観測史上最も暑い年と認定された2023年
欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は、2023年11月の世界平均気温が史上最高となったことを受けて2023年を観測史上最も暑い年に認定したとロイター通信が伝えた。
このニュースが伝えられとき、第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)がドバイで開催されていた。各国政府は、温暖化の主な原因となる化石エネルギーつまり石炭、石油、ガスの「段階的廃止」を合意書に盛り込むことについて厳しい交渉を行っていたが、最終的に記載は見送られることになった。
コペルニクス気候変動サービスによれば、2023年11月の平均気温は観測史上最高を記録したという。BBCも、2023年は南半球が「前例のない熱波」に見舞われ、ブラジルでは約3,000の市町村に赤色警報が出されたと報じた。
北半球も未曾有の高温となった。アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各地で記録的な猛暑となり、数千万人の人々が耐え難い異常気温に苦しむことになった。
地元気象局によれば、7月13日にイラン南部のアフヴァーズで摂氏54℃という驚くべき気温が記録された。しかも、体感温度は61℃に達したという。
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こうした高気温は命取りともなる。米国疾病対策予防センター(CDC)によれば、体温が41℃を超えると熱中症になりやすく、死に至ることもあるという。
「私たちは奈落の底を覗いているといえます。地球でこれほどの異常気象が、これほど頻繁かつ長期にわたり続いたことはありません」と研究者たちは警鐘を鳴らしている。
7月から8月にかけて北半球では史上まれにみる高温となり、アメリカ、イタリア、ギリシャなどで熱中症による死者数が増加、山火事などの火災報告も記録的な数にのぼった。
一部の国では自宅の温度調整ができない人々のために保護施設を提供する必要に迫られた。たとえば、アリゾナ州フェニックスでは、写真のような避難所が開設された。
フェニックスでは7月19日まで19日連続で平均気温43℃以上となったほか、カリフォルニア州のデスヴァレーでは53℃が記録された。
画像:James A. Molnar
『ガーディアン』紙によれば、イタリアも全国的に熱波に見舞われ、熱中症による救急搬送が急増したという。
国連の気候変動に関する政府間パネルによれば、すでに不可逆的な変動が起きていることが最大の問題だという。つまり、今後はこうした高気温との共存を覚悟しなければならないということだ。
この史上まれにみる暑さに対し、今どのような対策をとることができるだろうか。
多くの専門家たちが世界各国に求めている対応の一つが、「ヒートアイランド現象」を抑えるための対策だ。
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都市部ではコンクリートやアスファルトが多用されているが、こうした素材には熱を溜め込む性質があり、そうした熱は夜間に大気へ放出されて都市部の気温を高めてしまう。これが「ヒートアイランド現象」と呼ばれている。
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そのため、気候変動を考慮に入れた最近の都市計画では、建物の屋上庭園や垂直庭園などを取り入れてグリーンを増やすことが推奨されている。
多くの専門家が懸念している気候問題は気温の上昇だけではない。海面上昇も、多くの島や沿岸都市を脅かす存在となっている。
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国連はすでに気候変動による大規模移住を警戒している。海面上昇により生活できなくなる地域が世界各地に存在し、何百万人もの人々が新たな移住先を必要とするというのだ。
コペルニクス気候変動サービスの研究者達は、あらためて二酸化炭素の排出量削減を訴えている。ディレクターのカルロ・ボンテンポは「温室効果ガスの濃度が上昇し続ける限り、今年と異なる結果を期待することはできません」とした。ロイター通信が報じている。
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さらに同氏はこう続けた:「気温は上昇し続け、熱波や干ばつの影響も大きくなります。できるだけ早く「ネットゼロ(温室効果ガスの排出量を差し引きゼロにする)」に到達することが、気候変動リスクを管理する効果的な方法です」