ベストな名前を自動で:米国人カップルが作成したアルゴリズム

悩ましい命名
9万を超える名前からセレクト
バントリング
1.スペル
2.発音
3.時代を感じさせないこと
4.珍し過ぎないこと
5.ふつう過ぎないこと
6.宗教的すぎないこと
7.シンプルであること
8.間違えにくいこと
9.短縮形がないこと
10.かといって短縮型ではないこと
11.中国らしさがあること
12.性別がわかること
勝ち残った名前は......?
ガイドラインに囚われずに
悩ましい命名

米国西海岸を拠点とするブロガーで、ウェブ開発者でもあるニック・ウィンター。2015年、パートナーのクロエ・ファンとの間に子供が生まれることがわかり、同じ立場にあるあらゆるカップルと同じ悩みにぶつかった。つまり、子供の命名だ。

9万を超える名前からセレクト

しかし、ニックはごくふつうの父親ではなかった! ブログによれば、「医療保険データベースにあるすべての名前をダウンロードしました。ここにはジョンやメアリーといった一般的な名前から、アーキルやザイリーといった珍しい名前まで、1880年以降で1年間に5回以上使用された93,600個の名前が含まれていました」という。

バントリング

このデータを利用して、ニックは「バントリング」というアルゴリズムを開発した。これは、12の簡単なルールを通じて数千にも上る名前の候補をふるいにかけようというものだ。

1.スペル

まず、同じ発音でさまざまな綴りが可能な名前はシステムから敬遠された。たとえばハリウッド女優のケイティ・ホームズのように Catie、Cathy、Kathyなどさまざまな表記が可能な名前は、選択肢としては論外。

2.発音

二通り以上の発音が可能な名前や、「R」が含まれている名前もニックとクロエにとってはNG。アイルランド系の女優、シアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)が良い例だ。映画『レディ・バード』や『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』で主役を務めた彼女は、読みづらい名前で苦労したとしている。

3.時代を感じさせないこと

また、あまり古風なものや流行を追い過ぎたものも減点対象となった。たとえば、古風な名前の代表格だった「イーサン」はこの20年で人気急上昇。アメリカの国勢調査のデータによれば、国内に住む「イーサン」の97%が1989年以降生まれだ。それ以前に生まれた少数派の一人が、『6才のボクが、大人になるまで。』や『ビフォア・サンセット』で主演、多くの人を虜にしたイーサン・ホーク。

4.珍し過ぎないこと

あまり珍しい名前もアルゴリズムでペナルティーが課せられた。例えば「カニエ」。キム・カーダシアンの元夫でミュージシャンのカニエ・ウェストのおかげで、一般に知られるようになったが、保育園で他の保護者たちから眉をひそめられるに違いない。

5.ふつう過ぎないこと

とはいえ、余りに一般的な名前もおもしろくない。イギリスのコメディアン、デビッド・ミッチェル(写真右、自身の番組『Peep Show』の一コマ)も同じ意見だ。彼はインタビューにおいて、イギリス人で保守党の政治家や、小説『クラウド・アトラス』の作者と苗字も名前も同じだと笑いながら語っている。

6.宗教的すぎないこと

ニックとクロエのカップルは、あまりにも宗教的、とくに聖書に関係しすぎる名前も避けることにした。たとえば米国のTV司会者オプラ・ウィンフリーは、もともと旧約聖書『ルツ記』に登場する女性にちなみ、「オルパ」と名付けられた。しかし、まわりの人々が「オプラ」と間違った名前を使い続けたことから、ついには「オプラ」が定着してしまったのだ。聞きなれない名前を覚えてもらうことは、有名人でさえも簡単ではない。

7.シンプルであること

新米パパとなるニック・ウィンターが定めたルールのひとつに、「文字数や音節が多すぎる名前は避ける」というものがあった。確かに、「ステファニー・ジョアン・アンジェリーナ・ジャーマノッタ」よりも「レディー・ガガ」の方がはるかにキャッチーで覚えやすいことは否定できない。

8.間違えにくいこと

また、正確に綴られにくい名前もシステムから避けられた。今では信じられないかもしれないが、有名人でも名前の綴りで苦労したことがあり、例えば往年の歌手ライザ・ミネリは自分の名前をテーマにした『Liza With A "Z"』というユーモアあふれる曲を発表している。

9.短縮形がないこと

また、短いニックネームにが付けられる名前も除外された。「ベン・カンバーバッチ」で通用するのに、なぜ長々とした「ベネディクト・カンバーバッチ」にする必要があるだろう?

10.かといって短縮型ではないこと

長い名前の短縮版にあたる名前も、アルゴリズムによって除外された。アンジェリーナ・ジョリーの元夫であるビリー・ボブ・ソーントンは、このルールに異論を唱えるかもしれない。(「ビリー」は「ウィリアム」の、「ボブ」は「ロバート」の短縮型だ)

11.中国らしさがあること

ニックのパートナーのクロエは中国出身。子供の名前は中国語圏の人にも発音しやすく、両親それぞれの文化に配慮したものが求められた。ただし、かつてはアジア系のタレントが大衆にアピールするため欧米風の名前をつけることは一般的だった。例えば、ディズニー映画『ムーラン』の主演女優リウ・イーフェイは、かつてクリスタル・リウという名で活動していた。

12.性別がわかること

また、性別が曖昧な名前も却下された。ただし名前と社会は変化することからこのルールには注意が必要。英語圏の名前にはテイラー、マディソン、パーカーなど、数十年前には男性の名前とされていたが最近は女性の名前になりつつあるものがある。もっとも有名な例は、シンガーソングライターのテイラー・スウィフトだろう。

勝ち残った名前は......?

最終的に、ニックとクロエはシステムを通じて約3,650の名前を選びだし、その中からお互いに気に入ったものを候補として挙げていった。そして名前の候補は15個に絞られ、やがて4個になり、そしてついに2個の名前が選択され、女の子は「ヘイゼル」、男の子は「マックス」と名付けられた。マックスが生まれたのは2005年7月のことだ。

ガイドラインに囚われずに

でも、よく見ると「マックス」は12のルールのいくつかに違反しているのでは......?結局のところ、ガイドラインは何かを決める際の参考になるが、何ごとも人それぞれ、ケースバイケースということを忘れてはならない。「ジョン」や「メアリー」が最良の選択だと考える人もいるし、「アーキル」や「ザイリー」が一番だと思う親もいるだろう。

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