部分的動員でロシア出国を図る人々
プーチン大統領が予備役30万人をウクライナ侵攻に動員すると発表したことで、波紋が広がるロシア社会。各地で抗議デモが行われ、1,000人あまりが逮捕されたほか、Googleの検索件数でトレンド入りしたキーワードからは出国を図るロシア市民が増えていることが読み取れる。
プーチン大統領が部分的動員を表明すると、Googleの検索件数ランキングでロシアを脱出するための具体的な方法に関するキーワードが急上昇しはじめたのだ。
ここ最近、ロシアでは「航空券」と「フライト」というキーワードの検索件数が数倍に上昇している。また、プーチン大統領の演説直後には「ロシアから出国」というキーワードでも同様の現象が見られたという。しかし、ロシアの市民全員が一度に出国できるわけではない。
ロシアの航空券取り扱いサイト大手「Aviasales」では、グルジア、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、カザフスタン、アルメニアといった近隣の旧ソ連諸国行きの航空券が売り切れ。
『ザ・モスクワ・タイムズ』紙によれば、部分的動員の発表からわずか数分で、トビリシ(ジョージア)行き、イスタンブール(トルコ)行き、エレバン(アルメニア)行きの航空券が売り切れてしまったという。
一方、トルコの大手航空会社ターキッシュ・エアラインズのウェブサイトからは、ベラルーシのミンスクおよびロシアのソチ、ロストフ、エカテリンブルク、モスクワを発着する便が10月31日まですべてキャンセルされていることがわかった。
画像:Web Turkish Airlines
さらに、セルビア行きのフライトにも暗雲が立ち込めている。エア・セルビアによれば、ベオグラード行きの航空券は10月まで入手できなくなっていたという。
米国CNBC放送をはじめとする報道各社によれば、フライトへの需要が供給を大幅に上回ったことで、一部航空券に法外な価格が付く事態となっているようだ。
航空券の価格急騰について取材したスペイン紙『エル・パイス』によれば、モスクワ発ウラジカフカス(ロシア南西部)行きのフライトの価格は70ドルから750ドルに値上げされたという。
また、シベリア航空が運航するモスクワ発エレバン行きのフライトは3,000ドル。さらに、モスクワ発ベオグラード行きのフライトでは9,000ドルを突破するという信じがたいケースもあった。
写真:Web Aviasales
ロシアとEU諸国を結ぶフライトが停止されていることも、出国を図るロシア人たちにとって悩みの種となっている。加えて、国境閉鎖の可能性まで取り沙汰されるようになってきている。
ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は、国境閉鎖の可能性について肯定も否定もしなかった。ただし、招集令状が発行された予備役対象者については、すでに出国が禁止されている。
ポーランドやラトビアといった近隣諸国は、ウクライナ侵攻に対する抗議の一環としてロシアとの国境を閉鎖。一方、フィンランドは最後まで国境を開放していたが……
BBC放送によれば、フィンランドも9月末にはロシア人の観光ビザによる入国をストップ。ヨーロッパとの国境はすべて閉鎖されることとなった。
ただし、混乱が広がる中、事実無根のデマが流されることもあるというから注意が必要だ。フィンランド国境で35キロの車列が出国を待っており、同国を目指す人々がさらに殺到しているという情報は、どうやら事実ではなかったようだ。
フィンランドの国境警備隊は「ロシアの部分的動員発令によってフィンランド国境の状況が変化したという事実はありません。現在ネット上で拡散している動画はフィンランド国境の現状とは関係ありません」というツイートを投稿した。
また、フィンランド国境警備隊の国際問題担当者は別のツイートで「フィンランドとロシアの国境における状況は、森林地帯でも幹線道路でも通常通りです」とコメント。
さらに、フィンランド外務省のヴィッレ・カンテル氏もツイッターでデマの火消しに追われた。
「動画は現状と違っています。ロシアとフィンランドの国境で長蛇の列ができているというのは誤報です」とした。