8月初め、ウクライナを襲ったロシアの猛爆撃について
8月初め、黒海沿岸の港湾都市ノヴォロシースク近くの海上で、ロシアのオイルタンカーがウクライナの水上ドローン(無人艇)による攻撃を受けた。まもなくロシアはウクライナに対し、ここ数ヶ月でもっとも大規模な爆撃をおこなった。
『ガーディアン』によると、この爆撃で4人が死亡し、ウクライナの輸血センターが破壊された。爆撃は8月5日から6日にかけて何度か行われたという。AP通信はのちに、死者数を6人に訂正して報じている。
NBCニュースの報道によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は、この攻撃によって2人の死者と4人の負傷者が出たと発表したという。
ゼレンスキー大統領は複数のソーシャルメディアで次のように発信した。「この戦争犯罪一つだけでも、ロシアの侵略の本質をよく物語っている」。その投稿には、炎に包まれる建物の写真が添えられた。
写真:Twitter @ZelenskyyUa
写真についてゼレンスキー大統領は、「ロシアの誘導弾がウクライナの輸血センターを襲った」と説明する。「今日の夕方、ハルキウ州クピャンスクの被害現場。死傷者が出ている模様。死者にお悔やみを。 レスキューが消火にあたっている」
ゼレンスキー大統領は更に、この爆撃を指して戦争犯罪であると語り、襲撃者たちを「けだものども」と呼んだ。「テロリストたちを打ちのめすことは、生命に価値をおくすべての者にとって、面目にかかわることである」
輸血センター近くの住居や建物も損傷を受けたとNBCニュースは指摘している。くわえて、その主張の真偽は定かでないと留保しつつ、ロシア当局がこの件について軍が民間人を標的としたことは一度もないとする主張を繰り返しているとも報じている。
ロシアの爆撃の規模の大きさを考えると、この一連の攻撃はウクライナにとり、より深刻な被害をもたらしたとしてもおかしくはなかった。『ニューズウィーク』がウクライナ空軍の更新する情報を参照しながら報じるところでは、ロシアは8月5日から6日にかけて、いくつかの波に分けて計70回にわたる攻撃をおこなったという。
ウクライナ軍は自国を襲った巡航ミサイルとドローンの正確な数について発表を避けているが、ウクライナ防空システムがそれらをいくつ撃ち落としたかについては具体的な数字を公表している。
ウクライナ政府高官によると、ロシアの第1波の攻撃のさい、ウクライナ軍は計17発の巡航ミサイル「クラブ」を撃ち落とし、「Kh-101」と「Kh-555」の巡航ミサイル計20発のうち13発の迎撃に成功したという。『ニューズウィーク』が報じている。
写真:Wiki Commons
極超音速空対地ミサイルである「キンジャール」も3発発射されたが、そのうちいくつの迎撃に成功したのか(あるいは1発でも迎撃に成功したのか)は明らかにされていない。イラン製ドローン「Shahed」については27機の撃墜に成功したという。
8月6日、ゼレンスキー大統領は、ウクライナに対してその週末に加えられた攻撃の全体規模を明らかにした。ロシアはさまざまな種類の合わせて65発のミサイルを発射し、178機の攻撃ドローンを使用した。うち87機は「Shahed」ドローンだという。ロイター通信が伝えている。
ゼレンスキー大統領は更に、アメリカの地対空ミサイル「パトリオットミサイル」やドイツの対空ミサイル「IRIS-T」といった高性能兵器がとても有効だったとし、顕著な成果を上げているとした。
ロシアによるこの激しい攻撃は、8月5日未明にロシアのタンカー「シグ」が受けた水上ドローンによる攻撃への報復、という意味合いで行われたのかもしれない。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、水上ドローンの攻撃について、ウクライナは報いを受けるだろうと語っていたのだった。
「とうてい正当化できない蛮行である。いずれしかるべき報いを受け、この攻撃の首謀者や実行者が罰せられることは避けられない」と、マリア・ザハロワ報道官はソーシャルメディアに投稿したと、『PBSニュースアワー』は報じている。
NBCニュースが指摘するように、ロシアによるこの爆撃が起きたのは、40か国超の指導者たちがサウジアラビアのジッダに集まり、ウクライナの和平について協議していた最中だった。世界にとってきわめて皮肉なタイミングといえる。