を写真で眺めることにしましょう。
日本で見ることができるウミウシの代表選手と言えばこのアオウミウシでしょう。青地に黄色の縁取り、オレンジ色の触覚というド派手な色合いで、これぞウミウシという姿をしています。北海道から九州にかけて、日本各地の浅瀬で暮らしているとのこと。
画像:写真AC
一方、こちらは黄色地に白黒の鮮やかなまだら模様とトゲだらけのユニークな姿でひときわ目を惹くキイロイボウミウシ。写真は伊豆半島で撮影されたものですが、世界各地に広く分布しています。
お次は可愛らしいパステルカラーのウミウシ。写真はインドネシアで撮影されたものですが、日本産のものは和名のとおり象牙色や白の個体が多いようです。
白地に黄色やオレンジ色の斑点がたくさん散りばめられたキイボキヌハダウミウシ。キュートな外見ながら他のウミウシを捕食してしまうことから、ウミウシ界のギャングとして知られています。
こちらはレンゲウミウシ属の一種。白地に紫色の斑点がなんともメルヘンです。
身体の周囲に優雅なフリルをたなびかせるこのウミウシ。その名もメレンゲウミウシといい、日本では沖縄県で見られるそうです。
ウミウシというと海底をのっそり這いまわる生きものだと思われがちですが、中には身体をはためかせて泳ぐことができるものもいます。こちらのミカドウミウシはあでやかに海中を舞う姿がフラメンコの衣装をまとっているように見えるため「スパニッシュダンサー」とも呼ばれています。ちなみに、全長60センチメートルに達することもある大型種。
その名の通り、白地に黒ブチというシンプルながら洗練されたデザインが自慢のブチウミウシ。暖かい海で暮らしており、日本ではおもに九州や沖縄県の海で見ることができます。
黒っぽい体色のため一見すると地味ですが、触覚とエラのオレンジ色がアクセントとなって、中々シブい魅力を放っています。
こちらはクリーム色の背中に浮かぶ波模様が美しいシラナミイロウミウシ。フリルのような外套膜をヒラヒラとはためかせる習性があるのだとか。
コンペイトウを引きのばしたような姿が特徴のツノキイボウミウシ。沖縄にある「美ら海水族館」のウェブサイトによれば、イボの先が黄色い個体とそうでないものがいるそうです。日本では沖縄県の海に生息しています。
こちらのミゾレウミウシは淡いブルーに紺色のストライプという組み合わせがなんともキュートです。
オレンジ、黄色、白、紫色といかにもトロピカルな色合いですが実は日本にも生息しており、沖縄県はもちろんのこと、ウミウシ類が豊富なことで知られる和歌山県の沿岸や伊豆半島などで見ることができるようです。
黄色と黒のコントラストが強烈なキイロトラフウミウシ。色合いと模様がスマイリーフェイス(☺)を連想させることから、かつては「ニコニコウミウシ」や「ニコチャンウミウシ」と呼ばれていたとか。
その名の通り、満点の星空のような模様でひときわ目をひくホシゾラウミウシ。美ら海水族館のウェブサイトによれば、薄紫色の海綿を食べて暮らしているとのこと。
個性的なファッションの代名詞ともいえるヒョウ柄ですが、ウミウシの世界にもヒョウ柄をまとったつわものがいます。日本では沖縄県や和歌山県の海に出没するようです。
こちらはクロスジリュウグウウミウシ属の一種。こうしてみると、どことなくカタツムリのようで、ウミウシも巻貝の仲間であることが納得できるでしょう。
ワインレッドの色合いがエレガントなチリメンウミウシですが、ちょっと変わった生態を持っています。科学技術振興機構が運営するウェブサイト「Science Portal」によれば、このウミウシは交尾するたびに交接器を自切してしまうのですが、なんとすぐに再生するというのです。このような生物はチリメンウミウシ以外では知られていないそう。
お次はサイケデリックな色合いがひときわ目立つサキシマミノウミウシの一種。ミノウミウシの仲間はどれも背中にフサフサの突起をたなびかせていますが、これは単なるオシャレではありません。一部の種ではエサとなるクラゲやイソギンチャクから刺胞(つまり毒針)を取り込み、これを背中の突起に蓄えて身を守っているのです。とがっているのは見た目だけではなかった……
ところで、ウミウシがどのようにして生まれるのかご存じでしょうか? 色や形は種類ごとに異なりますが、ウミウシの親はおおむねこの写真のような渦巻状の卵塊を産みつけます。ちなみに、ウミウシは雌雄同体で身体の前部がオス、後部がメスというつくりになっています。
海綿の上に佇むコモンウミウシ属の一種。お食事中でしょうか?
最後にご紹介するのはウミウシカクレエビという一風変わったエビの一種。ウミウシやナマコの表面に隠れて暮らすというのですが、さすがにこのサイズのウミウシを住処にするのは無理があるような……