英国一有名な木「シカモア・ギャップ」が無断で切り倒された理由とは
「シカモア・ギャップ」はイギリス北部ノーサンバランドにあった、世界で最も有名な木のひとつだ。辺りは有数のフォトスポットになっていたが、2023年9月にある二人組によって何の理由もなく伐採されてしまった。
一見すると、ごくふつうのセイヨウカジカエデにみえるシカモア・ギャップの木。しかし、見た目以上の価値がそこには隠されている。周辺地域を管理する団体の1つである「ナショナル・トラスト」によると、この木は今から約250年前の1860年から1890年の間に、当時の土地所有者ジョン・クレイトンによって植えられたそうだ。
ノーサンバーランド国立公園のウェブサイトによると、シカモア・ギャップの木の高さは約5メートル、幹の直径は90センチメートルと推定されている。
シカモア・ギャップの木は、イングランド北部ノーサンバーランド州にある「ハドリアヌスの長城」の敷地内に植えられていた。
この長城は、2世紀前半にローマ皇帝ハドリアヌスによって建設され、ローマの属州ブリテン島とカレドニアの境界を定めたものである。
英『BBC』が説明しているように、そのフォルムの美しさと木の立っている場所の珍しさから、シカモア・ギャップの木は多くの観光客を魅了してきた。しかし、その名前が世界中に知られるようになった理由はそれだけではない。
1991年、シカモア・ギャップの木は、ケビン・コスナー、モーガン ・フリーマン、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、アラン・リックマン、クリスチャン・スレーターといった名だたる俳優が出演した映画『ロビンフッド』に登場し、一躍有名になった。
写真:X / @smithskaye
英『BBC』によると、『ロビンフッド』の監督ケヴィン・レイノルズは、シカモア・ギャップの木は世界で「最も牧歌的な場所」の一つだと語ったそうだ。
シカモア・ギャップの木は映画に登場して以来、「ロビン・フッドの木」という愛称で親しまれていた。2016年にはイギリスの「今年の木」に選出されることとなる。
何世代にもわたって愛されてきたシカモア・ギャップの木だが、現在では目にすることはできない。2023年9月28日の夜、何者かによって無断で伐採されてしまったのだ。警察の捜査により、2024年4月になってついに地元男性2人が容疑者として逮捕され、法廷で裁かれることとなった。
切り倒されたシカモア・ギャップの幹はきわめて太かったため、2023年10月12日に小さく切り分けられて撤去された。ナショナル・トラストによると、この木から採られた種子や枝の一部は、新たな植林活動に使われた。しかし、新たにまいた種が育つまでには、少なくとも20年はかかるだろう。