キム総書記、米韓が「軍事的解決」を選んだら「徹底的に殲滅」するよう指示
北朝鮮国営メディア朝鮮中央通信によれば昨年12月31日、同国の金正恩朝鮮労働党総書記が軍の重要指揮官たちと面会、米韓が「軍事的解決」を選ぶなら「徹底的に殲滅する」よう求めたという。
面会は平壌の党中央委員会本部庁舎で行われ、金正恩総書記は指揮官たちの昨年の活動を評価、激励した。
北朝鮮国営紙「平壌新聞」によると、激励の言葉のあと金総書記は現在北朝鮮が直面している国際的状況について概観を述べたという。
金総書記はそこで昨今米韓が強硬な態度に出ており北朝鮮との武力衝突は目前まで迫っているとの認識を述べ、自国の安全を守る緊急の必要性が生じているとコメントした。
さらに、自国防衛の責任は個々の将兵にかかっているとも強調し、指揮官らに自国の未来を担っているという重責の自覚を求めた。
また、時事通信によると同じ談話で「われわれの革命が前進すればするほど、これを阻止しようとする(米韓の)策動は増えるだろう」とも述べ、軍隊を激励した。
同じく時事通信によると、金総書記は米韓が「軍事的解決」を選択した場合、北朝鮮の軍は「あらゆる手段と潜在力を総動員し、せん滅的な打撃をくわえ、徹底的に壊滅させなければならない」とも述べたという。
これらの発言を報じているのは北朝鮮の国営通信社であるため、本当にこういった言葉が指揮官らに向けて発されたのかは判然としない。とはいえ、国営メディアからこのような報道が出るということから、現在の北朝鮮の狙いを読みとることができる。
AP通信のキム・ヒュンジン記者によると北朝鮮はここ数か月談話の好戦性を高めてきており、これは最近米韓の軍事協力がより緊密なものになってきていることに呼応しているとみられるのだという。
アメリカは韓国などの同盟国とともにアジアでの軍事演習を何度も行っており、8月中旬には韓国軍との合同軍事演習「乙支フリーダムシールド(自由の盾)」を実施。また、10月にはオーストラリア軍も加えた3か国で合同演習「Vigilant Defense 24」を行っている。
一方、北朝鮮では軍事衛星やミサイルなどの発射が相次いでいる。11月には同国初の軍事衛星打ち上げに成功したと主張しているほか、大陸間弾道ミサイル「火星17」や「火星18」の試験発射も繰り返している。
キム記者は、こういった挑発的な言動は米韓との軍事的緊張を作り出して政治的妥協を引き出すためのおとりだとみている。
キム記者はこう述べている:「金総書記はおそらく、アメリカとの緊張を高めておけば、11月の米大統領選でトランプ元大統領が勝利した場合に譲歩を引き出すことができるとみているのだろう」
韓国のソウルにある梨花女子大学校のリーフ=エリック・イーズレー教授はNBCニュースにこう語っている:「金政権は非核化交渉の外交ルートを閉ざしましたが、制裁緩和の見返りとしては挑発的な談話を押さえたり、軍事実験の停止を提供したりできます」
だが、金総書記は軍事衛星のさらなる打ち上げやドローン技術の研究などに強い関心を示しており、軍事的緊張の緩和には消極的なようにもみえる。
NBCニュースによると、金総書記は朝鮮労働党の年末会合で、今後3基の軍事衛星を打ち上げ、軍事ドローンを開発、核開発も継続する意欲を表明したとされている。