訴訟大国アメリカのヘンテコ裁判
米国で販売されている、あるメーカーのマカロニ&チーズ。ラベルによれば電子レンジで3分半加熱するだけで出来上がりなのだが、フロリダ州在住の女性がこの記載は正しくないとして製造業者を訴え、500万ドルを求めたという。
米国では昔から荒唐無稽な訴訟がたびたび起こされており、マカロニ&チーズの裁判はその一例に過ぎない。今回は、にわかには信じがたい米国のヘンテコ裁判の数々を見てゆくことにしよう。
米国で最も有名になった訴訟の1つがこちら。1992年にこの訴えを起こしたのは、マクドナルドで購入したコーヒーのふたを外そうとして中身をこぼし、火傷を負ってしまったステラ・リーベック(79)だ。
コーヒーが熱いのは当然ではないか、とお考えかもしれないが、事態は思いのほか深刻だった。
ステラ・リーベックは火傷の分類としては最も重いⅢ度熱傷を受けており、皮膚移植が必要だったのだ。しかし、マクドナルド側が医療費1万ドルの支払いを拒否したため、提訴。リーベックは290万ドルの賠償金を求めたが、裁判の結果、64万ドルしか認められなかったという。
というわけで、この事件は知名度の割にはあまり荒唐無稽ではないのだ。
チェサピークのインディアンクリーク更生センターに収容されていたロバート・リー・ブロックは1995年、泥酔した挙句、公民権が侵されたとして自分自身を訴えた。
ブロックいわく:「私は自分の宗教的信念を侵害した罪に対して、500万ドルを支払う意思があります。しかし、後見を受ける立場上働くことができないので、州が代わりに支払うことを要求します」言うまでもなく、この訴えは棄却された。
長年、ケロッグ社のシリアル「Froot Loops」には果物が含まれていると思い込んでいたロイ・ワーバル。2009年にこれが間違いだと気付いた彼はケロッグ社を提訴。
写真:Sascha Bosshard/Unsplash
原告は「『Froot Loops』に果物が含まれていないと知っていたら、購入しなかった」としたが、最終的にこの訴えは棄却されてしまった。
本来よりも約2.5センチメートル短い「サブウェイ」のサンドウィッチに巻き尺を当ててセルフィ―を撮ったオーストラリア人の少年。まさか、3年にわたる裁判沙汰になるとは本人も思ってもみなかったはずだ。
結局、10人が「サブウェイ」を提訴し、2016年初頭にようやく判決が出されることとなった。その結果、「サブウェイ」は10人の原告それぞれに対して、500ドルおよび訴訟費用を支払うことに同意したという。
「ペプシ」のポイントで戦闘機を手に入れようとしたジョン・レナード。1999年、700万ポイントを貯めた彼は、景品として同社のTVコマーシャルに登場する戦闘機「ハリアー」を要求したのだ。
しかし、ペプシ側がこれを拒否したため、レナードは契約違反と詐欺で同社を訴えたのだ。これに対し裁判所は、同社のTVコマーシャルを見て戦闘機が景品だと解釈するのは常識的に無理がある、として訴えを却下した。
この訴訟を取り上げたNetflixは、2022年11月にドキュメンタリー番組『ペプシよ、戦闘機はどこに?~景品キャンペーンと法廷バトル~』を放映、事件の詳細を伝えた。
マイケル・ジョーダンにそっくりだというのは素晴らしいことだと思うのだが…… しかし、アレン・ヘッカードの意見は違っていたようだ。
画像:News4Jax.com
2009年にヘッカードは、ジョーダンに似ていることが精神的苦痛をもたらしたとして、マイケル・ジョーダンおよびナイキ社を提訴。
ジョーダンに対してはセレブであることを理由に4億1,600万ドル、さらにナイキ社にも4億1,600万ドルの支払いを求めたが、訴訟に飽いたのか結局訴えを取り下げている。
アルコール飲料の広告の常として、「バドライト」ビールのコマーシャルにもセクシーな美女がたくさん登場する。ところが、ミシガン州在住のリチャード・オーバトンはこれを優良誤認表示だとして提訴。
1991年、アンハイザー・ブッシュ社を訴えたオーバトンいわく、バドライトを飲んでもコマーシャルに登場するような美女だらけの楽園には行けなかったそうだ。
訴訟の中で精神的ストレスや苦痛、経済的損失を主張したオーバトンは1万ドルの賠償を求めたが、裁判所は当然のごとくこの訴えを却下した。
ファーストフードを巡る訴訟の中でも鳥肌ものとして有名なのが、「ウェンディーズ」のチリコンカンに人間の指先が入っていたというものだ。
2005年、提供された料理の中に指先が混入していたとしてファーストフード大手「ウェンディーズ」を提訴するとマスコミに表明したアナ・アラヤ。
当局はこの事件について調査を開始したが、アヤラは訴訟を取り下げ。ほどなく、皿に指先を入れたのは彼女自身だったことが判明した。
指先はアヤラの夫の同僚が仕事中の事故で失ったものであり、借金の返済に利用するようにとアヤラ夫妻に渡していたことが明らかになった。
アヤラと夫は結局、虚偽告訴および加重窃盗未遂に加担したことを認め、2人とも刑務所行きとなってしまった。