スウェーデン政府が国民に呼びかけ:「戦争に備えるべし」

「スウェーデンで戦争が起こる恐れが」
国民に意識を高めるよう呼びかける
破棄された中立政策
「世界の危険度は大きく高まった」
ロシアという脅威
「過去の過ちを繰り返してはならない」
米大統領選に対する懸念
ウクライナが置かれた状況を我がこととして
徴兵制の復活
「歴史的」防衛計画の存在
4つの主要目標とは
北大西洋条約機構(NATO)への加盟手続き
2024年7月のNATO首脳会議で承認?
米大統領選挙の結果がもたらす影響
バルト海における戦略的重要性
「ロシアとの長期的な対立を覚悟」
「スウェーデンで戦争が起こる恐れが」

1月7日、スウェーデンのサレンで開催されたFolk och Frösvar会議でスウェーデンのカール・オスカル・ボーリン民間防衛相は市民に対し、「スウェーデンは戦争に備える必要がある」という明確なメッセージを発した。同相は「これまでに何度も指摘されていますが、民間防衛相という立場からあらためて申し上げます」として、戦争に備える必要性について言及した。

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国民に意識を高めるよう呼びかける

ボーリン民間防衛相(写真)はスウェーデンが戦争に巻き込まれる可能性に直面しているとしただけでなく、それが現実となるという意識をもち、心の準備をするよう国民に促した。

破棄された中立政策

第二次大戦以降スウェーデンは中立政策をとってきたが、緊迫度を増す国際情勢の中、かつてない心配や不安、焦燥感や緊張が人々の間に広がっている。

「世界の危険度は大きく高まった」

『ニューズウィーク』誌によれば、前述の会議にはスウェーデンのポール・ヨンソン国防相(写真)も出席。ボーリン民間防衛相と同じく、「わずか1年の間に世界の危険度は大きく高まった」として国民に警戒を促した。

ロシアという脅威

ヨンソン国防相はさらに、スウェーデンの安全保障に対する最大の脅威についても明言した:「戦争は起こりえます。こうした厳しい時代には明確なビジョンと行動力、そして忍耐力が必要です。ロシアの目標は依然として主権国家ウクライナを攻略すること、そして緩衝国家と利益圏を欧州内に確保して『力こそ正義』という理念を実現することにあると、はっきり理解しなければなりません」

「過去の過ちを繰り返してはならない」

ヨンソン国防相は続けて、スウェーデンは過去の過ちを繰り返してはならないと述べた:「私たちは過去に同じような状況を経験しました。ふたたびそれを繰り返し、『力こそ正義』を掲げる社会で子供たちが育つことを許してはなりません」

米大統領選に対する懸念

国防相はさらに米国の政治状況について懸念を表明。アメリカ大統領選挙の行方をめぐる「不確実性」が国際情勢に少なからぬ影響を及ぼすだろうとした。

ウクライナが置かれた状況を我がこととして

スウェーデン軍のミカエル・ビーデン司令官(写真)も会見に臨み、ヨンソン国防相とボーリン民間防衛相と同じく厳しい見解を示した: 「私たちは厳しい状況に置かれているといえます。ウクライナの戦況に関するニュースを踏まえて自分に問いかけてみてください: 同じ状況に置かれたらどうだろう、自分は心の準備ができているだろうか、何をすべきだろうかと。より多くの人が現況について考え、検討し、準備をすることでスウェーデン社会を強化することができるのです」

徴兵制の復活

「第二次世界大戦以来となる最大の脅威」に直面しているスウェーデンだが、万一侵略を受けたとしても簡単に敵に屈するつもりはない。2008年に廃止した徴兵制を2023年初めに復活させたことがその証といえるだろう。

「歴史的」防衛計画の存在

国防相たちの警告に合わせ、同国の指導者たちが「歴史的」とする国家防衛計画も存在すると『ニューズウィーク』誌が伝えている。計画は今年後半に国民に公表される予定であり、スウェーデン政府は新たな防衛計画について、NATO加盟国としての同国の重要性を高めるものだとしている。

4つの主要目標とは

『ニューズウィーク』誌によれば、ヨンソン国防相は防衛計画の4つの主要目標を明らかにした。それは「徴兵制と職業軍人からなるより強力な軍組織の構築」、「北欧地域で弾薬を調達し、防衛資材調達の時間を短縮」、「新たな防衛革新戦略を導入し、戦場における技術的優位性を確立」、そして「安全保障に関する迅速な拡大と『成長に基づく防衛』の確立」だ。  

北大西洋条約機構(NATO)への加盟手続き

しかし、スウェーデンはなぜ突如として戦争の可能性を語り始めたのだろうか。その理由を振り返ってみよう。きっかけは2022年5月、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて中立国であるスウェーデンとフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を決めたことにある。フィンランドは2023年4月に迅速に正式加盟を果たしたが、スウェーデンの加盟はいまだ承認されていない。

2024年7月のNATO首脳会議で承認?

スウェーデンのNATO加盟については、トルコとハンガリーが反対したことから手続きに時間がかかっている。しかし今月23日になり、トルコ議会がスウェーデンのNATO加盟を賛成多数で可決。加盟に反対する国はハンガリーだけとなった。順調にいけば2024年7月に米国ワシントンで開催される次回のNATO首脳会議において、スウェーデンは32番目のNATO加盟国として認められる見込みだ。

米大統領選挙の結果がもたらす影響

2024年11月に控える大統領選挙をはじめ、米国の政治情勢が不透明なことからスウェーデンはNATO加盟を急ぎたいと考えている。もしトランプ元大統領を擁立する共和党が勝利すれば、ウクライナに対する米国の軍事支援活動が削減されてウクライナがロシアに屈してしまう可能性もある。その場合、ロシアの次のターゲットがスウェーデンにならないとは限らないのだ。

バルト海における戦略的重要性

スウェーデンはバルト海においてきわめて高い戦略的重要性をもっている。同国がNATOに加わることでバルト海は加盟国で囲まれることになり、いわゆる「NATOの湖」が誕生する。しかも、武器輸出国としても知られるスウェーデンが加盟することでNATOの攻撃力も総じて高まると『ニューズウィーク』誌が伝えている。

「ロシアとの長期的な対立を覚悟」

当面の間、ロシアはスウェーデンにとって脅威であり続けるだろう。同国のトビアス・ビルストロム外相は1月6日付のスウェーデン紙『Dagens Nyheter』に対し、「ロシアが国連憲章と欧州の安全保障秩序に違反しつづける限り、長期的な対立が続くことを覚悟しなければならない 」と語った。

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