世界各地にあった頭蓋骨を変形させる文化:種子島の遺跡でも見つかる

一風変わった古代の習慣
アジア、ヨーロッパ、メソアメリカ……
日本では?
アイデンティティの表現?
交易に役立った?
貝殻を交易
埋葬地から出土した貝殻
さまざまなグループの比較
後頭部が扁平
中国やペルー、メキシコでも同様の人骨が出土
古代日本に関する知見
広い視野から歴史を眺める
一風変わった古代の習慣
今では考えにくいが、世界各地の古代文明では頭蓋変形(人為的に頭蓋骨を変形させること)が行われていた。
アジア、ヨーロッパ、メソアメリカ……
頭蓋変形の形跡が認められる人骨はアジアやヨーロッパ、メソアメリカなど世界各地で古代の埋葬地から出土しているほか、ドイツやクロアチアでは中世の遺跡からも発見されている。
日本では?
そして今回、国際研究チームによって日本にもかつてこの風習があったことが判明。具体的には種子島にある広田遺跡から出土した人骨を分析した結果、頭蓋変形の証拠が見つかったのだ。南種子町のウェブサイトによれば、広田遺跡は弥生時代から7世紀にかけての集団墓地だという。
アイデンティティの表現?

学術誌『PLOS ONE』に掲載された論文によると、広田遺跡に埋葬されていた人々は、グループのアイデンティティを表現するため男女ともに頭蓋変形を行っていたものと見られるという。

写真:Malcolm Lightbody/Unsplash

 

交易に役立った?
さらに、論文共著者2人はCNN放送に対し、広田遺跡の古代人たちにとって頭蓋変形は外部の集団と交易を行う上で役立った可能性もあると説明している。
貝殻を交易

共著者の瀬口典子准教授およびジェームズ・フランシス・ロフタス博士は「私たちは考古学的な根拠から、広田遺跡の人々は集団としてのアイデンティティを維持し、貝殻の長距離交易を円滑に行うために頭蓋変形を行ったという仮説を立てました」としている。

埋葬地から出土した貝殻

広田遺跡からは貝殻が大量に出土している。しかし、こういった貝殻は地元産ではなく、数千キロメートル離れた場所から運ばれたことがわかっており、広田遺跡の人々が交易によって手に入れたことを示唆しているという。

写真:Mandy Henry/Unsplash

さまざまなグループの比較

調査にあたって研究者たちは広田遺跡から出土した頭蓋骨19個について、3Dスキャンおよびデジタルモデリングを実施。詳細な形態学的分析を行うと同時に、縄文時代の人骨や土井ヶ浜遺跡から出土した頭蓋骨と比較を行った。

後頭部が扁平

その結果、広田遺跡から出土した頭蓋骨では後頭部の後頭骨が、比較対象よりも著しく平たくなっていることが示された。

写真:上は土井ヶ浜遺跡の頭蓋骨、下は広田遺跡の標本(出展:『PLOS ONE』)。

中国やペルー、メキシコでも同様の人骨が出土
論文によれば、広田遺跡の人々に見られる頭蓋変形は中国やペルー、メキシコの古代文明でも知られていることから、人為的になされたものだという結論に達したという。
古代日本に関する知見
論文の共著者たちは今回の研究によって、広田遺跡をはじめとする古代日本の人々がどのように暮らしていたのか解明が進むことを期待している。
写真:Hirota skull/ PLOS ONE
広い視野から歴史を眺める

研究者たちはCNN放送のインタビューのなかで、「この研究によって、日本の先史時代におけるさまざまな時期の調査に携わる研究者たちが、文化的な習慣を流動的に変化する現象として捉え世界的な視点から日本を眺められるようになってほしい」とした。

 

 

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