英国のキア・スターマー新首相はどんな人物?

労働党が圧勝し、政権交代
保守党の「自滅」?
中道路線に軌道修正
撤回された10の公約
党内左派の反発
迅速かつ冷徹
「マジメで官僚的」
スターマー新首相の人物像は「簡単には言い表せない」?
「安定」を掲げるスターマー新首相
労働者階級出身
貧困層への理解をアピール
裕福でなかった子供時代
人権派弁護士として
「スーパーボーイ」
親しみやすいイメージ
左派・右派の両方から批判を浴びる
「中身のない人間」
労働党が圧勝し、政権交代

7月4日に行われた英国の総選挙では、元検事総長のキア・スターマー党首率いる労働党が圧勝。ブレア政権以来となる労働党への政権交代が実現した。しかし、その人物像は謎に包まれており、カリスマ性や明確な指針に欠けるという見方も強い。

 

 

保守党の「自滅」?

『デイリー・テレグラフ』紙いわく、それほど人気のないスターマー氏が新首相の座に収まったのは、リシ・スナク元首相率いる保守党の「自滅」による部分が大きい。とはいえ、支持率20ポイント差で保守党の後塵を拝していた労働党が、逆に20ポイント差をつけて政権獲得に至ったのはスターマー新首相の功績と言わざるを得ない。

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中道路線に軌道修正

スターマー新首相(61)はジェレミー・コービン元党首の左派路線を放棄し、中道路線に軌道修正を行ったことで知られる。そのため、党内左派からは裏切り者として敵意を向けられることも。

撤回された10の公約

スターマー新首相は2020年に労働党の党首に就任した際に、10の公約を掲げた。そこには武器輸出の見直しや富裕層への課税強化、公共事業の国営化といった政策が含まれていた。NBC放送によれば、コービン元党首の顧問だったローラ・パーカー氏は「10の公約は素晴らしいものでした。私が重視していた政策のほとんどを含む、包括的な公約だったのです」と述べているそうだ。

党内左派の反発

しかし、スターマー新首相は現在までにこれらの公約をすべて撤回。もちろん、党内左派はこれに反発した。前出のパーカー氏は「フラストレーションの高まりを感じた」としている。一方、党内の中道派はスターマー新首相の方針を現実主義の表れだと見ているようだ。

迅速かつ冷徹

たとえば、スターマー新首相の伝記を著したジャーナリスト、トム・ボールドウィン氏は、スターマー新首相が10の公約にとらわれることを良しとせず、早々に見切りをつけたことについて、「迅速かつ冷徹に」行動できることを示したとしている。

「マジメで官僚的」

AP通信によれば、反スターマー派の人々は同氏について「マジメで官僚的だが、少々退屈な人物」だと評しているとのこと。2022年に「パーティーゲート」事件を受けて退任したボリス・ジョンソン元首相のような社交的タイプとは対照的だと言える。

スターマー新首相の人物像は「簡単には言い表せない」?

前出のボールドウィン氏はスターマー新首相の人物像について「簡単には言い表せない」としている。一方、『デイリー・テレグラフ』紙によれば、本人は自分自身について「誤りや不正があれば、それを正したい」性格だと述べているそうだ。ただし、同紙も指摘している通り、これはどんな政治家にも当てはまることだろう。

「安定」を掲げるスターマー新首相

スナク元首相が5月22日に下院の解散と総選挙を発表すると、スターマー新首相は「労働党への投票は、経済的・政治的な安定への投票」というスローガンを掲げた。自らを保守党政権がもたらした不安定さに対する対立軸だと位置づけ、安心感のある変化を印象づけようとしたのだ。

 

労働者階級出身

スターマー新首相はつつましい労働者階級出身。ロンドン南部にある昔気質の街、オックステッドで3人のきょうだいとともに成長した。父親は気難しい工具職人で、母親は看護師だったという。

貧困層への理解をアピール

AP通信によれば、スターマー新首相は選挙キャンペーンの中で、「私にも大変な時期がありました。手の打ちようのないインフレがどのようなものか知っています。郵便が届くたびに『光熱費を支払えなかったらどうしよう』とおびえる気持ちがわかるのです」と述べたとのこと。

 

裕福でなかった子供時代

また、NBC放送によれば、スターマー新首相は「私が子供のころ、私の家族はあまり裕福ではありませんでした。カーペットが擦り切れ、窓ガラスが割れた家に友人を招くのがどれほど恥ずかしいことか、よくわかります」として、貧困層への理解をアピールしたという。

 

人権派弁護士として

ちなみに、一家のきょうだいのうち大学に進学したのはスターマー新首相だけ。リーズ大学およびオックスフォード大学で法学を修めたのち、シェル社やマクドナルド社といった大企業に対する訴訟を担当し、検事総長にまで上りつめた。NBC放送はこの時期のスターマー新首相を「人権派弁護士のスター」と評している。

 

「スーパーボーイ」

また、スターマー新首相のきょうだいは、同氏が学業やサッカー、フルートなど何でも器用にこなしたことから「スーパーボーイ」と呼んでいたそうだ。ちなみに、スターマー新首相は今でも熱心なサッカーファンだ。

 

親しみやすいイメージ

ちなみに、スターマー新首相自身はこういった逸話を公にすることを望んでいなかったが、有権者に親しみやすいイメージを与えるため、顧問団のアドバイスを容れて明かしたのだという。また、2001年の映画『ブリジット・ジョーンズの日記』に登場するマーク・ダーシーの人物像はスターマー新首相の影響を受けたとも言われている。

左派・右派の両方から批判を浴びる

スターマー新首相が政界入りしたのは51歳のとき。しかし、オックスフォード大学の大学院に在学していたころ、急進左派の『Socialist Alternatives』誌に寄稿し、左派・右派の両方から批判を浴びたこともある。

「中身のない人間」

それかあらぬか、『Socialist Alternatives』誌の創設者であるベンジャミン・シェーンドルフ氏は自身のYouTube動画の中で、「あいつは中身のない人間だ。政治的にだよ。個人的には本当にいいやつだからね」とスターマー新首相を評している。

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